第2話侵食される日常

「あなたは神を信じますか?」


突然そんな事を言い出された、何で市役所に呼び出されて言われるのが、神を信じますか?なんだ勧誘か?


「いるなら俺もう少し幸せな人生を送ってると思うんですが」

他に答えようがない、しかし彼女の目は真剣に俺を睨み付けている。


「今この五泉市で異変が起き始めようとしています、いえ既に兆候は表れています」


「ここ年明けから半月の大雪それも、この五泉市付近のみという現状、更に…」


そこで彼女は口籠る、まぁそれはそれとして。


「でも俺関係ないですよね?雪なんて降るときは降るし、そんなの異変でも何でもないですよね?」


確かに今年は近年稀に見る大雪が絶賛継続中である、外を見ると止んでいた雪がまた降り始めていた。

何処が異変なものか。そんな事を思いながら俺はさらに憂鬱になっていったが、彼女の様子が何かおかしい事にも気が付いていた。


「まあ、話ぐらい聞きますよ?」


「それでは先程、異変が起き始めているとお伝えしました私達は『15年目の呪い』と名付けました、この事は一部の具体的には言えませんが関係者しか知りません」


「そしてこの呪いは既に日常に侵食しています」


何だろう呪いとか言い始めましたよ?


「あのその『15年目の呪い』ですか?そう言うのは霊媒師とか神社とかで御祓いしてもらえば良いんじゃないですかね」


「残念ながら、今五泉市に神様は居ません正確には土着神と言います。つまり願うべき神様は居ません」


「信じていただけないのも分かります、ですがこのままでは」


どうやらそっち方面に話をもって行きたがる様だ。まあ聞いてる分には面白いけどさ、でも気になる事がある。


「ちょっと待って下さい、さっき言いましたがそれと俺何か関係は?」


彼女は躊躇なく


「解りました率直に言わせていただきます。八神さん、貴方にはこの呪いに付いて調べて頂きます」


「はぁ!?何で俺が!そんなくだらない与太話に付き合わなきゃならないんですか!」


「大体!神様なんて居ない呪いなんて物も存在しない」


そこまで捲し立てる様に言ったが、彼女は冷静に


「八神さん貴方には断る事はできないんですよ、選択の余地は無いんです。私の言っていることの意味お分かりですよね?」


「ぐっ、呪いなんてそんな物どう信じろと?」


「そうですね、見てもらうというのは如何ですか?」


今とんでもない事言ったぞこの人、見る?何を?呪い?

でも、それを確認してしまったらもう戻れなくなる。そんな感覚に襲われる、もしこれがドッキリで俺を笑い者にしたいならその方がまだマシだ。


「分かりました見せてください、そんな物が有るなら」


フンと鼻を鳴らし覚悟を決める、笑い者にでも何でもなってやる。


「それでは付いてきてください」


俺は彼女に促され市役所を後にし、隣りにある中央病院へと向かった。

そして…俺は今日いや人生で1番後悔する事になる。



中央病院へと向かった俺は、とある階へと向かった。そして『そこ』へ向かうにつれ猛烈に鳥肌が立ち始めていた。


「塚田さん、やっぱり辞めていいですか?寒気が酷いんですけど」


「私も『ここ』に来るのは勇気がいるんです我慢して下さい」


どうやら逃してもらえないようだ。それにしても恐ろしい、廊下に明かりも付いているのに空気が違う、まるで『そこ』に向かうに連れてどんどん暗くなっている様な感覚に襲われる。


そして辿り着いた『そこ』は病院ではお金持ち様専用の特別室


「ここに先程話した、呪いの…がいます」


「います?いるって何ですか」


「それは貴方自身で確認して下さい、私も入ります。1つ注意点が有ります、決してそれには触れないで下さい。」


「だから何なんですか!脅さないで下さい本当に鳥肌が立ちっぱなしです!」


本能的な恐怖を感じる、今までの人生で色々な恐怖を感じて来たがこれは違う。触ってわいけない『それ』がある。

塚田さんもドアを開けようとしない。


少しの躊躇の後、彼女がドアを開けたその瞬間俺の首筋に何か触れたような感触があった。気のせいだろうか?


部屋は暗かった、いや窓の外の明かりが入って来ているのに感覚的には部屋が暗く感じた。

もう逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、彼女に手を引かれ『そこ』に入って行った。


『それ』は見てはいけない者だった、正直今朝食べた朝食セットを吐き出す寸前だった。全身が泡立つ少しでも気を抜いたら、吐いて気絶するんだと思った。


「これは生きているんですか?」


俺は何故か『それ』に手を伸ばしていた、寸前彼女の


「いけません!!」


一言で我に返り、慌てて手を引っ込めた。


「下がってください!そんなに近づいては危険です!」


気が付けば俺はベッドのすぐ近くに来ていた。そのままベッドから距離を取る。


「塚田さん!これってこれって」


『それ』は左上半身以外がミイラ化したヒトだった。


「彼女は生きています」


「彼女!?この状態で生きてるんですか!?」


よく見れば点滴が何箇所も繋がれている。


「そして呪われています、いえこれも『15年目の呪い』によるものです」


「彼女の名前は田辺茉希、五泉市長の孫娘になります。今年に入り体調が悪くなり入院そして今に至ります。」


「見ての通り左上半身以外ミイラとなっていますが生きてはいます、この事は市長からキツく口止めされており病院関係者も知っている者は僅かです」


そこまで聞いて疑問が浮かぶ、とびっきりの疑問が


「さっき俺は『彼女』に手を伸ばしかけていましたよね?それを貴女は止めてくれた、もしかして…」


「はい、この『呪い』は伝播します」



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