第15話霊峰にて

「慈光寺だぁ?」

 鷲尾さんは驚いてる、無理も無い。普段は只の観光名所みたいになっているのだから。

「そうだよ慈光寺、あそこには凄いものがあるんだよ、ここまで見ちまったんだから後戻りは出来ないよな?」

「お前は刑事をなんだと思ってる!」

「全く! 乗れ!」

「話がわかるね鷲尾さん」

車に乗り込み、鷲尾さんが車を走らせる。俺はその間電話を掛けていた。

「じゃそういう事で、宜しくお願いします」

お礼の挨拶をして電話を切る。

「何処に電話かけてたんだ?」

「これから行くところだよ、さあもう少し! 飛ばしてくんない?」

「馬鹿いえ! 警察官がそんな事できるか」

「だよね〜ほら着くよ」


 慈光寺に到着するとすでに知ってる顔が2つあった、宮司様と巫女の確か鈴城カヤさんだっけ? あともう一人巫女さん居たと思うんだけどな? まあいいや

「お久しぶりです宮司様」

「いやはや今度は何が起こっているのですかな? いやそれよりも、そちらの……」

「紹介します刑事の鷲尾さんです」

「鷲尾さんですか、少しこちらへ」

「なんだよおい」

「良いから付いてきて」

手水舎へと向かう

「先ず八神さんからどうぞ」

俺は手を洗い口を洗いだ。

「では鷲尾さんです」

俺は少し後ろに下がる、鷲尾さんが手を入れた瞬間多分……そして実際にそうなった

「ぐああああああああああああああ!!?」

やっぱりな、暴れ始めるが宮司様に押さえ付けられてる。あの人、力強いんだよなぁ年寄りなのに。良く鷲尾さんを押さえ付けてると感心した。

「ちと私の力だけでは、八神さん頼めますかな?」

「分かりました、鷲尾さんあんたの呪いを、消す為だ我慢しなよ」

「ちょっとまってくれ! そうだ少し休憩を……」

「やかましいわ!」

そのまま押さえ付けた、暫く絶叫と苦悶の声をあげていたが、静かになった。ゼェゼェと肩で息をしている。

「何でこんな目に……」

「右手見てみ?」

鷲尾さんが右手を見て驚いている

「おい! 治ってるぞ」

「多分あれは火傷のあとじゃない、呪いが手に感染ったんだろうね。でも良かったじゃん? 治って」

「お前はサラッととんでもない事言ってるが、本当にこんな事が世の中にあるんだな」

 その後、俺達は宮司様に連れられ拝殿で、これまでの経緯を話した。

「成程それでまた必要になったと?」

「そうです、確か残り後4本ありましたよね? 今度は全部持っていきます。力が無い俺には必要なんです」

「それはそれは、であれば今渡すわけには行きませんな!」

「何で!?」

「今八神さんに力が何故無いのか、それを理解して頂いてからの話ですな」

「八神さん此方へどうぞ。鷲尾さんはカヤ頼みます、もしかすると彼にも……」

「分かりました、鷲尾さんここでお待ち下さい」

そう言うとカヤさんは部屋から出ていった。俺は宮司様に連れられ奥の部屋へと案内された。中に入る、その部屋には誰か居るもう一人の巫女だろうか?

「その巫女の名は佐藤梨沙、最も今彼女ではありませんが……八神さん『彼女』と話して下さい」

「彼女? どういう事ですか?」

『取り敢えずお座りなさい、八神さん』

「はぁ」

取り敢えず彼女の前で正座する。

『お久しぶりですね八神さん、こうしてお会いするのは2ヶ月ぶり位でしょうか』

「あの『どちら様』で?」

『私はこの山の神ですお忘れですか?』

そう言えばヒエの一件で最後にちょっと話したっけ。

「あの時の神様でしたか、どうもお久しぶりです」

『貴方が力を今失っている事も把握しています、その為にこの巫女の身体を借りています』

「なるほど、わざわざすみません」

『余り時間がありません、この巫女にどれ位憑依していられるかも分かりませんので。良いですか八神さん、貴方は全ての力を失ってしまった訳ではありません、私が全て封印しました』

「神様!? 俺そんな事されていたんですか? なんの為に」

『貴方は、その身に人が宿しては行けない神気を宿してしまっているのです』

記憶にない、何時そんな事になった? 

『貴方はあの時2ヶ月前、ヒエとヤエをその身に宿し、貴方の身体を通して二人に神気を注ぎ込みました』

あの時か……

『その時貴方も感じていたのでは無いですか? 人の身に力が宿って行くのを』

そう言えば鳩尾の辺りに何か力が流れ込むのを感じていた

「それと封印されるのは何か意味が?」

『人の身で神気を使えば、恐らく死ぬ事に……』

なにそれ怖い! じゃあ力何て封印されたままで良いな!

