第47話
クリームは相変わらずのツバ広帽を被った魔女ルック。対してエミリアは、くまモンコス(©2010熊本県くまモン)で顔だけ出している。銀髪、長い耳、金銀のオッドアイとツッコミどころ満載のキャラクターだけど、あえて容姿に関してはスルーしておこう。
「じゃあエミリア……で、良いんだよね。はい、これ」
即死耐性のスキルブックを指定して、トレード欄に入れた。
「わ~、ありがとう! みたいな」
「エミリア、トレード欄にちゃんと対価を入れたの?」
「あ、忘れてた。みたいな……」
「別に良いよ、クラスメイトだし」
「こしあんくん、ごめん~みたいな。お金で大丈夫?」
「だから良いって。その代わりパワーレベリングに期待してるから」
アイテム譲渡も終わったので、あとは念願のパワーレベリングだ。さあ、クリームとエミリアよ。こしあんを五千万G分、鍛えてくれたまえ。
「こしあん、ありがとうね」
クリームからパーティー申請が届いたので迷わず承諾。ステータスを見ると、彼女もエミリアもすでに最上位ジョブとやらにチェンジしているようだ。しかもどちらも魔法アタッカー系。これはもはや期待しかない。
「最上位ジョブって、転職専用カウンターに行けばなれるのかな?」
「そうね。【LV50】以上で【上位ジョブになる】を選べば良いだけよ」
「なるほど、覚えとくよ。で、レベル上げは新大陸で?」
「あそこは私たちだけだと無理ね」
「じゃあどこで?」
「アルカ遺跡」
「アルカ遺跡、みたいな」
そんな遺跡あったっけ。少なくとも僕は行ったことがない。
「ここから南下したところに森林地帯があるのよ。その中心にある隠しダンジョンよ」
「メイジ系が有利な場所、みたいな」
「有利なんだ」
「出てくるモンスターが属性持ちだから、有利属性で攻撃できるのよ」
「しかも有利属性なら魔法防御力無視~みたいな」
「へぇ、でもメイジ系って、炎属性と氷属性と無属性しか覚えないんじゃなかったっけ?」
「それでも他の場所よりは効率が段違い。モンスターの経験値も高いから、こしあんもサクッと最上級ジョブになれるわ」
そんな場所があったとは。まあ知っていても属性持ちの敵しかいないんじゃ、こしあんには厳しそうだけど。
「早く行こう~、五千万も貢いで貰ったから深夜まで頑張るよ。みたいな」
「エミリア、言い方」
「気にしてないから大丈夫」
「それはそうと……後ろの人は傭兵さん?」
「いや、NPCの冒険者。仲間なんだよね」
「ヴァネッサだ。宜しく頼む」
「あ、はい、よろしく。それにしても、こしあんって……」
「謎のスキルブックを持ってたり、NPCを仲間にしてたり、私たちとは違うゲームしてる、みたいな?」
若干自覚があるので、否定しづらいのが痛いところ。シーフらしさを追求してるだけなんだけど、いつの間にか他人と何かが大きく掛け離れている気がする。僕もみんなと同じゲームがしたい。
「じゃあヴァネッサさんにもパーティー申請送るね」
「感謝する」
「うわ~! 本当にNPCの冒険者だ。しかもユニーク特性まで」
「……こしあんが普段レガリアで何してるのか、興味が湧いてきたわ」
アイテム検証くらいしかしてないんだけどね。
港町シェレナを南下すること十五分。ようやく森林地帯に辿り着いた。ここまでの道のりで、こしあんのレベルはひとつだけ上がっている。
キャラネーム こしあん
ジョブ1 ハイシーフLV42
ジョブ2 ハイシーフLV38
HP 510
MP 140
物理攻撃力 27+23+200
魔法攻撃力 10+4
物理防御力 30+22+40
魔法防御力 28+22+40
速度 37+20+25
幸運 102+20+1+10
ジョブ特性1 アイテムドロップ率30%アップ
ジョブ特性2 アイテムドロップ率30%アップ
ユニーク特性 アイテムドロップ率30%アップ
ジョブスキル ハイスチールLV5 罠解除LV2 脱兎LV2
盗賊の目LV5 罠設置LV1 増援LV1
後天的スキル 即死耐性LV5 全状態異常耐性LV3 スラッシュLV5
ファイアバレットLV1 ヒールLV5 ストロングLV5
ポイズンミストLV2 アシッドレインLV2 キュアLV2
