第17話近づく『もの』
俺に意識が戻る、『そいつ』はもう居なかった。鷲尾さんに聞いてみる。
「鷲尾さん『あいつ』は?」
「逃げちまったよ、ヤエ様が見ている時に突然動き出してな。後伝言だ、この部屋をしっかり見てこいとさ」
「仕方がないね」
そう言って部屋を見渡す、元市長が眠っている、随分と痩せたじゃないか? 取り敢えず良く『見て』見る、元市長の身体から何かが抜けて行くのが見える。
「もう良いわよ戻ってきて」
ヤエの声が頭の中で響く
「鷲尾さん戻ろう、もう良いってさ」
二人で病室を出て事務所に向かった
「鷲尾さん凄いね、もう力を使いこなす何てさ」
「おう! 昨日の夜、ヒエ様とヤエ様が枕元に現れてな」
なるほど過程はどうであれ、心強い味方が出来た様だ。
事務所に戻る、部屋の中ではヒエが泣いていた。ヤエが諭している
「ヒエ貴女のせいじゃない『あれ』は貴女じゃないのよ」
なんの事だ何を言っている?
「ヤエどうした? なにか分かったのか」
「えぇ分かったわ『あれ』はヒエが生み出した呪いの残滓が、意思を持ってしまったようね」
「そんなのおかしいじゃん? 呪いなんて……あっ!」
そこまで言って思い出す、そう言えば
「そうよ、あなた達二人がかりで、呪いを残したでしょう」
「何かすみません……でもあの時は……」
「分かってるわよ、でも一つ分かったわ、彼女に力を与えた存在が何ものか」
「『そいつ』か?」
「そうね彼女が、あなたを怨む気持ちに付け込んだんでしょう。それにあなたも気付いたでしょう? あの元市長の身体から精気が抜けているのを」
「ああ見たよ、そういう事なのか」
「そうね彼女気づいてないわよ、自分が使っている呪いの力は、自分の祖父の精気を使ってる事に」
馬鹿な娘だ全く、結局自分の手で祖父の病気を悪化させ。俺に対して、ある意味逆怨みをしている。
ヒエが口を開く
「あの呪いは、あの娘から人を恨む感情を喰っているはずよ」
「やっぱり危険だよな?」
「あなたに対抗する為に、精気それに恐怖心等の負の感情。あと血肉が加われば完璧ね、そうなればもう呪いとは言わない。別の存在となるわ」
「解決策は?」
「彼女から早く切り離して、祓ってしまうこと……」
鷲尾さんの携帯がなった、すまんと言い残し部屋を出て行く。
「八神さんが、狙われるのはその呪いが、彼女の心の隙間に付け込んだのでしょうか?」
「かもね、ある意味では、私と健が産み出したものとも言えるわね」
「へぇ〜そうなんだ健?」
「俺を睨むなよ、ヤエ嫉妬か?」
パッシーン!
「そんなわけ無いでしょう穢らわしい!」
痛い、もう慣れたけどさ
「でも俺は、お前らの事好きだぜ!」
「「気持ち悪い」」
でしょうね……知ってたよ……
塚田さんは目を合わせてくれない。
みんな酷いよ
バンッとドアが開けられた鷲尾さんが慌てている。
「緊急事態だ! 八神! 一緒に来てくれ、ショピングセンターで中学生が暴れているそうだ!」
「それなら警察の出番でしょう?」
「普通ならな!」
「八神さんこれを」
塚田さんが三角剣を渡して来る、受け取ると鷲尾さんの車へと向い、ショピングセンターへと車を走らせる。
「状況は?」
「何でも店内で突然暴れ始めて、通報され向かった警官ですら、抑えつけれないらしくて増援を向かわせたが」
「今度は店内で売っている包丁を使い、警官が何名か刺され重体者が出てる」
「相手が相手だけに拳銃も使えない」
「で? 俺達に」
「嫌、応援要請は俺だけだ、お前にはフォローを頼みたい。恐らくさっきの話しと関係あるかもだろ?」
「了解!ヒエ、ヤエお前らは帰れ、俺の目を通して見てれば良い!」
「分かった、気を付けて!」
現場は惨憺たる有り様だった、警官隊が野次馬を押さえている隙間から。俺は鷲尾さんに連れられ店の中に入る。其処には中学生がいた。あの校章、愛宕中学校だな。店内には怪我人が複数、全員血を流している。血の匂いで吐き気がする。
「お前等は下がってろ」
鷲尾さんが警官隊を下がらせる。
「確かに普通じゃないね? でも俺ステゴロには自信ないよ」
「そこは俺に任せとけ」
中学生は怪我人の血を手ですくい呑み込んでいる。更に吐き気がます。
「ありゃヤバい身体から何か出てる。人の精気と血を呑み込んで何処かに送っている」
まぁ十中八九あの娘のトコロだろう。
「んな事より今はあのガキだ行くぞ!」
鷲尾さんの後ろに続く
中学生が俺達に反応し、怪我人を投げつけて来る。
「ちょっ!?」
物凄い勢いで飛んでくる、もう人の力じゃない鷲尾さんは避けたが、俺は血糊で滑って転んだ。
「グヘっ」
「何やってんだ馬鹿!」
「結果オゥラーイ!」
立ち上がりそのまま向かう、鷲尾さんが先に中学生の元へと辿り着く。だが中学生のパンチ一発で吹き飛ばされていた
「嘘でしょ!」
「ヤバいぞコレ」
鷲尾さんが一発でフラフラになっている。
ヤバい俺なんかが受けたらって! 今度は俺に向かってくる! しかも速い! 三角剣は対人用じゃ無い! どうする? どうする?
取り敢えず一撃目は避けれた、だが二撃目は防げなかった、両腕でガードするが吹き飛ばされる。
「いってぇ!」
商品棚に叩き付けられ背中に激痛が走る。
また俺に向かってくる!? 落ち着け俺! そう言えばここは食品スーパーだ、もしかしたら、あれがある筈だ。食品コーナーの看板を見ながら全速力で逃げ出す、どこだどこだ! すぐ後ろに迫る、今度は背中を斬りつけられた、コイツいつの間に包丁を! だが目的のコーナーへと辿り着いた、背中の痛みを堪えながら、その商品の袋を破り中身をコイツにブッかけた
「グゲゲゲガァッアアアアア!!」
多少は効いたろう適当に選んだ粗塩だったんだが。鷲尾さんが追いつきコイツを羽交い締めにする。
「早く何とかしやがれ!」
俺は、三角剣を構えソイツに突進して行った近づくに連れそいつが暴れ出す。鷲尾さんも限界だろうソイツの身体に三角剣を突き刺す!
「dfhrhjhbっhっっjんkhjhc!!!」
もう何を言っているのかさえ分からない叫び声を上げている。そのまま気を三角剣へと集中させる、行けっ行ってしまえ!
三角剣が光を放ち、取り憑いていたものが消えていく。完全に消え去ったのを確認して、三角剣を抜く。
三角剣は物理的に刺さった訳では無い、否見た目では本当に刺さっている様に見える、だが貫くものは違う。肉体ではなく、呪いもしくは取り憑いていたものを刺し貫く。そして祓う。
これが今俺のやった事だ、上手く行ったよなじゃないと困る。三角剣の表面の三角が3個砕け散っている、俺も霊気で補っていたがそれでもここまで割れるとは思わなかった。
「無事かい? 鷲尾さん」
「おう、それよりもお前さん背中の傷大丈夫か?」
「斬られてんぞ?」
興奮していて忘れてた痛みを思い出す
「いてててててて!」
くっそ!
「俺の車で病院へ連れてってやる、こっちにこい。」
「ちょっとまって中学生のクラスが知りたい」
動かなくなった学生の生徒手帳を見る
「やっぱりね」
確認して戻す
「鷲尾さん病院お願い、もう痛くって痛くって」
「おら肩貸しな」
「ありがとう助かる」
◆ ◆ ◆
ちっ! 役に立たない男
私は、午後の授業中にもかかわらず舌打ちした。せっかく力を使ったのに! だが必要な養分は手に入れた、これだけあれば復讐ができる。
休憩時間になった
「野島のやつ何で早退したんだろうな」
男子生徒の声が聞こえてくる
ふん今頃、警察に逮捕されてるか死んでるわよ。
「え〜マジで! あの人親戚だったの」
「うん最近、市の臨時職員になったって行ってたから多分」
あの男の親戚か私は近付き
「八神さん本当に〜」
「多分そうだよ、叔父さんがいつも来てるジャケットだったから」
心のなかで彼に声を掛け、笑みを浮かべる。
復讐の時が近い
◇ ◇ ◇
病院から事務所に戻る、背中は応急手当てをして貰った。鷲尾さんは報告があるとの事で署へと戻って行った。
「大丈夫ですか八神さん?」
「突っ張る感じはするけど、痛み止めのおかげで今は大丈夫」
「で予想通りだったわね?」
「ああ彼女の同級生だったよ、全くどうやったらそんな性格になるのかね」
人を人とも思わず自分の復讐の為にクラスメートを使い、沢山の人を巻き添えにした。流石に許せない、御説教で済ませてやろうかと思ったが、もう子供としては見ない一人の人間として相手になってやる!
