【episodes3】小さな命
「お母様はこちらでお待ちください。」
ピンク色の白衣を着た看護師さんに指し示されたソファーに腰を下すと診察室に吸い込まれていく娘を見送った。
程なくして覚悟を決めた表情で娘が戻ってくる。
「ママ、同意書書いてくれる?」
子宮外妊娠だった。
正常な場所に着床していれば今頃は小さな命が育っているところだ。
だが、命の種は思わぬところに不時着してしまった。
あと数日処置が遅れていたら母体である娘の命も危険だったそうだ。
人の命は永遠ではない。
生死の狭間は、いつ何時、誰の元に訪れるかわからないのである。
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