Life2-5 そうだ。国王に呼ばれていたの忘れていたよ
「んまんま」
もぐもぐと衣揚げを楽しむレキを見ながら、すでに食事を終えた俺たちは一服ついていた。
ちなみにすでに材料は空である。
「ははっ。レキはそんなに食べてすぐに動けるのかい? この後、すぐに運動だよ?」
「任せて。消化は早い」
「それもそうだったね。いらない心配だったか」
笑いながら、リュシカは淹れたお茶を一口含む。
「そういえば、ジン。一つ、あなたに伝えないといけないことがあったんだ」
「ん? 何かあったか?」
「実は国王から一度、顔を出しに来いって伝言をね。あなたに会いたくて仕方がないらしい。昨日はいろいろとあって頭から抜けてしまっていたよ」
「国王様が? わざわざ俺を?」
「ジンも勇者パーティーだったのだからおかしくはないだろう? それに国王はあなたをたいそう気に入っていたからね」
「確かに……ジンさんが最後まで同行できるように取り計らってくれたのも国王様でしたもんね」
「本当にな。ありがたい限りだよ」
「国王様が『ジンがあのパーティーには必要だ』って反対派を押し切ったのは私も話しに聞いています。いま思えばかなりの英断でしたよね」
「国王はこのパーティーが誰を中心に回っているか、きちんと理解していたようだから。さすが【賢王】と呼ばれるだけはある」
確かに国王様は初めから俺とレキの関係を大切にしてくれていたように思える。
とはいえ、国王様に気に入られるような事はしてないけどなぁ……。
政務での疲れを癒やしてほしくて旅の途中で手に入れた薬草を送ったり、仕事が大変そうだから討伐の報告書をまとめたり、王宮で待機の際には息抜きと称した遊戯に付き合ったりしたくらいだ。
「というわけで、国王はジンにもお礼が言いたいらしくてね。今から私と王宮まで【転移】しよう」
「――ちょっと待ってください」
リュシカの提案に待ったをかけたのはユウリだ。
うん、俺もリュシカが口にした瞬間、絶対もめごとになるんだろうなと思った。
ここ数日、何度も三人のこういうやりとりを目の当たりにしている。
なんなら魔法を浴びて、物理的に体感している。
きっとユウリのことだ。
頭の中では俺がリュシカにくんずほぐれつしている桃色の想像を繰り広げているに違いない。
それだけ想ってくれているのは嬉しいけど、心配しなくても良いのに。
「それなら私も連れて行くべきです」
「おや? この間、私とレキに報告を任せていた気がするんだけど……記憶違いかな?」
「そ、それはジンさんの看病もありましたし……こ、国王様もきっと私とも会いたがっているはずです!」
「いや、ユウリに関しては全く言及はなかったよ」
「……あのあごひげっ……」
国王様にそんな悪口を気兼ねなく吐けるのは彼女くらいだろうな~なんて思いながら、湯飲みのお茶を飲み干した。
よし! こういう場を収めるのも夫の役目だろう。
今後のためにも一肌脱ごうじゃないか。
「ユウリ。今回はここに待機。ユウリがいなかったら誰がレキに建築の指示を出すんだ?」
「絶対わからなくなる。その自信が私にはある」
口元がテカテカになったレキがニッと良い笑顔でサムズアップする。
レキは戦闘に関しては本能的に行えるが、それ以外に関しては致命的に思考能力が下がる。
こればっかりは農村出身で、魔王討伐に明け暮れる日々だった弊害なため本人は悪くない。
それをわかっているからユウリも反論できずにいた。
あともう一押ししてあげれば彼女も納得して引き下がるだろう。
「それに待っていることでユウリに生まれるチャンスもある」
「チャンス……ですか?」
「ああ、ここで待っていたら旦那さんを迎える新婚の妻役ができるよ」
「気をつけていって来てください、リュシカさん。
「もう役に入り込んでいる!?」
リュシカも
さすが普段から猫を被っているだけある。
「レキちゃんも私と一緒に待っていましょうね~」
「そもそも私は最初から反対していない。仲間面しないでほしい」
「あぁん、ひどい! たくさんの苦労を一緒にしてきた仲じゃないですかぁ!」
「おっぱい押しつけないで……息苦し……」
ユウリがレキを抱きしめて、グリグリと胸に顔を押しつけていた。
心底レキが嫌そうな表情をしているのが面白い。
全世界の男が一度は望むシチュエーションなのに……俺もうらやましいと思う。
「……ぷはぁ!」
「ひゃんっ!?」
おっぱいをわしづかみして無事に脱出したレキは今度はこちらに向けてグッと親指を立てた。
「こっちは私たちに任せて。帰ってきたらビックリするくらいの家を建てておく」
「リュシカさんが用意してくれた
「わかった。俺たちも何か喜ぶお土産でも買ってくるよ。新しい食材もいっぱい仕入れてくるから」
「ん。楽しみにしてる」
「あっ、ずるいです。ジンさん、私も!」
「……わ、私もいいか?」
くしゃくしゃとレキの頭をなでると、二人もずいっと頭を差し出してくる。
その様子が愛らしくて、自然と頬がほころんでしまう。
リュシカは一緒に王都に行くのになぁ。
こうして俺とリュシカは王宮へ移動、ユウリとレキは家づくりを始めるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます