第16話怨む『もの』
3人とも驚いている、塚田さんが驚くのは分かるとして。
「何でお前らまで驚いているんだよ」
「だって全然感じなかったから! あんたヤエと別れた後、何処行ってたのよ」
「白山慈光寺だよ」
「まさか……」
「ちょっと手を出しなさい、ヤエは左手、私は右手」
手を出す、二人に手を掴まれる。何だ力の流れが分かる、ヒエから流れる力がヤエへと流る。それは逆にも言える事だった。
「信じられない、あんた白山の神に?」
「まあね、だからもうお前等、人の身にならなくて良いぞ」
「あっそれは良いわ、暫く楽しむつもりだし」
「お前、神様だよな? もう安心して……」
塚田さんに腕を引っ張られる。
「あのですね……女神様方達は、余程人の世界が気に入った様で。最近、毎日外食してばかりで、しかもマッグをそれはもう……」
あいつら満喫してるじゃないか。良いのか日本の神が、西洋のジャンクフードにハマってるとか。
「良いのよ別に、私達は気にしてないし」
アイスを食べながら言ってるぞ。こいつら
「まあ良いや……調べて来たよ、ヤエから何処まで聞いてる?」
「八神さんが、学習塾へ入るまで起きた事は伺いました」
「じゃあ、そこまでは割愛する。ヒエ、ヤエこれを」
そう言って鷲尾さんから預かったラブレターを投げた。
「ちょっと! あんた何投げてんのよ! これ只の手紙じゃ無いわよ」
「だから二人に、どんな呪いか調べてほしいんだ」
「マッグシェイク奢るからさ」
「もう少し何かあるでしょう!? まあ良いわよ、ヤエ一緒にしましょう」
「ええ」
そして俺は、塚田さんのパソコンにスマホのデータを送る。二人で表示された録画データを見る。
「これは?」
「横野の生徒のリストだよ」
「盗撮したんですか!?」
「何か問題でも? 事件解決のためだよ」
「聞かなかった事にします……」
この中に関係者、もしかすると当事者がいる事になる。こんな子供が……まさか? まだ分からない。ヒエ達の方を向く、終わったようだ。
「これ呪いと言うか、ある種の暗示にかける様に出来てる『呪物』ね」
「じっくり心へと浸透させていくのよ。受け取った人間は、段々と自我を崩壊させられて行ったんでしょうね。手紙の主に心酔し、最終的には人でなくなる程の呪いね」
「良く出来てるわ、この手紙はこれだけじゃないんでしょう?」
」
「まだ何通かあったらしいよ、盗っても分からないぐらいには」
「盗った!? 八神さん! やり過ぎてませんか?」
「大丈夫だよ塚田さん、バレなきゃ……」
「もう良いです……」
塚田さんがヤエに慰められている
「でも可愛くないわね、差出人不明って」
「多分この中の4人の誰かだよ……ヒエもう分かってるよな?」
パソコンの画面をヒエに見せた。表情が曇る、怒りと共に泣き出しそうな顔になっていった。
「塚田さんヤエも一緒に見てくれ、多分彼女が関係している」
画面を見せ、ある少女を拡大表示する。
「何でこの娘が……」
塚田さんが困惑している、そりゃそうだろう。
「明日確認する、方法は簡単だ。俺が明日中学校へと向かう、ヒエ確認なんだが良いか?」
「ええ、何でも聞いて」
「俺に『それ』が向いたのは中学校のどの辺りを回って居る時だった?」
「正門のあたりね、私が上から見ていたから保証するわ」
「ありがとう、じゃあ明日授業中の時間帯に、俺が正門に東側から向かう。」
「ヒエ協力してくれ、今回ヤエは留守番だ。塚田さんは中学校へ根回しをお願いします」
「市の職員が見回りをしていると、そんな感じで良いですか?」
「えぇそんな感じで、あとはヤエと待機で」
「恐らく俺を発見した瞬間、ある種の敵意を向けるだろう。ヒエはそれを感知して欲しい、出来るか?」
今回の件、恐らくヒエと俺のせいだ下手したら、俺だけがターゲットの可能性は高い。
「ヒエ、一応最終確認だ神様状態のお前は、他の人間には見えないんだな?」
「大丈夫よ、あんたと京子には、特に見える様に調節出来るから」
「じゃあ明日は、俺にも誰にも分からないようにまで調節してくれ」
「良いな俺との会話は、繋がりがあるから可能だよな」
「結構無茶言うわね?」
「これは俺とお前の問題だ、安心しろよイザとなったら。何とかするよ」
「ヒエ大丈夫? 顔色が悪いよ今日は一旦社に帰ろう?」
「大丈夫! ヤエお願いがあるの……」
「わかっている、健こっちに来て! 私達の繋がりをより強固にするわよ!」
「どうするんだ?手を出して、そう右手はヒエに私には左手」
二人と手を繋ぐ、そしてヒエとヤエが手を繋ぐ。俺達を頂点にし、て三角が出来あがる中心点には力の奔流が見える
「そこに私達と入って」
ヤエに促されて入る、ドクンドクンと二人の鼓動が聞こえる。段々と近付いてくる、そして俺の両胸に手を当てられる。
「ぐっ!」
苦しい
これが神様の神気ってやつか、俺の全身を神気が、駆け巡る。すると奔流が収まる。
「これで契約完了よ、私達は繋がりし者となったわ」
勝手に契約された!?
