放課後っ!
今日も一日授業を……いや、ほぼ重労働やりきり、無事放課後を迎えることが出来た。
僕は他の高校の普通科に行くつもりだったんだけど、なんか手違いでここに入学する事になったんだ。…… は?
「はぁー疲れた疲れたぁ……カキナ、放課後時間ある?」
「うん。今日は特に何も用事ないよ。何かするの?」
「今日はね、イ○スタアップ用のクレープ食べに行くんだけど、一緒に着いてきてほしいんだ」
「あら、楽しそうなお話ですわね。私もご一緒してよろし?」
「うん! びわちゃんも一緒にいこういこう! さ、早くしないと朝になっちゃう!行こ行こ!」
それ一日過ぎてるじゃん! …… というツッコミをしたかったが、今日のソシャゲイベント周回で脳も疲れ切っていた為、そんな気力はなかった。授業でソシャゲイベント周回とか……垢BANされろ。
「ほらカキナ! 何ボーッとしてるの? 早くしてよ!」
「……はいはい、今行くよ」
学校鞄を片手に持ち、いちご達の後を追った。
※
歩く事16分、クレープ屋には着く気配もなく、辺は農園ばかり。……嫌な予感しかしない。
「ついたー!」
「ここって……グレープ農園じゃない!?」
「あれ? 私カキナにそう言ったつもりだけど?」
……ならグレープ農園なんてお洒落な言い方じゃなくて、普通にぶどう農園って言えよ!!
「でも、ぶどうもかなり映えるんじゃないですこと? 私ぶどう大好きですわ」
「そ、そうなんだ。まあ変な食べ物よりはいいか……」
「じゃあ私、受付行ってくるねー!」
いちごはそう言って、小屋の受け付けへと走っていった。
「うふふふ。いっぱい食べますわ」
「うん。たくさん食べようね……何このギュインギュインした音……」
「新鮮でジューシーな果実を、残酷に切り刻んでやりますわぁ!!」
びわは血付きのチェーンソーを天に向け、13日の金曜日に出てくる人みたいな顔をしていた。
「ダメだって!! ご近所迷惑だから今すぐスイッチ切って!!」
「あら、私とした事が、野生の本能が出てしまいましたわ……」
「あんた人間でしょうが!!」
「お待たせ! 受け付け終わったよー! さ、早く早く!」
受け付けを終えたいちごが、ローラースケートに乗ってこっちへ向かってきた。やめろ! ウチの学校の悪い部分を社会へ知ら占めるな!
「さ、行きましょう、カキナ」
「う、うん……チェーンソー閉まってね……」
※
「Welcome to the ぶどう農園!!」
「わーー!!」
「楽しいですわー!!」
「…… いぇーい」
──テンション高いなぁ。テーマパークじゃないんだから……ていうか、この人って、隣のクラスの……。
「俺は#不動__ふどう__#ますか。…… って、自己紹介する必要なかったな」
「ますかくん、ぶどう農園の子供だったんだ! 初めて知ったよ!」
「まあ言ってなかったからな。さ、美味しいマスカットだけが待ってるぞ!!」
「マスカットオンリー!?」
ビニールで出来たドアを開けると、一面中が緑色に染まっていた。
「うわあ! 凄いですわ!」
「一時間食べ放題で2000円!さあ、沢山食べてくれよな! 一時間食べ放題で2000円だからな!」
「そこ強調しないで!」
……さて、どれがいいかな。あ、これがいいかも。……うん、つやつやでとても甘そうだ。
丸い丸いマスカットを、口の中に入れる……ウッ!!!
「ちょ、辛い辛い辛い!! 何でこんな辛いの!?」
「あーカキナくん、当たり引いちゃったんだな。ウチのマスカットは何故か知らないけど、たまーにハバネロの味が入ってるんだよな。土地が悪いのか……?」
絶対土地云々の問題じゃないよ! 絶対品種改良してるってこれ!!
「見てみてー! 写真いっぱい撮れたよー!」
満面の笑みで走ってきたいちごは、僕へスマホの画面を見せてきた。
写真を見た。全然盛れてない。むしろフィルターが拒否してる。しかも後ろに幽霊っぽいの写ってるし。
「どうかな? これアップしたら多分フォロワー1000万人は増えるよね!」
「それは絶対無理…… 一人も増えないでしょ」
「ん? 何か言った?」
「何も…… あれ、びわは?」
さっきからびわの姿がない。まさかチェーンソーで密猟……やばい! 営業破綻する!!
「びわぁ!! 早く出てこぉい!!」
「…… なんですの? 私、ずっと美味しいマスカットを味わっていただけですけど?」
──早とちりだったか……。ま、チェーンソーブンブン振り回されるよりは良かったか……。
「そうですわ! カキナ、マスカットを背景に、一緒に写真とりません?」
「あーびわちゃんずるい! 私も撮るー!」
「あーずるいー! ますかも撮るぅ!」
「ますかくんは普通に喋って!!」
びわの内カメに、みんなが収まるように入った。そして、セルフタイマーを使って写真を撮った。……何となく、ピースしてみた。
「写真見せて見せてー…… あれ?」
「…… 何だこれ」
「カキナだけ、フィルターがすっごいかかってますわ……」
僕も気になって見ると、僕の周りだけキラキラが加工されていて、更に小さくピースした筈なのに、目に当てているめっちゃ痛い人みたいな風に写っていた。
「「「……羨ましい」」」
──何も嬉しくないんですけど……。
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