独特の光を放つもの

玄関をでると

目の前を光が横切る


私は目を細めた

ああこんな田舎でも忘れ去られてた


何十年ぶりに見ただろう

そんな形で目を細めてついていく


ついていくつもりだったが

あっという間に用水路の草むらに隠れて

目に光は入らなくなった


美化活動はしていても

蛍が住むほど綺麗な水ではもうないだろう


何十年ぶりにか孵化した蛍自身が

世の変わり果てた状態に嘆き

仲間を探していたのかもしれない



今年は我が子を蛍の園にでも連れてくか

人工繁殖だが

毎年見事な光の幻想を見せてくれると聞いた


いつかはそれもかなわなくなるのかもしれないが


蛍をただの虫だと言って

なかなか手をださなかった自分を思い出す

大人になってこんなに蛍を見なくなるなら

怖がらずもっと光をこの手で抱き締めれば良かったかも

そう思ってももう昔の話だから


せめて蛍がどんな生き物か子供にみせておこう

あいつの血も引いてるから

きっと私の子は怖がりはしないだろう


今週末は晴れることを祈って

再び家の中に入った


用があって外に出たのを思い出すのは

次の日だった


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