市霊払い
肉まん
第1話あなたは神を信じますか?
2021年
この年、年初からいつもと違う違和感を感じていた。ここ何年も雪が積もる事も少なく30センチ程度で大雪と騒がれていた程度の我が市だったのだが、正月三が日が過ぎた頃から1メートルから最大3メートルと言う災害級の大雪から始まった。
大雪程度と自分は気にしていなかったのだが、流石に降りすぎ住んでいるアパートが雪に潰される訳には行かなく、雪下ろしを住人総出で終わらせ疲れ果て、部屋に戻り実家に安否確認をしようとスマホを取出し画面のロックを解除すると着信アリの表示があった。
市役所は正月休み明けから大騒ぎであった、あまりにもの大雪による除雪の要請、倒壊しかねない建築物の報告、其れ等の喧騒を横に市長に呼ばれたため市長室に向かっていた。
市長室には他にも何名かの来客者がおり、皆神妙な表情を浮かべていた。
「塚田君お疲れ様です、貴女に来て貰った理由の前に此方の方を紹介します。」
そう言うと渡辺市長は私に紹介した
「此方が郷土資料館館長、田辺さん」
「八幡神社宮司、杵淵さん」
「日枝神社宮司、土田さん」
私は困惑気味に挨拶を返した、全く私の仕事とは関係ない人達を紹介されたからである。そして更に困惑する事が告げられる。
『15年目の呪い』
と告げられた、私にはなんの事か全く理解できなかったと言うか。
「ふざけているんですか?」
そう言う他に言葉が出て来なかった。
しかし市長以外の3名は神妙な顔をこちらに向け、代表として郷土資料館館長田辺さんが口を開く
「至って真面目です、もともとこれは予測されていた事なのです」
「塚田さん貴女は五泉市が合併した年を覚えていますよね?」
「2006年だったかと記憶しておりますが」
「そうですそれから2021年つまり15年です」
「既に年明けからの異常なまでの五泉市での大雪これは始まりです」
「ですからそれと呪い何てものがどう関係するんですか」
「市町村合併により歪んだ土地神の力が衰えて来ていたのです。」
「土地神の力がしっかりと根付いて入れば様々な厄から護ってくださいます。しかし…」
そこまで聞いて横にいる二人の宮司を横目で見ると、顔色が悪い、何か嫌な予感がする。
「仮にですよ、仮にその話を真に受けたとしてですよ?」
そう言って私は続けた
「私はそう言う祭事ごと?と言うのは詳しくないのですが必要な事じゃないんですか」
「もともと合併前は村松町と五泉市、二人の神様がいた事になりますよね?だったらどっちかの神様が居なきゃおかしくありませんか?」
田辺さんは俯き二人の宮司を見ながら
「確かに村松町と五泉市二人の土地神様がいらっしゃいました」
「いました?」
「はい」
まさか聞かなければ良かったと思ったが既に遅かったようだった。
「今この市には土地神様はおりません」
「市町村合併後から年々と少しずつですが、その影響は出始め当時から数えて15年も土地神様が居なければ、その土地には厄が訪れましょう」
そこまで聞いて私は
「市長こんな話しを信じてるんですか?」
「子供騙しにも程があります、すみませんが部署に戻らせていただきます!」
「塚田君聞いてくれ、そしてその目で見てくれ」
市長は静かにそう言い私を市役所の隣にある五泉市中央病院へと連れて行き信じられないものを見せた。
あれ?着信履歴あったのか、雪降ろしで痛む腰を温めながら履歴を見る
【五泉市役所 塚田】
見た瞬間背筋が寒くなる、俺何かしたっけ?何もしてないはず、どうしよう?折返す?無視する?
まあ、無視は不味い絶対に不味い今何時だ?16:15か市役所はやっている時間か、しょうがない電話するかと思いもう一度着信履歴を見た
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
うん絶対なんかやらかしてる、何でこんなに着信履歴あるの?
ヤバい大人しく慌てず早急に電話かけ直さないと大変な事になる。どうしよう悩んでいると携帯がなった
【五泉市役所 塚田】
物凄い勢いで電話に出る
「もしもし五泉市役所の塚田ですが八神健さんですか?」
「電話に出られず申し訳ございませんでした!」
「実は私共の方から八神さんにお願いがありまして、明日市役所に来てください。」
何だろうお願い?来てください?
「電話じゃ駄目なんですか?」
「はい、今日はもう閉庁ですので明日必ず朝来てください」
どうも何時もと調子が違う何というか声が怖い
「わかりました歩いていくので時間掛かりますけど良いですか?」
「8:30開庁ですので」
「わかりました開庁時刻に伺います!」
「それでは失礼致します」
通話が終わった、やけに声が怖かった普段はもう少し優しいんだけど。お願いか…何か悪い事やった訳じゃあ無いって事なのか?
気にはなったが雪降ろしのせいで疲れていたこともあり、そのまま簡単な夕食を食べ熱い風呂に入りそのまま眠った。
電話が終わった、市長や郷土資料館館長そして宮司の二人と今後について話したのが正午、そこから人選を行い彼に決まった。
やるやらないでは無い、やらせる拒否権は認めない。
出なければ五泉市は厄に覆われる、既に始まっている大雪?そんなの大した事じゃないもっと最悪な事が起きる。
八神健、別に彼でなくても良い代わりはいくらでも居る、いや正確には彼がドンナ事になったとしても代わりはいる。
明日、彼は恐らく時間通りに来るだろう。告げる私が聞いたことを、馬鹿にするだろうだが、ならば見せる今日私が見て恐怖した物を…
1月28日
朝6:30
寒い布団から出たくない、なのに目が覚めてしまう約束の時間に間に合わせる為には、1時間前に家を出ればいいか。
ストーブに火を付けコーヒーを飲みながら昨日の電話の事を思い出す、お願いそして来てください。
ちょっと怖い声だった。
外を見る鈍色の空、雪は降っていないこれなら余裕で歩いて行ける。どうせなら道中にある、すぎ家で朝食セット食べてから行こうか。そうしよう少し気持ちが上がって来た、俺は出掛ける仕度を整えた。
思ったより雪は積もっていなかった、道中朝食セットを食べてゆっくり歩いても余裕があった位だった。
8:20
10分前には到着していた、幸い市役所のホールはもう空いていた中に入り時間を潰そうとした所に彼女、塚田さんが来るのを分かっていたとばかりにその場にいた。
「おはようございます」
「おはようございます」
挨拶を交わす、やっぱり様子がおかしい。
「塚田さん、昨日のことなんですけど何ですかお願いって?」
まどろっこしいのは面倒くさい用件を聞いてさっさと帰る何時ものパターンで行けると思ったが
「こちらへ」
後に付いてくるように促される
「いつもの場所じゃないんですか?」
「こちらへ」
小会議室と思われる場所に案内された。
塚田さんは開口一番
「あなたは神を信じますか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます