とある家の埃ちゃん

大晦日も近くなると

どこの家も大掃除で大忙し


この家もそうでした

まだ手伝えない歩き始めたちよちゃんは


うろうろしておろおろして

大人がいつものように構ってくれないので


ねこのみゃーの席で一緒に丸くなってお眠りです


大人たちが「今年は完璧な大掃除できたね」と言います

屋根の煤から押入れの吹き上げまでしたつもりだったのですが


ちよちゃんは誰かと仲良く遊んでます

それは大きな埃ちゃんでした


大人はびっくりします

「それどこから連れて来たの」


ちよちゃんは指差します

小さな通風孔・・・大人では手に入らないそこへ

ねこの為に作った道を這い上がり連れて来たようです


大人たちがそれを取り上げようとすると

大おばあちゃんが止めます


今だけだから

汚いと思わずに遊べるのも

去年を忘れて心新たにと思わなくても

過去

現在

未来

一つなぎに全てを抱えて生きられるのも

本当に今だけだから


埃一つくらい来年に抱えても構わないだろう

それはただのゴミだけど

教えてくれてるよ

捨てて来たものの中にもきっと尊いものがあったかもと


掃除なんてやり残しがあるくらいでいいのさ

ちよがねこの道這い上がって

落ちなかったことのが運が良い

目の行きとどきを忘れたこと反省しなきゃねと




ねぇ・・・大切なもの捨てて来てませんか?

ねぇ・・・大事な物から目を離してませんか?



やり残し上等

繰越上等


完璧な空間で虚ろを見るより

いろんな思い出や汚れ引きずって疲れたまま汚れたまま

それでも手放しちゃいけないものまで掃き捨てるような真似しないでね


ちよちゃんもすぐ一緒に大掃除する年齢になり

埃ちゃんのことは忘れちゃうけど

大おばあちゃんが取り上げるなと言ったものは

きっとただの埃じゃなかったはず


たぶんね・・・



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