放課後っ!

今日も一日授業を……いや、ほぼ重労働やりきり、無事放課後を迎えることが出来た。


僕は他の高校の普通科に行くつもりだったんだけど、なんか手違いでここに入学する事になったんだ。…… は?



「はぁー疲れた疲れたぁ……カキナ、放課後時間ある?」


「うん。今日は特に何も用事ないよ。何かするの?」


「今日はね、イ○スタアップ用のクレープ食べに行くんだけど、一緒に着いてきてほしいんだ」


「あら、楽しそうなお話ですわね。私もご一緒してよろし?」


「うん! びわちゃんも一緒にいこういこう! さ、早くしないと朝になっちゃう!行こ行こ!」



それ一日過ぎてるじゃん! …… というツッコミをしたかったが、今日のソシャゲイベント周回で脳も疲れ切っていた為、そんな気力はなかった。授業でソシャゲイベント周回とか……垢BANされろ。



「ほらカキナ! 何ボーッとしてるの? 早くしてよ!」


「……はいはい、今行くよ」



学校鞄を片手に持ち、いちご達の後を追った。





歩く事16分、クレープ屋には着く気配もなく、辺は農園ばかり。……嫌な予感しかしない。



「ついたー!」


「ここって……グレープ農園じゃない!?」


「あれ? 私カキナにそう言ったつもりだけど?」



……ならグレープ農園なんてお洒落な言い方じゃなくて、普通にぶどう農園って言えよ!!



「でも、ぶどうもかなり映えるんじゃないですこと? 私ぶどう大好きですわ」


「そ、そうなんだ。まあ変な食べ物よりはいいか……」


「じゃあ私、受付行ってくるねー!」



いちごはそう言って、小屋の受け付けへと走っていった。



「うふふふ。いっぱい食べますわ」


「うん。たくさん食べようね……何このギュインギュインした音……」


「新鮮でジューシーな果実を、残酷に切り刻んでやりますわぁ!!」



びわは血付きのチェーンソーを天に向け、13日の金曜日に出てくる人みたいな顔をしていた。



「ダメだって!! ご近所迷惑だから今すぐスイッチ切って!!」


「あら、私とした事が、野生の本能が出てしまいましたわ……」


「あんた人間でしょうが!!」


「お待たせ! 受け付け終わったよー! さ、早く早く!」



受け付けを終えたいちごが、ローラースケートに乗ってこっちへ向かってきた。やめろ! ウチの学校の悪い部分を社会へ知ら占めるな!



「さ、行きましょう、カキナ」


「う、うん……チェーンソー閉まってね……」





「Welcome to the ぶどう農園!!」


「わーー!!」


「楽しいですわー!!」


「…… いぇーい」



──テンション高いなぁ。テーマパークじゃないんだから……ていうか、この人って、隣のクラスの……。



「俺は#不動__ふどう__#ますか。…… って、自己紹介する必要なかったな」


「ますかくん、ぶどう農園の子供だったんだ! 初めて知ったよ!」


「まあ言ってなかったからな。さ、美味しいマスカットだけが待ってるぞ!!」


「マスカットオンリー!?」



ビニールで出来たドアを開けると、一面中が緑色に染まっていた。



「うわあ! 凄いですわ!」


「一時間食べ放題で2000円!さあ、沢山食べてくれよな! 一時間食べ放題で2000円だからな!」


「そこ強調しないで!」



……さて、どれがいいかな。あ、これがいいかも。……うん、つやつやでとても甘そうだ。


丸い丸いマスカットを、口の中に入れる……ウッ!!!



「ちょ、辛い辛い辛い!! 何でこんな辛いの!?」


「あーカキナくん、当たり引いちゃったんだな。ウチのマスカットは何故か知らないけど、たまーにハバネロの味が入ってるんだよな。土地が悪いのか……?」



絶対土地云々の問題じゃないよ! 絶対品種改良してるってこれ!!



「見てみてー! 写真いっぱい撮れたよー!」



満面の笑みで走ってきたいちごは、僕へスマホの画面を見せてきた。


写真を見た。全然盛れてない。むしろフィルターが拒否してる。しかも後ろに幽霊っぽいの写ってるし。



「どうかな? これアップしたら多分フォロワー1000万人は増えるよね!」


「それは絶対無理…… 一人も増えないでしょ」


「ん? 何か言った?」


「何も…… あれ、びわは?」



さっきからびわの姿がない。まさかチェーンソーで密猟……やばい! 営業破綻する!!



「びわぁ!! 早く出てこぉい!!」


「…… なんですの? 私、ずっと美味しいマスカットを味わっていただけですけど?」



──早とちりだったか……。ま、チェーンソーブンブン振り回されるよりは良かったか……。



「そうですわ! カキナ、マスカットを背景に、一緒に写真とりません?」


「あーびわちゃんずるい! 私も撮るー!」


「あーずるいー! ますかも撮るぅ!」


「ますかくんは普通に喋って!!」



びわの内カメに、みんなが収まるように入った。そして、セルフタイマーを使って写真を撮った。……何となく、ピースしてみた。



「写真見せて見せてー…… あれ?」


「…… 何だこれ」


「カキナだけ、フィルターがすっごいかかってますわ……」



僕も気になって見ると、僕の周りだけキラキラが加工されていて、更に小さくピースした筈なのに、目に当てているめっちゃ痛い人みたいな風に写っていた。



「「「……羨ましい」」」



──何も嬉しくないんですけど……。

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