幸せの願い事

この世に七色に輝く花があるという


その花を見つけたら大事に育て


種を持ち歩くと願い事がかなうと言う


かなったら必ず種をあった場所に植えること


それで願い事は終了になるけど


願い事がかなっても持ち歩くと


願い事は反対の方に歩き出すという






………これって伝説の七色に輝く花だよね


私は家に持ち帰ってそっと育てた


花はあっという間に枯れ、大粒の種をひとつ残す


私は何を願おうか迷った



ありきたりにお金か…欲しいけどお金で幸せは買えないよなぁ


ありきたりだけど健康か…あいにく人一倍健康なんだよね


ありきたりだけど仕事か…困ったことに今の生花ハウスの仕事気に入っている


ありきたりだけど彼氏…今の彼氏に不満はない。優しくて気障だけどいい人だ


ありきたりだけど幸せか…なにが幸せかわかんないけど今以上の幸せを願おう



思いのたけを込めて子袋にいれ胸にぶら下げる


女の子の服の困ったことはポケットの少ないこと


仕事の道具をポケットに入れるから


種は傷つかないように胸にぶらさげたわけだ




そしてその日のうちにハウスを首になった


仕事がとろすぎるというのが女将さんの理由だった


冗談じゃない。私はそりゃ多少とろいが丁寧だ


そして首になるほど人に遅れをとっているわけではない


たが荷物を片付けて更衣室をでようとすると


女将さんに頭をさげられた


「うちの旦那は好色でね


あんたを狙いだしてるんだよ


間違いが起きないうちにすまないね」と


謝られる


そう言われると心当たりが何回かある


犯される前に職場から逃げられたことに感謝しなきゃいけないのかしら?