メルクリウスの加護 激レアアイテムドロップ率5%アップ
所属クラン ラッキーサークル
クラン効果 幸運1%アップ
武器1 魔性の円月輪 物理攻撃力+100 スチール成功率25%アップ
武器2 ペインチャクラム 物理攻撃力+100 全状態異常付与10%
頭防具 忍者の頭巾 魔法防御力+40 速度+5
体防具 忍者の衣 物理防御力+40 速度+5
足防具 忍者の足袋 速度+15
装飾品 忍者バングル 幸運+10 アイテムドロップ率10%アップ
ジョブ1 SP 0ポイント
ジョブ2 SP 0ポイント
所持金 254077000G
足を踏み入れると画面が変わり、目の前には五重の塔がそびえ立っていた。森の外からは何も建物が確認できなかったのに。
「ここよ。中はスライム系モンスターの巣窟になってるわ」
「ドロドロ~みたいな」
「了解。アイテムを盗みたいからファーストアタックしても大丈夫?」
「攻撃速度の遅い敵ばかりだから問題ないわ」
アルカ遺跡に触れると画面が塔の内部へと切り替わった。そして衝撃の光景が目の前に。どこもかしこも赤いスライムだらけなのだ。これ、モンスターハウスじゃないの?
「行くわよ、連続戦闘になるから」
「お、おう」
クリームがモンスターに突っ込むと画面がズーム。戦闘開始だ。一、二、三、四……七匹だって!?
「タウント!」
「盗賊の目、そしてアタック!」
新しく入手した円月輪系の武器をその場から投げつける。【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】と無情にポップアップするゼロダメージ。マジか! こしあんの物理攻撃力じゃダメージが通らないじゃん。どんだけ強いんだよ、ここのスライム。
《ハイスチール失敗》
《ハイスチール成功》
《ハイスチール成功》
《ハイスチール失敗 敵から盗めるアイテムはもうありません》
《ハイスチール失敗 敵から盗めるアイテムはもうありません》
《ハイスチール失敗 敵から盗めるアイテムはもうありません》
《ハイスチール失敗 敵から盗めるアイテムはもうありません》
《ハイスチール失敗 敵から盗めるアイテムはもうありません》
《ハイスチール失敗 敵から盗めるアイテムはもうありません》
《レッドスライムは麻痺しました》
……まあ、アイテムが盗めたから良しとしよう。麻痺も発動したし。でもこんな強い敵を相手にして、クリームたちは本当に大丈夫なのか?
「アイスバレット!」
「アイスバレット~!」
【512】【512】【512】【512】【512】【480】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】【0】
何も心配することはありませんでした。さすがは攻撃職。七匹全てのスライムに極大ダメージを与えてオーバーキルし、なおかつ追加ダメージまでポップアップさせている。こしあんは完全にいらない子だ。
《congratulations 経験値と35000Gを獲得!》
《炎の結晶を獲得!》
《炎のリングを獲得!》
《火耐性のスキルブックを獲得!》
おっと、良い感じでこいつらの所持アイテムが揃った。モンスター図鑑を見てみよう。
ファイアスライム LV48
HP 3000
MP 300
物理攻撃力 0
魔法攻撃力 250
物理防御力 250
魔法防御力 250
速度 5
幸運 0
【能力】
炎属性攻撃無効・氷属性攻撃貫通
【持っているもの】
N 炎の結晶
R 炎のリング
UR 火耐性のスキルブック・フレイムタン
スライムのくせに、物理防御力がこんなにあるのか。こしあんの物理攻撃力と同じ数値だ。これだとダメージが入らないわけだよ。
ストロングを使えばダメージは入りそうだし、アシッドレイン(防御無視の固定ダメージ)か、ポイズンミストのスリップダメージも有効に思える。ただ、こしあんのMPを考えると……うん、やっぱり無理だ。
「次が来るわよ」
ここはふたりの無双を見学して、アイテム収集だけに専念しよう。
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