いちごの家っ!

時々思う事がある。なんで自分はこんなに女子力が高いんだろう、と。


生まれてから今日まで、僕はあまり男の子らしい事はあまりしてこなかったと思う。サッカーで遊ぶよりも、お#飯事__ままごと__#の方が好きだったし、変身ベルトよりも、魔法のステッキの方が好きだった。


今の持ち物だってそうだ。ヘアピンにマニキュア……男が持つような物ではない。


友達も女子ばかりで、男の友達は、片手の指で数える程しかいない。いい事なのか、悪い事なのか……僕には分からない。



「カキーナっ! お昼休憩なんだから、お弁当食べよ!」


「そうですわ。烏龍茶を飲む為に労働を繰り返してるんですもの……カキナ? 上の空でどうしたんですの?」


「え、あ、いや、ちょっと考え事してただけ。僕もお弁当出さなきゃ……いちご、今日はコンビニパンなんだ……」



でも、こうして仲良く過ごせるなら、今のままでもいいのかもしれない。結論はいつもこれに辿り着く。だってこれが、今の僕を貫かせるからだ。





「びわ、今日は日直で、私達と一緒に帰れなくて残念だね……」


「そうだね……明日になれば、また会えるよ」



帰り道、今日は久しぶりに、いちごと二人で歩く。犬の散歩をしている人、ランニングをしている人が通り過ぎていく。



「そうだカキナ、この後私の家で遊ぼ! 久しぶりに入れてあげる!」


「い、いいの? 高校生にもなって彼氏でもないのに家に入っちゃって?」


「何言ってんの、私達幼なじみでしょ? カキナが遠慮する必要性ZEROじゃん。来ないとこの前のナース……」


「わかったわかった行くから!! ナース服の件は黙ってて!!」


「わーい! じゃあ早速ジェット機付きローラースケートで、レッツゴー!」


「あ、いちご待ってよ! ローラースケートは反則だって!」



凄く早い速度で走る、というか飛ぶいちごを、僕は全力で追い掛けた。他の通行人に変な目で見られながら。





いちごの部屋は、いい匂いがして、可愛い物で溢れかえっている。



「誘ったのはいいけど、何して遊ぶ? うちゲーム機とかもないんだけどさ」



ヘアアイロンや加湿器、本物の女の子はこういうのを持ってるんだ……。僕も持ってるけど。



「……カキナ、何か今日変じゃない? いつものツッコミはどうしたの?」


「え……僕、変だった?」


「変だよー! いつもの男の娘パワーはどうしたの? 」



……やっぱり、僕はもう他の人から男の娘としてしか見てくれないんだ。



「……もしかして、その男の娘の件……気にしてた?」


「……うん。僕、男の娘だからさ、みんなから本当の男としては見てくれないからさ……いや、良いんだけどさ! 僕が男の娘でいない限り、この小説は成り立たないって言うかさ、僕はこうあるべきだと思ってるんだけどさ……」


「さ、を句読点の前に五回使う程、気にしてたんだ……でも、私はカキナは、見かけの男の娘だって思ってるよ」



いちごはベッドから立ち上がり、本棚を漁り出した。



「ど、どういう事?」


「ちょっと待って……あ、あったあった! これ、幼稚園の頃の写真!」



カーペットに広げたのは、僕達の幼稚園の頃のアルバム。身長も今と比べて大分小さい。



「わぁ、懐かしい! あ、これいちごと僕じゃない?」



見つけたのは、砂場で仲良く遊んでいる、いちごと僕と、他の園児が写っている写真だ。皿なども用意している辺り、お飯事をやっているのだろうか。



「うん、そうだよ。カキナはいつもみんなでお飯事をする時、必ずお父さん役になってくれたよね」


「そ、そうだっけ……? もう十何年前の事だから、忘れちゃったよ」


「本当に? お泊まり会でカレー作った時だって、率先して火をつける係をやってくれたし、お遊戯会で白雪姫の劇の役決めだって、一番乗りで王子様の役をやりたいって言ってたじゃん」



──あれ、なんか思い出してきたような。確かカレー作りの時は、包丁使うの怖いから火をつける係やっただけで、役決めの時はどうせ女の子役に選ばれると思ったから早めに王子様役に立候補しただけで……。



「これでも、自分は男の娘だって言いきれる?」


「言いきれるよ!!」


「……ほら、少しは気が楽になったでしょ? カキナは男の娘のフリをしてるだけで、本当は立派な男の子なんだよ」



──あああ!! この前こんな展開にしたくないって思ったばかりなのに、自分からこんな話題を振ってしまった!! 何やってんだよ僕!!



「──あれ、何このブォンブオンした音。外からだ……びわちゃん!?」


「カキナ!! 何してるんですの!! 二人きりで(自主規制)したり(自主規制)したり、果てさては(自主規制)してたんですの!?」



ああ、チェーンソー振り回してるびわが来て助かった……明らかに雰囲気が違ったもん今回……てか、大声で自主規制用語を近所の人の配慮も気にせず言うなよ……ギャグでもそれは良くない……。


……でも、本当に気が楽になったかも。何も解決はしてないけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る