第48話

 アルカ遺跡の一階は、ファイアスライムだらけのモンスターハウス。息をつく暇もなく連戦が続き、全てのモンスターを殲滅するのに一時間以上かかった。そこからさらに、リポップしたモンスターを倒してトータル二時間が経過。


 人のことは言えないけど、このふたりはゲーム大好き人間なんだな。普通なら同じ敵を倒すだけの作業なんて、すぐに飽きてしまう。


「よし、上に行きましょう」


 大虐殺に満足したのか、ようやくクリームがそう声をかけてくれた。そして階段を登ったその先は……またもやモンスターハウス! 今度のスライムは青い奴らで、見るからに炎属性が弱点っぽい。


「タウント!」

「盗賊の目、スラッシュ」


 安定のゼロダメージでアイテム回収完了。そして始まる怒涛の魔女無双。


「ファイアバレット!」

「ファイアバレット~!」


 瞬殺なので、ファイアスライムと強さの違いが分からない。



 アイススライム LV49

 HP 3500

 MP 350

 物理攻撃力 0

 魔法攻撃力 260

 物理防御力 260

 魔法防御力 260

 速度 6

 幸運 0


【能力】

 氷属性攻撃無効・炎属性攻撃貫通


【持っているもの】

 N 氷の結晶

 R アイススピア

 UR 水耐性のスキルブック・ブリザードランス



 あ、多少はファイアスライムよりもステータスが上なんだ。でも、このふたりにかかれば誤差のようなもの。


 この階層でも一方的な虐殺劇が繰り広げられた。こいつら絶対、スライム王国から指名手配されてるわ。


「さあ、次の階ね」

「次からはちょっと面倒くさくなる~みたいな」

「そうなの?」

「三階は風属性、そして四階は地属性のスライムになるわ」

「じゃあ、無双は終わりかな?」

「それでもエミリアと二発づつ撃てば終わるけどね」

「魔法コマンドをタップするのが面倒くさい~、みたいな」


 何その贅沢な悩み!


「よし、じゃあMP補給してから突撃するわよ」

「了解~みたいな」


 アルカ遺跡の三階も四階も、今までと同じ戦法で余裕だった。メイジ系最強説が僕の脳裏をかすめたものの、まあそれはシーフ系のこしあんと比べたらどのジョブだって最強だと思う。今さらながら忍者になりたい願望が頭をもたげてきた。時すでに遅しだけど。


 でも、こしあんだって全く役に立たなかったわけじゃない。



 ウィンドスライム

 N 風の結晶

 R 風の大弓

 UR ウィンドバーストのスキルブック・風耐性のスキルブック


 ガイアスライム

 N 大地の結晶

 R 大地の鎧

 UR ガイアバーストのスキルブック・地耐性のスキルブック



 三階のウィンドスライムからはウィンドバーストのスキルブックを。四階のガイアスライムからはガイアバーストのスキルブックを、それぞれぶん取ってやった。


「クリーム、エミリア。はいこれ、使いなよ」

「え……これって未知のスキルブック?」

「こしあんさん! 超最高なんですけど~みたいな」

「非力だけど、シーフにはシーフの役割が……ってね」


 そんな感じで新たなスキルブックをふたりに譲渡してからは、進撃速度が格段に上昇した。何だか僕もパーティの一員になれたような気がして、とても嬉しい。MMORPGは、やっぱりこうでなくちゃ。


 ニャン太郎様、やっぱり貴女の言ってたことに間違いはありませんでした。


 そして登りつめた最終層の五階。待ち構えていたのは、今までより一回り大きなスライムたちだった。体は七色に光り輝いていて、どこか王者の風格を醸し出している。


 ちなみにこの塔には宝箱もたくさんあって、こしあんの罠解除スキルが二段階成長した。かなり上げるのは面倒だと思ってたけど、上昇速度は緩く設定されていたようだ。ニャン太郎様から貰った忍者シリーズも、ここの宝箱に入っていた。


