第31話

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《特殊イベントのお知らせ》


 本日の深夜零時より、ゲーム内イベントを開催致します。

 期限は本ゲームのサービス終了まで。


【イベント内容】

 三日に一度、メイダスと日本の両陣営よりプレイヤーが三人づつ選出されます。発生時刻はランダム。選出されたプレイヤーは、特殊イベント空間に強制誘致となります。


【特殊空間内での概要】

 マップ中央の【シンボル】に触れることが勝利条件。勝者はそのとき参加している敗者の中から、ひとりを選んでロストさせることができます。


 また、シンボル接触前にどちらかの陣営プレイヤーが全員ロストしていた場合、残った陣営の勝利となります。(生き残ったプレイヤーは勝敗が決した後に、通常マップへと送還されます)


 みなさまのレガリアワールドオンライン2ライフが、楽しいものでありますように。


 運営一同


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 レガリアワールドオンライン2にログインするとメールアイコンが点滅していた。開くとこんなお知らせが。


 このタイミングでこんなタイプのイベントを盛り込んでくるとか、作為を感じずにはいられない。僕が隠し要素を発見した件と、絶対に関係があると思う。


「ほわっ?」と声を上げて、近くにいたプレイヤーさんが消えた。あ、これ誘致されたな。ということは……、今日のイベントはこれで終了と見なして大丈夫だろう。心置きなくレベルアップに励める。


 冒険者ギルドで紹介してくれるらしい個別ダンジョンに、行ってみたかったんだよね。


「すみません、個別ダンジョンを紹介してほしいんですけど」

「二人以上四人以下のパーティを組んでから再度お申し込みください」


 NPCの受付嬢に話しかけると、そんな返答が返ってきた。ソロで行けないなんてボッチにはキツい。


PKKプレイヤーキラーキラーの英雄じゃないか! 僕とパーティ組もうぜ」

「いやいや、勇者と組むのは俺だ」

「私なら前衛も後衛もできるわ。猥談もお好みに応じて」

「ちょっとちょっと。こしあんくんに用事があるなら、マネージャーの私を通してよね」


 僕と受付嬢の会話を聞いていた人たちが、名乗りを上げてくれた。どうやらPKを倒した件が、高感度アップにつながってるようだ。前作では序盤のボッチがデフォルトだったけど、ここではパーティを組めそうで嬉しい。で、さり気なく沸いてる地雷のテフロンさん、いつからマネージャーになったのかな。


「みんなありがとう。一斉にパーティー申請を送るから、受諾の先着順で決定するよ」


 若干、上から目線な気もするけど仕方ない。早く個別ダンジョンに行きたいからね。


 結果的に今回パーティーを組んでくれるのは、僕を合わせて男性三人、女性一人の構成になった。しっかり含まれてるテフロンさんは、安全距離を測る以外に早押しも得意らしい。


「改めて、個別ダンジョンを紹介してください」

「かしこまりました。どのランクに挑戦いたしますか? 尚、皆さまの合計幸運値が50以下の場合、稀にダンジョンが変異します」

「変異って?」

「従来の等級より、難易度が高くなります」

「それってキャンセルできないんですか?」

「転移魔法陣に乗れば、すぐにここまで戻ってこられますよ」

「じゃあ、安心……なのかな」

「どうでしょうか」


 受付嬢の不穏な台詞が終わると同時に小窓がポップアップ。



 ・初級ダンジョン:推奨パーティレベル10

 ・中級ダンジョン:推奨パーティレベル30

 ・上級ダンジョン:推奨パーティレベル60

 ・超級ダンジョン:推奨パーティレベル90

 ※ダンジョンルールは等級によって変化します。



 パーティ内で一番レベルが低いのはテフロンさんだけど、他のプレイヤーさんも大して高くない。何度も挑戦できるようだから、まずは安全に攻略したい。


「初級に行こうと思うけど、それで大丈夫?」

「ワシは何でもええけん」

「拙者も同じくでござる」

「私はぁ~、中級でも良いかな~みたいに思ってるんだけどぉ~」


 今回一緒にプレイしてくれるパーティが決まった。広島弁のジャケンさんと武士口調のゴザルさんだ。


「よし、じゃあ初級にするよ。みんな宜しく~」

「こしあんくん酷い! 私の意見が反映されてないわよ」

「いや、だってテフロンさんだし」

「私の身を気遣ってくれたのね……うふふ」


 すごいなー、そのポジティブ思考は尊敬に値する。お前、胞子を撒き散らしてフレンドリーファイアしたこと忘れてないか?


 ではいざ行かん。初の個別ダンジョンへ!

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