瑠璃色の花束と

くうき

瑠璃色の花束と

 まだ何も見えなかった景色に色がついた瞬間、人は何を考えるのだろう?そんな高校3年生の秋の日に僕、野嶋真正のじましんしょうは、紅葉が色づき始めた公園を歩いていた。


「今日は少し肌寒いな。」


ただ、暖かみのない言葉を吐く僕の心、まだ何色にも染まっていない心は今日、急に止まっていた歯車を回すことになる。




 誰も見たことのないものを探すのに私たちは何を必要とするのか?私、望月紅羽もちづきくれはは、今、いや十年前から、ある男の子に恋をしていた。そして現在私は、よくわからない男の人たちに囲まれていました。


「えっと、なんか用ですか?」


「いやいやそれはないなーおねーちゃん、だいたいわかるよね〜、こうやって複数の男が囲んでいるってことは・・・」


と、言って私の手を強引に握ろうとした瞬間だった。


・・・パシンッ!


男の人の手が誰かによってはたかれるそれが私の心の中に新しく、そして懐かしい風が吹いていた。




 『大きくなったら〜〜ちゃんにるりいろのはなたばと、ゆびわをあげるっ!だからしょうらいぼくとけっこんしてくださいっ!』


『うんっ!ぜったいにやくそくだよっ!しょうちゃん!』


昔の約束。今となってはもうこのことくらいしか覚えていない。でも一つもやっとするのであれば、彼女の名前はなんと言うのか、そして、今いったい何をしているんだろう?なんて、柄でもないことを考えながら並木道を通る、その時だった。


「なんだ?あれは・・・っ!?」


僕の目の前には女の子が1人と柄の悪い男の人が複数で囲う描写が目に映ると、その男たちは急ぐ様に彼女の手を握ろうとしたとき、僕の体は、勝手に動き男たちのところへ走っていた。そして、


パシンッ!


無意識に放った僕の手は相手の男の手を払う様に体が動く。そして、


「その女の子から離れろっ!嫌がってるだろっ・・!」


僕はいつもは出さない大声を絞り出していた。何故か一目見た瞬間に“懐かしい”と、感じた少女のために、僕は怒っていた。




 「おいおいにーちゃんここで邪魔すんなはちいっと、間違ってないかなぁー!」


そんな、ナンパしている男たちが紅羽から真翔に一旦標的を変えると真翔が逃げない様に囲む。一方の、紅羽は解放されてほっとしたのと同時に一つの疑問そして心配が鬩ぎ合っていた。


《あれって・・・いやまさか・・・でもあの声ってやっぱりしょうちゃん?》


紅羽がこう思った理由として、彼女が好きな人、それは(しょうちゃん)こと、野嶋真翔のことであるそれに気付けたのは、彼の性格が全く幼少期とほとんど変わっていない、そして、これが確信に変わったのは彼の声質、彼の声は声変わりをしてもあまり変わることがなかった、そして、顔が童顔だったことそれのおかげで紅羽は好きな人と再会できた。まるで全てがうまくいく様に仕向けられたシナリオのように歯車がかみあった。




 全てが動く。それは変化を始める時以外他に無いだろう、僕にとってはそれが今なのかもしれない、何故かそう思えた。まぁ今あるこの状況を打破するのが第一なんだけど。


「おいおいにーちゃんここで邪魔すんのはちょいと間違ったんじゃねーのかなーっ!」


「・・・」


「おいっ!調子に乗ってんじゃねえよっ!」


と、ゴロツキの悪い男達は一斉に僕に向かって拳を飛ばすが、僕はヒョイっとしゃがみ込むと3人はそれぞれの拳を受けて卒倒してしまった。なんだ、案外見掛け倒しだったのか・・・。とか、思いながら、僕はさっき連れて行かれそうになった彼女のもとに駆けつけた。


 そして、彼女のもとに行き、僕は「大丈夫?」と、声をかけると、彼女は、


「だ、だいじょうぶたよっ!しょうちゃん!」


「・・・へっ?」


僕は驚いていた。


『何故彼女が僕の渾名を知ってるの?』


とか、考えていると、彼女は隣で、


「あわわわわわっ!どうしようっ!なんで確証もないのに“しょうちゃん”なんて呼んでんのっ!やらかしたーーーーっ!」


と、身悶えしていた。


「あの〜、だ、大丈夫ですか?」


「はっ、はい大丈夫でしゅ!「「・・・」」」


噛んだ。可愛い。ただそれだけ。僕たちは公園ということを忘れて身悶えしていた。


 そして、少し落ち着いて、僕は、


「ねぇ、ここにいるのも、このゴロツキの悪い男たちが起きるのがめんどくさいと思うし、どっか喫茶店でも行かない?」と、提案すると、彼女は、


「うん、そうしようっ!」


と、なんか嬉しそうに返された。そうして、僕らは喫茶店へと向かうのだった。




 「「・・・・・」」


気まずい。その一言が具現化された様に重い空気と、頼んであったケーキとコーヒーの混ざった空気が覆う。


「「あっ、あのっ!・・・」」


言葉が被る。そして「お先に・・・どうぞ・・」と、気まずそうに真翔が言うと、紅羽は「いえいえっ!こちらこそ、先にっ!」と、譲り合いが始まり、それだけで、30分も経過していた。そして、痺れを切らしたのか紅羽は真翔に対してすぐに爆弾を落としてきた。


