もっと強い力っ!

「今まで通り、闇の力を封じ込めていたいなら、いちごさんや、びわさんと今後も普通に接する事が出来るだろうね。だけど、闇の力をマスターする気なら、今までの日常と少し変わってくるかもしれないよ?」


「……いや、もう既におかしな日常なんだけどさ、何が変わってくるの?」


「例えば、こういう事さ」



メロくんは急に背を向けたかと思うと、突然と悪魔のような漆黒の羽が背中から出てきて、羽をバサッと勇ましい音を立てて広げた。



「どうだい? 羽が生えるなんて、羨ましいと思わないかい? ……てか、どうしてそんな平然と見てられるんだい?」


「いや、羽とか邪魔じゃない? まだジェット機付けたローラースケートの方がマシかも」


「ええ!? そんなおかしな道具の方がいいと言うのかい!?」



あんたのも十分おかしいよ。羽とか非現実的だし。



「……で、他には何があるんですの? まさか、そのダッサァイ羽しか魅力がないんですのぉ?」


「ほ、他にもあるさ! 例えば……オリジナルの漆黒張を作れたり……禍々しい魔石を作り出せたり……」


「つまり、✟Dark energy note✟ 的な名前の黒歴史ノートとか、パーキングエリアで売ってるドラゴンソードキーホルダーみたいなのですの? 作れた所で何も得しないじゃない?」


「つ、作れるもん……そんなのじゃなくてすっごいの作れるもん……」



あーあ。キャラ崩壊してるわ。でもさ、メロくんって、中学生の頃の黒歴史を合わせたような存在にだよね……。僕、こんな風になるんだったら、まだ男の娘の方がいいかも……。



「と、とにかく! カキナくんはどうするつもりだい? 今の心境を聞かせてくれないかい?」


「うん。闇の力なんていらない。極めたくない」



理由なんて簡単だ。最初はただの日常ギャグ小説を目指していたのに、急にシリアス展開をもう入れたくないからだ。


つまり、作者がこれ以上変な方向に脱線しないように、って事だ。



「……そうかい。君がその気なら、ボクは止める気はないよ。だけど、これだけは信じて欲しい。本当に君と友達になりたかったんだ。同じ能力を持っている友達にね」


「……うん。僕も君のおかげで、この力を使える人が他にもいるって事を知ることが出来たよ。これからも、よろしくね」



僕達は手を取り合い、今後良い方向へと向かうよう、固く握手をした。



「……熱い友情展開は終わりましたの? 今日は木こりTV一挙配信があるから、早く帰りたいんですけど?」


「ああ、びわさんもよかったら、ボクと友達になってくれないかい?」


「はんっ、友達ですって? あなたとはそんな馴れ馴れしい関係にはなりたくありませんわ。私としては、お互いの力を高められる敵、いわば#ライバル__・__#の関係でありたいですわね。さ、カキナ、朝が来る前に早く行きますわよ」


「ちょっとびわ、待ってよ!! あ、メロくん、また明日ね!!」


「うん、またね!」



スタスタと先を歩くびわを追いかけ、小屋裏を後にした。


振り向くと、メロくんは少し悲しそうな顔をしていた。







「……全くもう。何が闇の力ですの? あんな大した事ない力、カキナが欲しがる訳が無いですわ。笑わせてくれますわ!」


「欲しがるっていうか、もう持ってるんだけど……」


「あら、そうでしたわね。……でも、私達でちゃんとした物語を作っていかなくちゃいけないですわね。私だって、バトルの為にチェーンソーを持ってる訳じゃないですわよ」



じゃあ何のため? と聞こうとしたが、この前の血付きチェーンソーの事を思い出して、なんか僕の闇の力よりも深い闇が眠ってそうだから、聞くのをやめた。




「カキナも、自分が男の娘という存在に馴染んではいけませんわよ。下手したら、またタイトルを変えなきゃいけなくなるんですから」


「馴染んでないよ! 否定はしてるんだからさ! てか今回メタくない!?」


「あら、メタこそギャグの醍醐味じゃありませんこと? おーっほっほっ!!」



......確かに、最初はいちご目線で話が進む予定だったんだけど、僕、カキナ目線の方が書きやすいから、「いちごちゃんのふわふわした毎日!」#→__から__#「だから僕は男の娘じゃないっ!」に変えたんだよね。


これから異世界転生モノのなったら「お嬢様気取りはチェーンソーを駆使して無双しますわ!」的な展開になりそうだからね。......一瞬イケそうって思っちゃった。



「まあでも、あのコがいれば、当分シリアス展開にはならないでしょうけど」


「うん。#あのコ__・__#がいれば......」




そう。僕達の目の前にいる、コンビニの隅でヤンキー座りしながら、裂きイカをレビューしてる、いちごがいればね。

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