第三音⑦

「私たちが傍にいたら、アイツらもむやみに琴音へ手出しできないでしょ?」


 そう言ってニカッと笑ったのは鈴だった。琴音はそんな鈴やカノンに感謝してもしきれない。学校へ行くことの億劫さもなくなった琴音は、しかしこのまま鈴たちに甘えているのも良くないと思っていたのだった。


(何か、私にできることはないかな……)


 琴音は笑顔の裏でそう思う。


(私にできることは、衣装作りと曲作りくらいかぁ……。そうだ!)


 琴音は何か思い至ると、


「ねぇ、鈴ちゃん、カノンちゃん」

「んー?」

「どうした? 琴音」


 琴音からの呼びかけに二人は歩いていた足を止めた。


「ガールズバンドの大会、出よう!」

「へっ?」

「どうしたの? 藪から棒に」


 琴音からの急な申し出に鈴とカノンは目を丸くする。そんな二人へ琴音は続けた。


「せっかくの高校生活だし。それに来年は受験で忙しくなると思うの。だから今年がチャンスかなって」


 勢いよく言う琴音に鈴とカノンは顔を見合わせた。


「もちろん衣装は新しく作るよ! どうかな?」


 更に言い募る琴音に、最初に言葉を返したのは鈴だった。


「いいんじゃないかな? 出るだけならさ」


 その言葉を受けたカノンも口を開く。


「そうだね。力試しって感じで、ちょっと面白そうかも」


 二人の同意を得られた琴音の表情が、ぱぁっと明るくなる。


「じゃあ……!」

「うん、ガールズバンドの大会、出てみよう!」


 鈴のこの言葉で、『ルナティック・ガールズ』の三人はこの夏に開催されるガールズバンドの大会への出場を決めたのだった。

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