「ちょっと待て! そこまでは聞いて無いぞ契約とか何なんだよ」
「じゃあ私を心の中でイメージして」
俺は目を閉じ、ヤエをイメージして目を開けると俺がいた。こえぇ! 何これ幽体離脱!?
「それは私が今、健を見ている事が、共感して見せている者よ」
「こうやって私達3人は感覚が共有できるって訳」
「わかった」
目を閉じて開ける、今度は自分の視点だ。よし!大丈夫だ……でも神様に神気は使うなって言われていたよな?
「大丈夫よ、別に私達との、繋がりに神気は元々使われていたのよ、あんたは気付か無かったでしょうけど。それを更に固定させたのよ」
色々と問題があるよね!? 俺のプライベートってどうなるのよ。
「どうせ何もないじゃない」
「やかましいわ!」
「明日の10時には向かう良いな!」
カップラーメンを食べて、一言
「おやすみ!」
と言って寝た。
夢を見た何処だろう、草原だ周辺を見渡す。他には川が流れている……まさかあの川……
「そうよ三途の川」
「ぎゃあああ!」
ヒエに後ろからいきなり声を掛けられた。
「何だよ!? あれ? ヤエは何処に……」
「ヤエは此処には来れないわ、あんたに、いえ健だけに、聞いて欲しい事があって。ゴメン」
「もう別に良いよ、言ってみ?」
「今回の件、私のせいよね?」
「違うよ、ヒエは何にも悪くない。人間の勝手な都合で、お前達にこそ迷惑を掛けたんだ。因果応報だったんだよアイツは。」
「だから、わからせてやるよあの娘に! だからそんな顔するな。」
「わかった、でもくれぐれも無茶しないでね? あんた見てると時々不安になるのよ」
「そうか?」
「あっもう時間! じゃあ起きたらこの場所の事は」
「大丈夫、わかっている。ヤエ怖いもん」
「あの娘だってきっと……」
「はっ!?」
目が覚めた、まだ8時か。宿直用のシャワールームを借りて、顔と全身を洗い流す。
事務所に戻ると塚田さんが、シャワールームへと向かって行った。その間にコンビニへ行き朝食を買ってくる。戻ると、3人とも揃っていた。
「私達の分あるんでしょうね?」
サンドイッチを取り出し並べていく。
「ちゃんとあるわね、いただきまーす」
まったくこの神様達は、俗世をある意味満喫している様だ。普通にコーヒーも飲んでるし、まあ良い一応鷲尾さんにも連絡を入れておく。
時間になる、原付に乗り込み中学校へと向かう。ヒエは神様状態で付いてきてくれる。
中学校と村松公園は隣接している。公園の駐輪場に原付を停めて歩いて向かう。
「ヒエもうそろそろ、姿を消してくれ」
「わかった」
姿が霞んで行き見えなくなる、ヒエの気配は感じられなくなった。
「良し行くか!」
中学校へと東側から正門へと向い歩いて行く、2週回って正門へと向うと、明らかに敵意を感じる。俺はその場所で立ち止まり、校舎を睨み付ける。ヒュッ! っと何か飛んでくるがそれを指で弾き返す。それが悔しかったのか何発も飛ばして来る、その都度弾き返す。
やっぱりな、俺をピンポイントで狙ってる。ヒエの声がする
「もう良いわよ」
「オッケー撤収だ」
事務所に戻ると、鷲尾さんも居たヒエは着替える為に衝立の裏側へと消えた。
「何かわかったか?」
「ああ分かったよ」
塚田さんが、聞いてくる
「やっぱり?」
「じゃあ答え合わせだ、ヒエお願い」
俺はプリントアウトした生徒の写真をテーブルに置く。
「この娘よ」
一人の女の子を指差す、塚田さんは俯く、鷲尾さんは良くわかって無いようだ。
指差した女の子の名前は、愛宕中学校2年3組『渡辺茉希』
「やっぱりね」
「おい八神この娘と面識があるのか?」
「少なくとも直接あった事は無い」
間接的にはある、この娘は渡辺元市長の孫娘の筈だ。そしてヒエの怒りを買って、呪われた女の子だ。
感謝されこそ怨まれる筋合いは無い……多分
「鷲尾さんに頼みがある、元市長の家族関係と、今どうしているのか知りたい」
「おう! 良いぜ少し時間をくれ署に戻って調べて来るよ」
そう言うやいなや事務所を出て行った
「塚田さんは元市長について何か分かりますか?」
「さあ、そこまで詳しくは……でも噂程度なら」
「何でも息子の市議会議員も、辞任に追い込まれ、今は鬱病とアルコール依存症で入院中だとか」
「荒み過ぎぃ!? 取り敢えず、その件の裏取りは鷲尾さんがしてくれるでしょう」
「ヒエ?」
ヤエが心配そうに、ヒエの肩を抱き締めている
「大丈夫よヤエ、大丈夫」
「無理すんなよ、ヒエお前は悪くない。人間のした事だ」
数時間後、鷲尾さんが資料を持ってきてくれた。鷲尾さんの説明によると、やはりあの事件以降家族は、離散していたそうだ。今、茉希は母親と暮らしているらしい。俺達は彼女の資料見ていた。
◆ ◆ ◆
何であの男八神が、また学校に来ている!? 横野にかけた呪いでは殺し切れなかったかまだ足り無いのか? 私は呪いを込めた呪弾を八神に向けて撃つ、だが指で弾き返された。そんな! この前はあんなに簡単に呪えたのに、続けて撃つがその全てを弾き返された、ダンッ! と机を叩く。先生がこっちを向く
「先生! 不審者です! 」
周りの生徒と教師が一斉に、窓の外を見る。
「今日は、市役所の方が見回りに来ているんです、連絡にあった服装ですね、大丈夫ですよ渡辺さん」
くそっ! あの男は私の大切な家族を奪い壊したクソったれ野郎だ、許せるわけがない。だから彼等から力を得た! それでも足りないと言うのなら。
昼休み私に好意を持っていると言う、同級生を呼び出した。そんなに私が好きならヤクニタッテモラウワ
◇ ◇ ◇
「八神よお、お前が恨まれるのもおかしいぜ」
鷲尾さんが言う
「俺もそう思うよ、取り敢えず元市長に合ってくる」
「何で! あんたまさかあの男を助けるつもり!」
「落ち着けよヒエ、只の御見舞」
「はぁ!?」
「行くのは俺と鷲尾さんだ、良いよね鷲尾さん?」
「しょうがねぇな!」
俺達は病院へと向かう、病室は鷲尾さんに聞き出してもらった。連れてきて正解だった。
「315号室だってよ、いこうぜ」
「鷲尾さん分かってると思うけど、何があるか分からないから、せめてしっかりと意識を持っててね」
「気合なら任せな!」
「じゃあ行こうか」
315号室に近づく、妙だな、明らかにおかしい気配が漂っている。鷲尾さんに合図する。病室の前に並び立つ、俺が突入バックアップは鷲尾さんに任せた。
勢いよく扉を開ける、其処には元市長の他にもう一人いた人間かいや違うな? 俺に気付くと、『そいつ』が襲い掛かって来る。身構えるがヤベッ三角剣持ってきてねぇ! 既の所で避ける、体制を崩し尻餅をつくヤバい。
「おりゃあああ!」
鷲尾さんが『そいつ』を殴り飛ばした、良く見ると鷲尾さんの拳が光っている、ヤダ格好いい! そういう役やって見たい!
「ナイス鷲尾さん!」
「ボサッとしてんな来るぞ!」
俺を狙ってる?
「囮は任せてくれ! 鷲尾さんは拳に意識を集中して! 準備ができたら声をかけて!」
「おっおう!」
俺は『そいつ』に向かって駆け出した、取り敢えず『こいつ』は人間じゃない。それだけは分かった。『そいつ』の攻撃を躱し続ける
「よし良いぞ!」
待ってました!『そいつ』を鷲尾さんの近くまで誘導する。
「せえええええええい!!」
ドスンと良い音がした。入ったな?
『そいつ』は動かなくなった
俺は、心の中でヒエとヤエを呼ぶ
「見てたわよ、悪いけどそいつには近付きたくないわ」
ヒエが拒否する
「何でだよ!?」
「とにかく!私は嫌」
「私が『見る』健、意識を私に合わせて」
ヤエに意識を合わせる、すると俺の意識は遠のいて行った。
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