第二音④
「どうして鈴ちゃんが謝るの?」
「それは……」
鈴が言葉を続けようとしたとき、カノンも鈴の傍にやってきて言う。
「鈴、ごめんなさいよりも、ありがとうの方が嬉しいよ?」
「カノン……」
「そうだよ、鈴ちゃん。それに、鈴ちゃんは今回被害者なんだよ? 悪いのは全部、鈴ちゃんを無理矢理あんなところに連れて行った男の方!」
「琴音……。うん、二人とも、ありがとう。和真くんも、平野くんも、ありがとう」
顔を上げた鈴は和真と大和へ深々と頭を下げた。大和は照れくさそうに自分の鼻の頭をかきながら、
「俺より、コイツの方が凄かったよな!」
そう言って隣に立っている和真を肘で小突いた。和真は何のことだ? と視線だけで問う。その視線を受けて大和は、
「だって、俺らの制止を無視して、いちばん最初に飛び出したじゃん?」
そうなのだ。和真は鈴が嫌がって一瞬後ずさりをしたタイミングを見逃さず、飛び出したのだった。
「俺、ビックリしちゃったよー。もしかして、鈴ちゃんに気があるとか?」
「あー……」
ニヤニヤと笑いながら肘をグリグリと押しつけてくる大和の言葉に、和真は一瞬だけ宙を見やったが、すぐに鈴の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「俺は好きだよ」
何の飾り気もない、真っ直ぐな和真の言葉に絶句したのは大和だけではなかった。中でも鈴は真っ直ぐに投げられている切れ長の和真の瞳から目が離せない。
「ちょっと、どうなってるのよ? 琴音」
「わ、わかんないよ……。でも和真くん、冗談とか言うタイプじゃないし……」
鈴の傍でコソコソと話すカノンと琴音の言葉が聞こえた鈴の顔がみるみる赤くなっていく。それでも和真はそんな鈴から視線を外そうとはしなかったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます