ネズミの一番乗り
干支の話は知ってるか?
子供のころ聞いたけど
ネズミは牛の上に乗っかって
最後は牛から飛び降りて
一等の干支に地位を奪ったんだ
ずるいよなぁ
それが俺の記憶に残った全てだった
ネズミ年の俺は2度目のネズミ年を迎え
ずるく生きることを決意した
同級生から金借りて踏み倒した
学校で問題になるのは早く
母親が呼び出されて
こんこん説教を受けた
母は何も言わずに
お金欲しい時はいいなね
それだけいった
場所を街に移動した
知らない地方から来たふりして
帰るお金が無いと良心的なのからだまして金を取り
遊んでいた
ほどなく補導される
1回目母親は
自分より背が高くなった俺の頭ポンポンするだけで
帰路に着いた
2回目は
母親が口を開いた
でもそれは小言ではなかった
「どうして?君は親切な人からお金を取るの?」
俺は理由なんてなかったから
「ずるいやつだからだろ」
とだけ答えた
俺の親はすこし複雑で
実の母親と今のまま母と一緒に父親と暮らしてた時期があって
実の母親と父親は交通事故で無くなり
まま母だけが残り俺を育ててた
戸籍上は他人なんだ
次の日、母親は薄茶色のネズミを買ってきた
そして俺に世話をしなさいと言った
はぁ?とか正直思った
籠の中で水も餌ももらえずに弱ってくネズミを見て
自分の末路のような気がして
手をだした
世話をしだしたらすぐ元気に戻って
やたらと懐く
ネズミというのはこんなに懐くものなのか
そう思って可愛くて仕方なくなったころ
母親が言った
「その子はスナネズミと言うの。集団生活のネズミでね、家族が必要なのよ」
家族、俺の家族か・・・
そして一枚の紙を渡された
戸籍謄本
・・・母親は俺を養子にいれてあった
結婚経験もなく、1周り半しか変わらない年齢で
俺を子供にするのはとても勇気のいることだろうと思った
今度は俺が口を開いた
「なんで俺なんか子供にしてるんだよ。あんた人生やり直せたのに」
「私はきっと、君を乗せた牛さんなのかもね」
俺ははっと母親を見上げた
「早紀さんがさ、干支の話したときに、君はネズミはずるいんだねって言ってたのをずっと気になってた。でもね牛さんに便乗できるくらいネズミさんも早起きしてたんだよ?牛に乗っけて貰えるくらい牛さんと仲が良かったの」
早紀は実の母親の名前だ
俺にはない発想で絶句してると
「君はもう大丈夫。きみもまた牛さんだからね。その子を乗っけて一番乗りさせてあげないとなんだよ」
そう言って母親は笑った
その時の笑顔を俺は忘れない
ネズミはもう年老いて死んでしまったけど
俺はネズミ年が来るたびにその思い出を思い出す
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