決闘、イチジク団長っ!

「……っしゃあ!! 行くぜぇっ!!」



先手を出したのは、缶詰め隊の、オデン隊長。だけど、ただただ突進するだけの、あまりにも無謀な攻撃だった。



「フン、まともな教育を受けてない馬鹿な不良め。この私が叩き込んでくれるわ!!」



イチジク団長は、袖から鉄砲を取り出し、この場にいる全員を驚かせた。


その驚異に、オデン隊長も思わず足を止めてしまった。



「ハハハ、天才になる前に死ぬなんて、なんて不幸な男なのだ」


「て、鉄砲だなんて卑怯だよ!! てかこんなにおかしな学校だからって、流石に鉄砲は有り得ないよ!」


「うるさいぞ女よ。いや、男の娘だったかな? まあどちらだっていい。お前から先に始末してやろう」



僕が余計な事を言ったばかりに、ターゲットになってしまった。主人公だから仕方ないじゃん! こんなセリフ主人公くらいしか言えないじゃん!



「さあ、覚悟は出来たかな? まあ出来てなくても、私は待たぬ……死ねぇ!!」


「カキナァっっ!!」



引き金が引かれる寸前、隊長が僕を庇い、身代わりになってしまった。


そして、爆音と共に、隊長は倒れ、腹は褐色で染まった。



「た、隊長!! 何やってるんですか隊長!!」


「……人1人救えるなら、これっぽっちも悔いはない。カキナが無事なら……これで良かったんだ……」


「た、隊長ぉぉぉ!!」



僕が……僕があんな事を言わなければ……隊長は助かったのに……。



「……オデン隊長、カキナ、よく見てみろよ。それ、血じゃねぇぜ……」


「……え? 確かに、血にしては変な匂いですけど……」


「やっぱり、お前達はノリがいいなぁ。私は弾など打っていない。代わりに、イチジク汁とイチゴ汁を混ぜ合わせて作った、「イチヂコ弾」を打ったんだ。そして、あの爆音はただのSEだぞ。アーッハッハッハッ!!」



──冷静に考えてみればそうか。まず本物を持ってたら銃刀法違反だし、仮に海外から輸入したとしても検査で引っかかるし、色々と無理があったか……。



「……本当にそれで面白いと思っているのか、ああん?」


「あ、起きた」


「フフフ、イチジク団也の挨拶さ。そう言えばまだ名を挙げてなかったな。私は#無花果__いちじく__#ジン。いずれこの流れ星高校の#王__・__#になる者だ」


「王……だと?」


「そうだ。今の流れ星高校は、役に立たない授業ばかり、いや、重労働を課せられている。そこで、私らイチジク団がデモを起こし、この学校の生徒達には正しい教育を受けさせるのだ」



──あれ? 意外とまともな理由。僕らの方が悪者っぽいじゃん?



「そうだな、そこの味噌を持っている男。一つ歴史の問題を出そう。聖徳太子が定めた、能力に応じて役人を取り立てる制度はなんて言う?」


「んぁあ? 答えられるに決まってんだろ? #能力役人選別レーティングマッチ__・__#だ!!」



──副隊長アホだ。レーティングマッチなんてこの時代にある訳ないでしょ。



「ハハハ、やはり馬鹿だなぁ! 次はそこの蟹持った女に英語の問題を出そう。その手に持っている蟹、英語ではなんて言う?」


「団長さんよぉ、魚屋の娘のあたいを舐めちゃ困るぜ? #キングラー__・__#だろ?」



──何で進化させちゃうかなぁ……かわらずのいし持たせなかったのかなぁ?



「ぐあっはっはっ!! この学校には馬鹿ばかり!! やはりこいつら馬鹿どもには教育を受けさせなければ未来はないぞ!!」




「……うるせぇな。教育を受けるのはあんたの方だぜ、イチジク」



動いたのは、我が隊長だった。服のポケットにてをいれて、威圧感を出しながらイチジク団長に近づいた。



「この学校で必要なのは、面白い生徒だ。お前のような王とかほざいている野郎には、この学校に通う資格などねぇぜ」


「何が面白い生徒だ? 正しい教育を受けるのが、本来の高校の姿なのではないのでは?」


「……ったく、わかんねぇ奴には、痛い思いをさせてでも教えてやるぜ……」


「あ、あれはオデン隊長の缶おでん!!」



モブの一人が言ったように、ポケットから秋葉原とかで売っている缶おでんを取り出した。



「隊長までも馬鹿とはな。たかがおでんで何が出来ると言うのだ?」


「……工夫次第じゃあ、食べものだって#強力な武器になる__・__#んだぜ? さあ、食いな」



付属していた串を玉子に刺し、イチジク団長の口へと近づけた。



「ああ、それでは頂こう……うあっつ!! アツアツアツアツアツアツアツゥゥゥゥゥ!!」


「おい、吐き出さずにちゃんと食えよ。おでんと俺は心が繋がっている。俺とおでんがリンクして、いつでもおでんの温度を変えることが出来るんだよ。あれ? まともな教育を受けなかったから分かんなかったのか?」



おでんと心が繋がっている……そんなの普通の教育を受けてても聞かないと思うけど……。でも強い。



「ほらほら、次は餅巾着だ。おら、食えよ」


「まだ玉子入ってるから! これ以上口に入れたら食道が火傷しちゃうからアアアアアアアアアアアアア!!」



そして、周りで見ていた僕達は、約10分ほど、ダチ○ウ倶楽部のようなネタを見ていました。





「はぁ……はぁ……お、覚えてろ! いつか必ず復讐してやるからなぁ!!」



イチジク団長は、顔を真っ赤っかにして帰っていった。色んな意味で。



「まともな教育が始まったら、俺らの居場所も無くなっちまうしな。真面目な奴はぶっ潰すだけだ」



そうか。僕らがこうして楽しく過ごせてるのは、缶詰め隊のお陰なんだ。缶詰め隊が正義を倒してるから、今があるんだ。……これでいいのか?



「……一先ず、任務完了だな。缶詰め隊隊員一同、カキナ、お疲れ様」


「いやぁ、カキナの迫真の悲鳴、最高にキマッてたなおい!」


「ああ、あたいでもあんな声出せないよ」



……素なんだけどなぁ、あの悲鳴。



「カキナ、よかったらウチに入らねぇか? 今なら男の娘枠が空いているからよ」


「え、えーっと……」



正直、ここに入っても悪くはない。人柄は優しいし、僕を受け入れてくれるし……。



「あれ、カキナ何やってんの……って、ナース服!? ギャハハハハハ!! 私でもコスプレさせた事なかったのに!!」



部活から帰ってきたいちごが、偶然通りかかってしまい、僕のこ恥ずかしい姿を見られてしまった。



「……申し訳ありませんが、お断りさせてもらいます。僕は不良柄じゃないですし、闇の力をあまり知られたくないですし……」


「そうか。お前がその気持ちなら、無理に入隊させる気はない。だが、今後臨時の助っ人として来てもらう、ってのはどうだ?」


「……はい! それなら僕も大丈夫です! 今後ともよろしくお願いします!!」



こうして、僕は缶詰め隊、臨時担当になったのでした。

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