『ですがまた危機が訪れているのでしょう?』

「いや三角剣があれば多少の事は大丈夫じゃないんですかね」

『三角剣には、作った者の霊気と、剣が持つ霊気を合わせて初めてその力が発揮されます』

『三角剣だけでは限界があるのです、その為に今から貴方の力の一部を開放します、ですが上手く力を操って下さい霊気だけを上手く操れる様に』

「ちょっとまって下さい! そんな無茶です神気? 霊気? そんなの区別できないですよ! せめて霊気だけでも……」

『それは私の力でも無理なほどに、貴方の身体と一体となっていますが大丈夫です。霊気とは貴方が、もともとその身に宿していたもの、その違いを自分で感じ分けるのです』

『良いですか神気は、くれぐれも使わないで下さい』

「じゃあ力の一部を解放と言いましたが全力解放する事は出来ないんですか?」

『その方法はこれから一部解放する力を、上手く操れれば可能ではあります』

「方法だけ教えて下さい、後は自分の意志で判断します」

『分かりましたでは此方へ』

俺は神様へと近づいた

『では上手く力を操って下さい』

そう言いうと俺は、おでこにデコピンをされ、俺は意識を失った。


 ここは何処だろう、良く分からない、俺はどうしたんだろう身体が浮いている感覚がする。しばらく漂っていると、2つの光が見えて来た。一つは蒼く一つは白く輝いていた。

 あぁ神様が言ってたっけ力をコントロールしろと、だがどうしようどっちが霊気でどっちが神気だ? いきなり分からない。少し悩んで両方触ってみる事にした。

 まずは蒼の方からだ! 触れてみる得に反応がない、試しに手を離し、こちらへと来るよう蒼の方に向けて念じて見る、すると細い蒼色の光が俺の手に伸びてくる。コイツが、霊気か?

 次に白い光に手を伸ばす、それは熱を帯びていた、構わず手を触れさせる。熱い、手が焼けるようだ。触れた瞬間俺を引きずり込もうとする! 咄嗟に蒼の光へ片手を伸ばし、引っ張り出すよう念じる。蒼の光は俺の腕と一体化し引っ張り出してくれた。

 どうなんだ? 蒼か白かと問われれば間違いなく蒼だと思う、取り敢えず蒼の光は試行錯誤の末、光の大きさを変えることが出来るようになった。問題はこの白い光だ、荒々しすぎて言う事を聞かない反抗期か? だがもう一度触れてみる、左手に蒼の光を纏わせて右手を白い光へと近付ける。また引き込もうとしている、今度はそのまま飲み込まれてみた左手だけ出したまま。すると俺の中に景色が浮かび上がってくる、あぁこれは……

 蒼の光の力で引っ張り出してもらう、白い光は俺だった。俺の過去の記憶が喜怒哀楽がその中にはあった。はぁどうして自分の過去って客観的に見ると、こんなにも恥ずかしいのだろう。良く分かった、お前は俺なんだな? 白い光を抱え込んだ。


 そして目が覚める、鷲尾さんと鈴城カヤがそこに居た

「おっ気がついたかい!」

「どれ位俺は?」

「20分程だ、起き上がれるか?」

鷲尾さんが手を貸してくれた、起き上がり周りを見渡してみる、くっきりと良く見える例えて言えば、目の悪い人が眼鏡を掛けてハッキリと見えるような感じだろうか?

 そこへ宮司様が三角剣を持って来た

「気が付いたようですな! 力も戻っているようで何より、これならばお返ししても良いでしょう!」

三角剣を受け取る、剣から力が流れ込み、また俺の力も剣に流れていくのを感じる。

「おおいい感じですな!」

「ほうぅ!? そんな風になっているのか!」

鷲尾さんが意外な事を言う

「見えてんの?」

「おう! コイツのおかげだな」

両手首を俺に見せてくれた、手首にはしめ縄の等なもので出来た腕輪を付けていた。

カヤさんが言う

「鷲尾さんも呪いにかかり、そういう体質になった事と刑事と言う事ですので、今後の為こちらの腕輪を差し上げました」

「そう言う訳だ、これから何かあったら俺も協力するぜ!」

「頼りにしてるよ」

「じゃ帰るか!」

「あいさー」

「八神さん餞別です、持って行って下さいあなたが作ったこの小さな三角剣の首飾りを」

そう言うと小さな三角剣が3つ着いた首飾りを受け取り早速身に着ける。古い方は鷲尾さんにあげた。そしてお手水と清めの塩を貰い慈光寺を後にした。


 その後、帰り道の途中で塾で得た情報を整理していた。横野の生徒は全員で8人、男子4人女子4人全て愛宕中学校生徒だ。

「でよ、これなんだがラブレターをいくつか持ってきたんだよ」

「モテモテで羨ましいね」

ラブレターを見てみる、少し歪んで見える

「鷲尾さん気付いてたの?」

「いや慈光寺の巫女さんが先に気付いてな、まぁ俺にも見えたんだよ」

「呪いだね、それ」

「あぁそうらしいな。払おうとしてたんだが、俺が止めた。もしかしたら、呪いとやらって逆に手掛かりになるんじゃねぇか?」

「どうだろう試して見ないとね、預かっても良いかい?」

「おう、何かわかったら教えてくれ!」


 警察署に付いたのは夕方だった、鷲尾さんにお礼を言い、原付で事務所に戻る。

「ただいまー」

「ここは家ではありませんよ八神さん」

「そう言わないでよ、御土産買ってきたから、お前らも食うか?」

ヒエとヤエにも聞いてみた

「何よそれ?」

「キムラのアイスクリーム美味いよ、あっ! でも神様だから食べれないか?」

「食べるわよ! ねっヤエ」

「うん!」

「ちょっとまってなさい!」

衝立の裏側へと二人共そそくさと向かって行く、一瞬光ってゴソゴソ物音がした後、二人とも出てくる。

「さぁそのアイスクリームとやらを出しなさい食べてあげる!」

二人にアイスクリームを渡す、随分と興味深そうに見ている。一口食べて

「「美味しい!」」

二人とも喜んでいる、買ってきて良かったと思った。が塚田さんが、アイスを食べながら俺を睨んでいる。

「八神さん貴方もしかしたらヒエ様とヤエ様が見えていたのですか」

「見えてますよ」

「違います! 御霊体のおふた方をです!」

「そうですね見えるようになりました」




「「「はいいいいいいい!?」」」


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