ロリ校長っ!
今となっては珍しい行事なってしまった「朝礼」。昔の生徒達は、月曜日が嫌いになる理由の一つが、この朝礼だろう。
だがしかぁし!! この学校にはまだ朝礼が存在するのだ!! しかも、生徒達の九割は大喜び!!
「みんなー、おはよーございまぁーす!! きょうからもいっしゅうかん、みんなで頑張っていこうねー!!」
そう、ウチの校長は、ロリっ子__・__#なのだからだ。
毎週月曜日は朝礼なんかじゃなくて、軽いトークショーみたいな感じだ。
「ああ、今日も可愛いぜ校長!! なあ、カキナもそう思うだろ?」
うちの校長は、マスカット農園のますかくんでさえ、ここまで興奮出来るのだ。
「……まあ、一週間頑張るぞ、って気にはなれるかもね」
「私は一切思いませんわ。よく考えてみなさい。この校長のせいで、新聞のチラシ入れしたり、よくわかんない機会の基盤作らされたり、ド○キで売られているコスプレグッズを作らされたりするんですのよ? 元凶は校長にあり、ですわ」
……うん。びわの言う通りだよ。
あの校長じゃなければ、こんなハードな高校生活を送る事にならなかっただろうしね……。
「さあみんな、いつもの行っちゃうよー!えい、えい!」
「「「おーーーっ!!」」」
──でも、あの憎めない性格が、みんなの力になるんだろうね。
※
昼休み、五時間目の授業(仮)の教材を取りに行く為に、いちごと一緒に教務室に訪れた。
「失礼します。3組のカキナで……!?」
僕は一瞬、自分の目がおかしくなったのかと錯覚した。なんと校長先生が、担任の高崎先生の膝で寝ていたからである。
「ほら、生徒さんも来たんですから、まずいですよ!」
「いいんだもーん。モモミ、高崎せんせーのひざ、好きだから!」
「……まいったなぁ」
こっちも、どういう目で見ればいいのか困る。なんでこんな現場を見なくちゃいけないんだ……。
「モモミ校長先生、私の膝枕じゃダメですか? リアルASMRやってあげますよ?」
「えーえすえむあーる? よくわかんないけど面白そう! いちごちゃんの膝でねるー!」
いちごは近くにあったパイプ椅子を広げ、腰を落とし、優しくモモミ校長先生を膝に乗せた。
「はぁぁ……みみが天国だよ……」
「耳かきもやりましょうか。リアルASMRで」
もうそれただの耳かきじゃん。どんだけASMRにこだわるんだ。
「いやぁ、助かったよカキナ、いちご。教師としてこれはまずいと思ってな……」
「ハハハ……それにしても、どうしてあんな事になったんですか?」
「それがだな……」
高崎先生が訳を話そうとしたその時、教務室の扉が開いた。そして入ってきたのは、この学校の教頭先生だった。
片眼鏡に白い手袋。そして極めつけの執事服。オタ系女子の理想が全て詰まっているような見た目である。
「あっ、モモミ校長先生!! やっぱりこんな所でサボって……ほら、お仕事の続きですよ!!」
「いやだぁ!! まだ休憩するのぉ!!」
「全く、あまりワガママだと、今日のおやつは抜きにしますよ!」
「えっ……それはやだ!!」
おやつに釣られるほど、うちの校長は純粋なのだ。……何故この子が校長やってるんだろう。
モモミ校長先生はいちごの膝から離れ、教頭先生の傍に駆け寄った。
「モモミ、ちゃんとおしごとするね! それじゃあカキナくん、いちごちゃん、高崎先生、じゃあねー!」
無邪気に手を振りながら帰っていったモモミ校長。僕達も自然と笑顔になっていた。にやけ顔に近かったけど。
「はぁ……モモミ校長先生、めっちゃかわいいぃ……顔がぷにぷにしてて気持ちいいいんだぁ……」
「よ、よかったね、いちご。最近出番少なかったからね……」
※
あっという間に放課後。
今日はいちごは週一の部活動。びわは家の用事。メロくんは知らない。みんな忙しいから、一人で帰ることにした。
校舎を出ると、すぐに花壇がある。そこに花にホースで水やりをしている執事……教頭先生がいた。
「おや、カキナ様。昼休みはありがとうございました」
「いえいえ、校長先生が喜んでくれたなら、僕も嬉しいですよ」
「そう仰って頂いて、私は大変嬉しいです。……カキナ様、この後、少し時間を頂けますか?」
「い、いいですけど……何を?」
「それは……後から追いますので、先に校長室に向かってください」
僕が呼び出し……何の件についてなんだろう? やっぱり、普段僕が真面目過ぎるのが原因なのかな? もっとボケた方がいいのかな……?
