第11話
【橋の前にいるトカゲ野郎を倒せ!】
はじまりの街からレガリア城下町へ行商に行くんだが、途中の橋にリザードマンが棲みついて通れない。誰かあのトカゲ野郎を倒してくれ。
[ 報酬 ]10000G
次の街に行くなら、必ずこのクエストを受注して達成しなければならない。クエストを受注せずに橋の前へ行っても、謎の力で押し戻されて先には進めないのだ。そのうち岩ちゃんに寄生して達成しようと思ってたけど、今はニャン太郎様から貰った武器がある。リザードマンなんて余裕だ、余裕。
さっきログアウトして攻略サイトを覗いたら、装飾品一覧にゴブリンリングとレッサーオークマントが追加されていた。彼の更新速度に惚れ惚れする。
ついでにリザードマンの情報も仕入れてきた。
リザードマン LV5
HP 900
MP 10
物理攻撃力 65
魔法攻撃力 1
物理防御力 30
魔法防御力 30
速度 1~9
スキル 大車輪(近距離範囲攻撃 MP10消費)
ドロップアイテム トカゲ肉(ノーマル) リザードメイル(レア)
序盤のボスって感じのステータスだ。スキルを一回しか使えないのも可愛らしい。
【LV5】まで上げて物理攻撃力に全てのSPを注ぎ込んだファイターなら、一度のノーマル攻撃で【50のダメージ】を与えられる。(ジョブ特性込みで鉄の斧をふたつ装備した状態)
パーティ枠は五名なので、五人のファイターでスキルをぶっ放せば、すぐにクリアできるだろう。ファイターがメイジかダークに変ってもそれは同じ。ナイトがいれば、なお安心だ。ヒーラーがいれば、鬼に金棒。レンジャーは微妙だけどヒーラーの代わりになるから及第点。
シーフは……たとえ僕のように【LV10】まで上げて、もともと低い物理攻撃力や物理防御力にステータスを振ったとしても邪魔でしかない。ドロップアイテムのトカゲ肉はHPを100回復するだけの消耗品。レアアイテムのリザードメイルは、同等のものがレガリア城下町で購入可能。どう考えてもパーティに必要ない。
冒険者ギルドの呼びかけで、シーフを省いているのも頷ける。ダメじゃん、シーフ。
はじまりの街を出て、道沿いに西へ向かう。フィールドはやたらと広いので、目的地まで五分くらいかかると攻略サイトに書いてあった。いつでもどこでも攻略サイトの情報は命綱だ。
そう、僕は今、【橋の前にいるトカゲ野郎を倒してくれ】のクエストを受注して次の街を目指している。はじまりの街周辺の敵を倒しても経験値が貰えなくなってしまったからだ。敵とのレベル差が大きくなりすぎると、貰えるものも貰えなくなるシステムらしい。
まあこんな序盤で【LV10】まで粘った僕も悪いんだけど。しかも幸運極振りで。結果的に物理攻撃力も物理防御力も低いままだったから、ニャン太郎様からの施しがなければ詰んでいた。
キャラネーム こしあん
ジョブ1 シーフLV10
ジョブ2 なし
HP 45
MP 20
物理攻撃力 7+140
魔法攻撃力 2
物理防御力 7+6
魔法防御力 2+3
速度 20+1
幸運 49+1
ジョブ特性 アイテムドロップ率20%アップ
ユニーク特性 アイテムドロップ率30%アップ
ジョブスキル スチールLV3 罠解除LV1
武器1 プレリュード 物理攻撃力+60 スチール成功率20%アップ
武器2 クインテット 物理攻撃力+80 攻撃回数+1
頭防具 革の帽子 魔法防御力+3
体防具 革の胸鎧 物理防御力+5
足防具 革の靴 速度+1
装飾品 ゴブリンリング 物理防御力+1 幸運+1
SP 0ポイント
所持金 8180G
でも現在のこしあんは、物理攻撃力【147】。序盤では驚異の数値で、しかも怒涛の四回攻撃。一度の攻撃で一回しかダメージを与えられないファイターやメイジを軽く凌ぐ。道中で出会ったゴブリンやレッサーオークを、『悪・即・殺』とばかりにワンキルしながら進んで行った。
無警戒で目的の橋に近づくと、画面がズームされて戦闘開始の合図を告げられた。リザードマンは二足歩行の青いトカゲで、緑色の胸鎧と鉄の槍を装備している。正面を向いているのでバックアタックはできないけど、攻撃を二度するだけの簡単なお仕事。サクッと倒して先に進もう。
キシャアァァァ! と叫ぶリザードマンに素早く近づいて一閃。【117】【117】【117】【117】と桁違いのダメージがポップし、敵の頭上にあるHPバーが半分以上消し飛んだ。たった一回の攻撃で【468】ものダメージを与えられたことに感動すら覚える。
《スチール失敗》
《スチール失敗》
《スチール成功》
《スチール失敗 敵から盗めるアイテムはもうありません》
スチールも運良く一発で成功してくれた。
さて最後の仕上げだ! 次の攻撃で――
《YOU LOSE》
「えっ?」
リザードマンが槍を振り回す動作が見えたのと、【52】の被ダメージがポップアップしたのが同時だった。
画面が徐々に暗くなり、やがてゆっくりと光が戻る。
薄い青色のエフェクトをまとい、はじまりの街の入口付近に佇むこしあん。
どうやら僕は、初めての死に戻りを経験したようだ。
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