次に襲ったのは彼氏の浮気だった


優しくて女の人には人気があった


気障だから女の子の頼みも断らない


だからいつも一抹の不安はあった


でも彼氏は一人を妊娠させ、責任をとって結婚した


その時に知った事実、私以外に12人の彼女がいた


どうきりもりすればそんな人数と付き合えるのか正直呆れた



私の受難はまだ続いた


仕事を探している最中に馬車の前に男の子が飛び出した


決して運動神経が言い訳でもないのに


体が勝手に動いてしまった男の子を引っつかみ歩道に飛び込む


つもりだったがきっちり両足を引かれ骨折した


幸いなのは骨さえ引っ付けばリハビリで歩けるようになるそうだ


そしてもっと幸いなのは馬車の前に飛び出したことを


怒られるのではなく謝られた事だった。治療費の心配しなくてよくなった



仕事がしばらくできなさそうな私は実家に帰った


そこでしばらく世話になるつもりが


ここでも不幸が起きた


父の職場ワイン工場が倒産してしまったのだ


家はその日暮らしにも困るようになった



私は種を捨てようとした


何が今以上の幸せだ


どんどん不幸になってるではないか


でもこれ以上に不幸になるのが怖くって捨てられなかった




私は馬車の主におもむいた


援助を願い出る為だ


足が治り父の仕事がみつかるまで生活の面倒も見て欲しい


足が治ったら身売りでもして返すからと


身売りをするくらいなら息子の妻になれといわれた


どんな男か知らないが見合いもなしに妻になれときたもんだ


彼女も好きな人もそのひといないのと聞いたら


もう6年家から出たことないそうだ


同じ歳


教養は家庭教師がついたらしい


12歳から仕事をしている私よりは頭はいいだろうが…


とりあえず私は正直に男性との関係があったことを話すと


息子にも女はあてがって来たが続かないことを言われる


だからお付き合いを飛ばして結婚か


どんな男でも体を売って生活する気だったんだ


どうにかなるもんだろうと承知した


他に道は用意されてなかったし



それでも結婚する前に半年付き合うことを申し渡された


同じ屋敷で暮らす


家はでかくても同棲にはかわりなかろう


そこまでして結婚させたいのかな


跡取り息子はいると聞いた


私はその人付き合いのできない人に強制的に与えられた妻なのだ


向こうにとっても迷惑な話だろう



ひろい屋敷は庭も整えられていて


中は貴重な調度品で飾られていた


うっかりコケも出来ない


男は裏の薔薇園にいた


見事な咲きっぷりだ


かなり腕がいいのだろう


薔薇を育ててた私が思うのだから間違いない


「綺麗な薔薇だね」


彼は振り向いた


黒い縮れた髪を無造作にぼさぼさにし


瞳は固めは黒、固めは真っ赤、オッドアイかそれも真っ赤とはきつい色だ


鼻筋も通って切れ長の目は切り取って保存したいくらい美しいが


肌は吹き出物だらけでとてもみれたもんじゃない


背も高く肉付きもしっかりしている。鍛えてはあるのだろう


彼は私の声を無視して屋敷に入っていった


難関だ。こりゃ…あの目と肌だけで何人の女が逃げ出したかわからない


私もただ知り合っただけなら通り過ごしていただろう


だけど私は彼の妻になるものだ


どんなにおぞましくても逃げるわけにはいかなかった



食事をする


私は自分の生い立ちを話していた


彼があまりに無口なものだから


最近の話にまで及び職場を首になったことや


彼氏に彼女が13人もいたことまで話してしまった


そして身売りの変わりに妻になることを承諾したことも


「金目当てか」


彼が始めて発した言葉は蔑みだった



夜着に着替える


後ろを向いて着替えてるがずっと彼の視線を感じる


夫になる人に裸を見られたからと言って文句も言えない


ベッドにはいるエスコートもない反対を向いて眠っている


私も反対を向いて眠った


次の日、夜明け前から私はいろんな人を起こし


とりあえず彼の髪をなんとかすることから始めようとした


鏡の前につれて来て髪にくしを通そうとしたとたん


「ほっとけ!」


凄い力でなぎ倒された


私は立ち上がって


「そこに座りなさい。目と肌はどうしてもやれない


でも髪の毛はどうにかなるわ!」


彼は座ろうとはしなかった


思わず手を引いた私を平手打ちして薔薇園にきえた



一週間たった夜彼が三言目の口を聞いた


「抱かせろ」


私はかれのほうを向いた


口付けが来た


だけどそれだけだった


「抱かないの?」


「逃げそうにないからな」


「自分の夫から逃げてどうするのよ」


「妻にはしない」


「じゃあ私はどうしたらいいの?」


「貧相区で飢えて死ね」


「…わかったわ、契約は破棄ね


でも足が治るまでは面倒見てくれる約束になってる


だけど髪の毛くらい切らせてよ」


何も言わなかったが次の日鏡の前で座っていた


ケープをかけて髪を梳かしながら解けないところは思い切って切る


最後に長さをあわせたら随分と短くなった


「醜いな」


「私は面食いよ。だから変なのにひっかかった


心がにごってるよりは余程いい


薔薇園で最初に見た貴方は美しかったわ


ところでそろそろ名前くらい教えてよ


別れる女に教える必要はない?」


「聞いてないのか?」


「うん」


「ギルスだ。お前は?」


「ソファーよ。やっと入り口に立った」


彼が私を見る


「だってそうでしょう?名前も知らない夫婦っておかしいわ


でももうおわりなんだよね」


「そうだ」


「はやく足が治らないかな」


「金が欲しいのだろう」


そういうと金の延べ棒を一つもってきてひざに置かれる


私は投げ返した。


「足さえ治れば自分の体で稼ぐ。貴方がいらないというならそれでいい」


「俺の妻になりたいのか?」


「そうとは言わないけど…どんな男かも知らされずに覚悟決めたのに


好きにさせてもらうどころか近づかせてももらえない


私の覚悟って何?同じ歳で6年間家をでたことない教養はあるそれだけよ


それだけの知識で身売りするつもりならどんな男でも一緒だと


結婚をきめたわ。お金が目的よ何が悪いの?


それでももしかしたら幸せになれるかもって思っちゃいけないの?


一生を売ったんだからね。私は。でも貴方は蹴るそうよね


お金目当てのどうでもいい女と結婚なんかしたくないものね」


私は薔薇園に逃げ込んだ車椅子の私を探すのは困難だろう


馬鹿だ私は身売りと同じなのに何を期待した


最初に見れば必ず後ろずさりしたくなるほど醜い男に


ここがいけないんだ。薔薇園が自分の作ってた花と同じだから



二週間目歩く練習を始めた。柵にでもつかまるつもりだったら


ギルスが黙って私の相手をしてくれた


骨は良好に固まったらしく1週間後は歩けるようになった


荷物をまとめてるとこへ彼はやって来て口付けをしてきた


片手でそのまま服を脱がそうとする


「ちょ、ちょっと」


「黙ってろ」


私たちはそのまま結ばれた。



荷物は再び解かれ


私はギルスの妻になった


「何故?」私は聞いた。


「一ヶ月、文句一つ言わず付いてきた」


私は笑った


「私はもともとそのつもりでいたのに」



結婚式の日取りが決まると


私は二人で元の場所へ種を植えにきた









最上の幸せは


一度今の自分を壊さないとやってこないのかもしれない



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