【episodes6】青と赤
残された私たちは伴ってソファー座り込む。
「あの、お母さんすみませんでした。」
再び彼が頭を下げる。
「あなただけのの責任じゃないわ。娘も注意が足りなかったのね。」
そう言って彼を見ると、瞳から涙が溢れていた。
「すみませんでした。すみません。」
青白かった顔が見る間に赤くなっていく。
俳優の斎藤工くんによく似た彼が娘の安否を案じ泣きじゃくっている。
避妊の有無を聞くと数回直に肌を触れ合うことがあったと言う。
「お互いに若いので精子も卵子も活発だから妊娠したんだね。言っている意味わかる?」
彼の顔を覗き込むと涙と鼻水でグチャグチャになった顔を縦に振る。
私が彼にそう訊ねたのには理由があった。
彼は3人兄弟の長男で下に妹と弟がいる母子家庭で育った。
私も離婚をし娘を一人で育てていた時期がある。
3人もの子供を女手一つで育てることがいかに大変かを熟知していた。
日々のことに追われ、長男の性教育をゆっくりしている時間など取れないでいるのではないかと思ったのだ。
「好き同士なんだし年頃の男女だもんね。肌を重ねちゃいけないなんて言わないよ。だけど避妊は大切だね。例え中じゃなくてお腹に出したとしても妊娠の可能性があるのはわかる?」
そう言うと彼は小さく「ハイ…。」と答えながら頷いた。
「もし、責任が重かったらパパと私で娘のことをみるから別れてもいいよ。」
そう告げると彼は、手のひらで涙を拭いながら「いえ、別れません。近くにいさせてください。」そう言って病院の床を見つめた。
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