「こいつらは強いわよ。私たちでも時間がかかるわ」

「スライムのくせに生意気~みたいな」

「じゃあ、被弾覚悟って感じ?」

「ヴァネッサさんがいるから、そうでもないかな」

「任せてください」

「じゃあ、ファーストアタック以外はヴァネッサの回復に専念するよ」

「こしあん、回復できるの?」

「HPポーションでなら二千回分ほど。回復量の低い全体回復なら無限に」

「……ホント、あなたには驚かされてばかりだわ」

「惚れてしまうやろ~みたいな」

「惚れてくれるの?」

「冗談だけど……みたいな?」

「さあ、行くわよ。さすがにあと二時間もしたら睡魔がくるから」

「うん、お願い」


 大きなスライムに接敵した瞬間、ズームされる画面。七色の敵が六匹、ウネウネと気味悪くうごめいてる。


「タウント! ガードスタンス!」

「盗賊の目、アタック!」

「エナジーストーム!」

「エナジーストーム~!」


 無属性魔法の下級、エナジーバーストを使わずに中級のエナジーストームを行使するふたり。それだけで、これまでのスライムとは格が違うと知ることができる。


 この魔法の威力は【LV1】で魔法攻撃力の【1.5倍】だったはず。ふたりは【LV5】だから威力は【2倍】になっているはずだ。さらに追加固定ダメージも襲いかかる。


【424】【424】【424】【424】【424】【100】【100】【100】【100】【100】【360】【360】【360】【360】【360】【100】【100】【100】【100】【100】


 合計【4920】ものダメージをくらって、まだHPバーが三分の二も残ってる七色スライム。そして繰り出される反撃の魔法。


【31】【31】【31】【31】【31】【31】と、六匹全ての魔法弾攻撃がヴァネッサに襲いかかった。彼女の魔法防御力は【206】、ガードスタンスの効果も乗っているので【309】になっているはずだ。しかも特性や専用装備の効果で被ダメージは【25%】も軽減されている。そんなカッチカチの彼女にダメージが通るのか!


 一回でこんなにもHPを減らされるなんて想定外だ。もしも、こしあんなら……考えるのは止めよう。



 ヴァネッサ

 ジョブ1 ガーディアンLV48

 ジョブ2 ナイトLV31

 HP 1080

 MP 80

 物理攻撃力 15+5+50

 魔法攻撃力 7+1

 物理防御力 108+23+115

 魔法防御力 108+23+75

 速度 7+1

 幸運 6+0+1

 ジョブ特性1 被ダメージ20%ダウン

 ジョブ特性1 被物理ダメージ20%ダウン

 ユニーク特性 ヘイトアップ12%

 ジョブスキル ガードスタンスLV5 タウントLV5

        シールドバッシュLV3 タックルLV2

        ヒールLV1

 後天的スキル 全状態異常耐性LV1 即死耐性LV1

 ヘパイストスの加護 被物理ダメージ5%ダウン

 所属クラン ラッキーサークル

 クラン効果 幸運1%アップ


 武器1 金剛石の槍 物理攻撃力+50

 武器2 真紅の大盾 物理防御力+30 被ダメージ5%ダウン

 頭防具 金剛石の兜 魔法防御力+50

 体防具 金剛石の鎧 物理防御力+60

 足防具 金剛石のレガース 物理防御力+25

 装飾品 退魔のネックレス 魔法防御力+25



「賢者の石、賢者の石!」


 これ、本当に回復以外の行動をする暇がないわ。


「エナジーストーム!」

「エナジーストーム~!」


 ふたりの再攻撃が敵に襲いかかる。与ダメージがポップアップしてる隙に、奴のステータスをモンスター図鑑で確認しておこう。



 シャインスライム LV52

 HP 15000

 MP 1000

 物理攻撃力 0

 魔法攻撃力 350

 物理防御力 600

 魔法防御力 600

 速度 9

 幸運 0


【能力】

 炎・氷・風・地属性攻撃無効


【持っているもの】

 N シャインボム

 R シャインロッド

 UR 全属性耐性のスキルブック・EXPリング



 あーこれはダメな奴だ。下層のスライムとはステータスが違いすぎる。こしあん如きがどうにかできる敵じゃない。


 経験値は美味しいんだろうけど、ヴァネッサがいなければ魔女のふたりも殺られてる感じだ。まあ、彼女たちもヴァネッサありきで最上階に進んだのだろうけど。


 ナイト系が受けてアタッカー系が攻撃、そして回復手段のあるジョブが回復。この連携がないと一瞬でパーティが崩壊してしまう。敵が範囲攻撃持ちじゃなくて本当に良かった。

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