「あの〜、もしかしてだと思うんですけど、あなたは野嶋真翔さんであっていますか?」


「っ!なんで、僕の名前を知ってるんですか!?」


「やっぱり!やっぱりしょうちゃんだっ!」


と、真翔の疑問を無視して、紅羽はテーブルに手を勢いよくつけると、立ち上がり、確信した事実を大きい声で言う。店にいると言うことを忘れて。そして、真翔は、ついにこの話と、過去の話に点と点が結びついたことに気づいた。


(やっぱり、この子があれだ、小さい時に仲が良かった唯一の女の子!)


これで全ての歯車が揃った。




 僕は彼女、いや“紅羽”のことを思い出した。紅羽が引っ越すある秋の日、いや今日の日付に僕は彼女に愛を告げた。たとえそれが小さい頃だったとしても、僕は彼女のことを忘れることはなかった!なのに、なんで忘れてたんだっ!僕は、なんで・・・と、考えていると、頬に一筋、生暖かい何かが流れていた。そして、紅羽から、


「しょうちゃん、なんで泣いてるの?」


この時、僕は泣いてることに気づいた。そして、紅羽の顔を見たとき、僕の心の中は何かで締め付けられた。そして、僕は思い切り、彼女に、聞いた。


「あなたは、望月紅羽さんであっていますか?」


と、聴くと、彼女はコクリと頷いた。そして、僕は、


「久しぶり、くれちゃん、ごめんね、少し忘れていた。」


と、昔の呼び方で紅羽・・・くれちゃんのことを呼ぶと、彼女は泣きながら、


「………ばか。」


その一言が呟かれたとき、僕はなんて謝ったかそれは覚えていない。でも一つだけ言えるのは、くれちゃんの頭を撫でながら、


「少し、あの時の高台に行かない?」


そう言うと彼女は元気に「うんっ!」と言ってそそくさと喫茶店から出て行ってしまった。僕はあえてそれを止めなかった。そして、僕は花屋へ向かった。あの過去、そしてこれからやることを実行するために。




 「待たせたね。くれちゃん。」


「遅いよっ!しょうちゃんっ!」


と、彼女は少しむくれて怒鳴っていたがそんなのはこれからやることに比べたらどーでもよかった。そして僕はいきなり話を始める。


「くれちゃん、ここに来るのは多分10年前だね。」


「・・・うんっ!それで」


「ここで、僕がくれちゃんに言った言葉覚えてる?」


「うん、覚えてるよ。」


・・・よかったぁぁぁぉぁ!!!覚えていてくれたんだっ!でも、さすがに10年前のことを覚えているって・・・ちょっと、まぁいいや!


「あの時のこと、僕は今でも覚えてる?て聞かれても多分だけど完全には覚えていないんだ。そしてくれちゃんのことも忘れてたんだ。」


と、言うと、くれちゃんは少し涙目になっていた。


「そう、なの?」


そう聞いてきたくれちゃんに僕はこの一言をまた伝えたいと改めて感じた。だからっ!


「くれちゃん、いや、紅羽。好きだ。離れた時から僕は君のことが好きだった。だから僕と付き合ってくれませんか?」


と、その言葉が自然に出てきた。そして、紅羽は泣いていた。


「どうしたの紅羽?」


と、聞くと、


「だって、いきなりの再会から告白までされたんだよっ!そんなの嬉しくて涙がでちゃうよっ!」


そして、僕は「返事は?」と、聞くと紅羽は、


「はい、喜んで。」


この返事を聞いた後、僕は彼女のことを抱きしめた。








   〜そして現在〜




 「・・・これが父さんと母さんの馴れ初めだぞ。」


「へぇーすごいね、まさに運命的な再会と告白、そして結婚まで行ったと。」


「そうだねー。翔羽、私たちはそんな再会だったからこそこんなに仲がいいのかもねー」


「だなー紅羽。」


「そうだねー真翔。」


「ちょいそこ、無意識にイチャつかないっ!」


「「あぁ、ごめんごめん。」」


と、真翔と紅羽の間の息子、翔羽かずはは父と母の、イチャついてるところを苦笑いしながらしないように注意すると2人はあやまった。そして翔羽は、


「でさーここにある瑠璃色の造花の花束は、なんであるの?」


と、聞くと、真翔は、


「これか?これはなー・・・」


と、翔羽はのんびりとした夫婦の馴れ初めを笑いながら聞いて、最後に、


「俺も、父さんと母さんの様な恋をしてみたいな。」


そう、両親の前で呟くと、2人は、


「「きっとできるよ!」」


そう言って、彼のことを応援した。


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