塚田さんがコーヒーを入れてくれた
「八神さんどうしますこれから?」
「もう夕方ですね今日はもう休みますよ、背中の傷もあるし」
「では私は、福祉課で溜まっている仕事を片付けて来ます」
そう言うと塚田さんは事務所から出ていった
今事務所には、俺とヒエとヤエしかいない
「もう戻っていいよ、今日は何もしないから」
「帰るときは勝手に帰るわよ、ねっヤエ」
「そうね」
「じゃあさ俺の目の前でいちゃつかないで」
「だってやっぱり二人で一緒に居るとどうしても」
「私達は二人で一緒なのよ?」
「わかったわかった好きにしてろ」
塚田さんが飛び込んで来た
「八神さん! ご家族から電話です!」
何で市役所に……スマホを見ると電池が切れていた。あちゃーやっちまった。急いで充電する
「もしもし俺ですよ〜」
「やっと繋がった!!」
電話かけてきたのは俺の母親だった
「大変なのよ!千秋が千秋が急に倒れて今中央病院に運ばれたのよ!」
「何どっか悪いの?」
「それが分からないのよ! 分からないから!今皆で集まっているの、あんたもすぐ来て!」
電話を切る、緊張感が走る。
まさか……
「健、私達も行くわ」
「いや別に大丈夫だよ」
「誤魔化しても無駄よ、あんたの動揺は私達には分かる。そしてもし最悪の場合、あんたは冷静で居られる?」
「私も行きますよ上司ですから」
「ありがとうヒエとヤエは、神様状態で俺と塚田さんには見える程度でたのむ」
「すみません塚田さん」
3人に頭を下げる
「やめてよそういうの、急ぐんでしょ」
ヒエとヤエはふっと光りその姿を変える
「急ぎましょう八神さん」
4人で病院へ向かう、さっき迄応急手当てを受けていたのに。
病室へ向うとそこは集中治療室だった。
妹夫婦父と母がそこにいた
「どうなってる?」
妹に聞いてみる。
「千秋が学校で部活中に、急に倒れたらしくって。」
「最初は貧血かと思ったら、呼吸を……していなかったらしくて。救急車で運ばれたけど今は酸素吸入で……」
「千秋のクラスは?」
「えっ!? 今関係ないでしょう!」
「いいから! クラスは!」
「えっ!? 2年3組だけど」
それを聞いた瞬間、俺の全身をからどす黒い霊気が湧き上がっていた。
「やっ八神さん落ち着いて!」
やりやがったなあの娘! やるなら俺だけを狙えよ狙うんなら! 関係のない家族を巻き込みやがって!
許さ……
次の瞬間時間が止まった
目の前にヒエとヤエがいた
「だから言ったでしょ冷静になれって」
「俺の家族にまで手を出されたら……」
「いいから落ち着いて、あなた今自分がどんな霊気出してるか分かる?見てみなさい」
「あっ……」
「そんなんじゃ守りたいものも守れないわよしっかりしてよね」
時間が動き出す、どうやらヒエとヤエが力を使って迄で俺を止めてくれた様だ。
改めて妹夫婦に聞いてみる
「千秋の顔見れる?」
「見てやって」
「分かった、ちょっと行ってくる」
「ヒエとヤエ来てくれ」
俺は、集中治療室へと入っていく千秋のベッドの方からは呪いの気配を感じる
「そこまで強力じゃ無いわね、生かさず殺さず精気を奪い続ける呪いね」
「祓えるか?」
「出来るけど、私にいい考えがあるわ。一旦出ましょう」
病室を後にする、塚田さんが両親に挨拶をしていた。俺は両親に
「大丈夫だよすぐに良くなる、きっとね」
妹夫婦には
「お前達はちゃんと側に居てやれよ」
「兄ちゃんは?」
「俺は、少し仕事が残っててな。一旦市役所に戻る」
最後に両親と妹夫婦に
「大丈夫だよ! 千秋が目を覚ますまでそこで待ってて上げて」
事務所に戻る、
「ヒエさっきの作戦聞かせてくれ」
「いいわよ、まず私が軽く呪いを祓うわ。完全に浄化しない程度に、恐らく呪いは逃げ出すでしょうね。残った精気を主の元へ届ける為に」
ヤエが言ってきた
「そこからは私の探知能力で追跡するわ。健は、私に付いてきて。そして根源を見つけ祓う」
「ちょっと気になるんだが、お前等ホントにフォローだけなんだな」
「そうね、なるべく手伝う様にはする。ただどうしても人が産み出した呪いには、複雑過ぎて手が出しようがない」
「万が一私達が、人の作り出した呪いに呪われたら。私達もどうなるか……」
「わかった! フォロー頼むよ女神様!」
女神に感謝する、俺を止めてくれたこと。千秋を救い、俺へと繋がる因縁を断ち切る方法を教えてくれた事
ありがとうございます
「後は俺が」
「俺が何とかする!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます