第三音⑦
「私たちが傍にいたら、アイツらもむやみに琴音へ手出しできないでしょ?」
そう言ってニカッと笑ったのは鈴だった。琴音はそんな鈴やカノンに感謝してもしきれない。学校へ行くことの億劫さもなくなった琴音は、しかしこのまま鈴たちに甘えているのも良くないと思っていたのだった。
(何か、私にできることはないかな……)
琴音は笑顔の裏でそう思う。
(私にできることは、衣装作りと曲作りくらいかぁ……。そうだ!)
琴音は何か思い至ると、
「ねぇ、鈴ちゃん、カノンちゃん」
「んー?」
「どうした? 琴音」
琴音からの呼びかけに二人は歩いていた足を止めた。
「ガールズバンドの大会、出よう!」
「へっ?」
「どうしたの? 藪から棒に」
琴音からの急な申し出に鈴とカノンは目を丸くする。そんな二人へ琴音は続けた。
「せっかくの高校生活だし。それに来年は受験で忙しくなると思うの。だから今年がチャンスかなって」
勢いよく言う琴音に鈴とカノンは顔を見合わせた。
「もちろん衣装は新しく作るよ! どうかな?」
更に言い募る琴音に、最初に言葉を返したのは鈴だった。
「いいんじゃないかな? 出るだけならさ」
その言葉を受けたカノンも口を開く。
「そうだね。力試しって感じで、ちょっと面白そうかも」
二人の同意を得られた琴音の表情が、ぱぁっと明るくなる。
「じゃあ……!」
「うん、ガールズバンドの大会、出てみよう!」
鈴のこの言葉で、『ルナティック・ガールズ』の三人はこの夏に開催されるガールズバンドの大会への出場を決めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます