銀色の九尾狐

雪が降る中

1匹の子狐が丸くなって震えてました


雪はシンシンと積り

子狐を白く染め上げていきます


子狐が寒さに慣れたような気がする頃

眠くなって静かな眠りにつけそうでした


意識が無くなる瞬間

でも子狐の意識は覚醒させられます


大きな手の平が熊のように毛むくじゃらな巨人が

子狐を掘り起こしました


子狐は慌ててバタバタと逃げようとしますが

軽く腹回りをつかみきるその大きな手からは逃れられません


そのまま巨人は連れられて

子狐は諦め静かになり

どこに連れてかれるのか眺めていました


大きな門壁の中に

さらに大きな建物がずらりずらり並ぶその奥に

それはそれはその巨人たちの住む家よりもでかい城と神殿が立てられてました


子狐はその神殿で過ごすことになります

その奥のさらに奥が祠になってて

そのさらに奥に鎮座した生き物がいました


子狐に似てでも目は鋭く

どこか炎ぽいオーラーを纏って

尾が9つもある

黄炎の九尾狐

それが子狐の親となりました


子狐はまだまだ小さく

日がたつごとに

自分がここにいるのが何故かも考え無くなり

というか・・・小さすぎて

その頃の記憶は無くなってしまい

最初からこの巨人の国の九尾の神殿奥の祠で

生きてきた感じに思うようになりました



大きな巨人の子達と一緒に

元気に遊びまわる中

小さな狐は自分が小さいことに不思議に思う年齢に育った頃


子狐は母代わりの九尾狐に尋ねます

「なんで僕だけこんなに小さいの?」


九尾の狐は黙って人の国の狐のいた森へ連れて行きます

丁度それは子狐が拾われて1年ほど経った頃で

その日も雪が降り積もる勢いで

寒さの中子狐は覚えてないけど懐かしいと感じるその場所で

九尾の話を聞きます


「巨人の遣いをだしたら

お前をつれて帰ってきた

お前の体はもう死んでいたのだよ

でも温かかった

巨人は私の頼んだ薬をお前に使った蘇生の薬をね

そして私のもとに連れてきて自分の命を使っていいからと

お前の事を頼まれた

私はそれで自分の子供を諦めたのだよ

命を奪ってまで生き返らせてもきっと私の子は悔やむだろうし

変わりにお前が私の前に来た

小さくて弱くてこんな魂を生かすのに

数千年も生きた我が子を見殺しにするのか迷ったけど

巨人は私を信じでお前を託した」


「僕はここで死にかけてたの?ううん、死んでたんだね

普通の狐だから巨人の里では違和感があったんだ・・・」


九尾の狐が一つの薬を取り出します


「九尾の狐は本来いない

とある魔術師のその薬を代々受け継いで

作り飲み一族を作り出してるだけだよ

人の里に帰るか巨人の里に帰るかはすきにするといい

でも私のもとに帰るならその薬を飲みなさい

それで一族の仲間になれる」


それだけ言うと九尾の親代わりは先に帰ってしまいました

雪が降る中自分の体を白く染め

子狐はしばらく考え込んでいましたが


意を決して薬を飲みます

金色の美しい体毛がみるみる白くなり

尾が分かれて増えていきます

体はどんどん大きくなって

母親代わりの狐よりも1周り大きくなりました


帰ると親代わりの狐がかしこまって待ってました

「帰ってくると信じておりました

銀色の九尾狐様・・・

予言は実現し今よりこの神殿の当主は貴方様になります」


「うん・・・薬を飲んだ瞬間全部伝わってきた

ここの歴史・九尾の守るもの

そして拾った巨人や母君の僕に対する優しさと

僕を選ばざる得なかった現状も

ごめんね母君も巨人も僕を見つけちゃったから

大切な存在を見捨てる形になった」


母代わりだった九尾は横に首をふる

貴方の存在を守るために

この里は出来上がってる

全てを浄化できる能力を持つ白銀の九尾狐

それは1億年に1匹存在するかしないかの存在


「母君?僕はもう少し子供でいたいけどダメなのかな」


金色の九尾狐の眼が細まります

それはまるで笑ってるかのように

「いいえ、外の子達と遊んでらっしゃい

私はまだ健康

貴方が大人の心を育てるまで代理はいくらでも努めますよ」


不思議な九尾狐の親子の絆は一層深まった出来事でした


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