クリスマスは動物たちも大騒ぎ 2019年 クリスマス用作品

森が弱肉強食を忘れる時間と聖地を知ってますか?

雨のひどい日

大きな洞穴には

肉食も草食も体を寄せ合って

雨が通り過ぎるのを待つのです


もう雨も冷たく

皆で体を寄せて温めあいながら

静かな雨音だけ聞こえてきます


最初に口を開いたのは

とあるさびしいぼのうさぎさん


「人の世界にクリスマスというものが来るらしいよ」


鳥さんがいいます


「クリスマスは私たち鳥が食べられちゃう日・・・」


「そうなの?お飾りしておめかししてとても歌って楽しい日だと聞いたのに・・・」


キツネが言います


「クリスマスにはお前らを捕らえて僕はごちそうにありつくさ」


うさぎが言います。泣きながら


「来年食べていいから今年はお祝いをしたいの」


「何を祝うのさ?」


「みんなと今生きてこうして集まっていられること」


「雨が上がってここを出た瞬間に食べられるかもしれないのにか?」


みんながきつねとうさぎのやりとりをみています


「きつねさんはどうなの?」


「え・・・そりゃあ、食うばかりが楽しみじゃないから・・・そんな夢みたいなことできるなら・・・」


最後はテレくさそうに小声にきつねさんが言います


そこで森の主のくまさんが言いました


「じゃあ、生涯に1回くらい全てを忘れて祭り騒ぎしようや」


こうして森でクリスマスのまねごとをすることになりました




木はもみの木でいいの?


飾り物はどこから探す?


これは何のお祝い?


何でもいいよ、自分たちは自分たちが生きて集えたことを祝うのさ


お洋服の変わりはどーする?


着替える代わりに清めの泉に体を沈めよう


牧を集めて火を焚こう




誰が火をつけるの?


シーン・・・



さて困った

暖かいのは嫌いじゃないけど

森を焼き尽くす

火はみんな苦手です

誰も立候補することなく

誰も推薦することもなく

場がどんどん凍り付いていきます


森のくまさんが言いました

「とりあえずなくてもいいじゃないか

中央にはもみの木で十分」


「うんうんそーだよね」

「それでいいよね」


みんなが元気をとりもどしました


でもその言葉を聞いて

森を抜けて街へ走っていたものがいます


鹿さんです

鹿さんには人間のお友達がいました

そこで相談に行ったのです


相談されたお友達の人間は言いました

確かに焚火は森の中では危険だし

動物の君たちには怖い存在だよね


少し考えて

その子はひとつのアイテムを持ってきました

これはね

ランプと言うものだよ

倒れると消える仕組みになってるから安全

これを沢山用意しよう


そうして用意された沢山のランプは

クリスマスイブの前日に

鹿のお父さんが車を引っ張って森へ持って行きました


中央に

飾られたもみの木

森の広場を大きく均等に飾られた小さなランプたちが

その木を神秘的なものにしてくれました


「私たちは弱肉強食の世界で食べるものであり


食べられるものでもある


だが、一度だって無駄な殺生はしたことはないつもりだ


時には蓄えることもあるが


必要以上のものではない


此処に誓おう、弱き者たちも強き者たちも


あの森の聖なる祠で


今日という日を定めたことを


我らの誇りとしようではないか」



さぁ、お祭りの始まりです


食べ物はみんな違うのでありません


でも、楽しく話


楽しく踊り


おいしく果実酒をいただき


みんな朝になるまで


誰一人抜けるものはいませんでした


それでも朝が来て


名残惜しそうにしながら1匹1匹消えていきます


最後に残ったのは


兎さんと狐さんでした


「終わっちゃったな」


「終わったなー」


「来年は無いよね」


「あるわけないだろ、俺ら狩りしにくくなるだけだもん」


「来年は考えなくていいよ。私を食べて」


「食べるわけないだろ、てかあきらめるな

必死で逃げろ。追いかけても捕まらないくらい早くなれ」


「・・・そんなに早くなれるかな・・・でもなんで?」


「・・・・・・もう食べたくないから・・・

捕まらなきゃこのまま友達でいられるだろう・・・」


うさぎさんはほころび


キツネさんはテレます


「じゃあ逃げるねwずっと捕まらない」


そういうと兎さんはかけていきました


キツネさんはうさぎを追いかけるとき狙うふりして距離をとってから


うさぎを追いかけていきます


それをしなくてもうさぎが逃げれるようになったとき


2人は本当に仲のいい友達になっていました


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