※
「失礼します……」
校長室に入ると、椅子に座りながら足をバタバタさせているモモミ校長先生の菅田が目に入った。
「あ、カキナちゃん! まってたよー! そこのいすに座ってね!」
校長先生が指さしたのは、ダンボールで出来た椅子だった。予算足りないのかな?
「さて、早速質問するけど、 ……カキナちゃんは、「イチジク団」っていう組織、知ってる?」
「イチジク団って、あのチンピラの……?」
イチジク団。この前トイレで僕が闇の力(いも天ビーム)で倒したチンピラ軍団だ。チャラチャラしていて、あまりいい印象は持てない。
「そうなの。じつは今、彼らのせいで大変な事になってるの。女の子からの謎の攻撃でムシャクシャして、……シャーペン工場、広報の印刷所の破壊……このままでは、このがっこうの設備がどんどんこわされちゃう!」
「それは……僕が悪いと……?」
「ううん。闇の力を使ったことはなにもわるくないよ。ただ、お手伝いをしてほしいんだ」
お手伝い……か。あ、校長には闇の力の存在を教えているから、そこ気にしないで。
「そのお手伝いってのは……カキナちゃんには囮になってもらう、ってこと」
「お、おおお囮!? なんで僕が!?」
「はやい内に仕留めておかないと、この流れ星高校は崩壊ちゃうもん。だから、こっちも#ある物__・__#を用意してるんだ。……あっ! しつじー!!」
もう執事って事になっている教頭先生が、遅れて校長室に入ってきた。
「お待たせしました、カキナ様。この様子ですと、いい所までお話は進んでいるようですね。……さ、入ってください、「缶詰め隊」の皆さん」
……か、缶詰め隊?
そう疑問を出してる暇もなく、どんどんとヤンキー気取りの生徒達が入ってきた。リーゼントの人もいるし……時代を感じる。
「失礼、モモミ校長。ご任務を果たす為に参りました、缶詰め隊の隊長、#秋葉__あきば__#オデン」
「俺、副隊長の、#青森__あおもり__#サバキ」
「あたい、企画責任者の#札幌__さっぽろ__#タラバ」
「「「そして、手助けをするモブ軍団!!!」」」
……状況が理解できない。なぜ彼らを呼んだんだ……?
「来てくれたね、缶詰め隊! この子が、今回の作戦に協力してくれるカキナちゃんだよ!」
隊長のオデンさんが、こっちをギロ、っと鋭い目で見てきた。
「……あん? お前、随分と女々しいじゃねぇか?」
「は、はい……いや、意識してないし! みんなが勝手にそう思ってるだけでしょ!?」
「……ハハハ、お前面白いな。気に入ったぜ」
──よかった。何とか目を付けられずに済んだ……。
「カキナ様。缶詰め隊の皆様は見た目はヤンキーですが、心は正義感溢れるいい人なんです。怖がらないであげてください」
「あたい達が優しい、ねぇ……んな事言ってる場合じゃないだろう! 早速今回の作戦を説明すっから、耳くそ全部取って聞きな!」
──果たしてこの作戦、どんなものなのか。
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