【episodes8】溢れる言葉


喜びの告知から数週間後、私は別の涙を流していた。


「ママ、あなたを一人で育てる自信ないよ…。」


お腹を撫でながら私はそう呟いた。



前夜、夫と些細なことで喧嘩をしたのだ。


もう駄目かもしれない。

そう思うほど険悪な空気の中、朝を迎えた。



それからどれくらい時間が経っただろう。



私は腹痛と不正出血の症状を覚え、再び産婦人科の診察台の上にいた。


「心音が確認出来ない。流産の可能性があります。」


セカンドオピニオンで他院を受診しても回答は同じだった。



溢れる喜びに心が躍った場所で、私は我が子の死を宣告されたのである。



初期の流産は、自然発生的なものが多い。


誰のせいでもないことは理解わかっていた。



「ごめんね。」


頭では理解っているつもりでも私の口からは自然に言葉が溢れる。


「ごめんね。産んであげられなくてごめんね。」

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