夜風の励まし
夜の散歩は楽しい。
暗いはずなのに、真っ暗な部屋から外に出れば、月明かりで明るく感じる。
夏でも風は冷たく吹いていて、不思議と元気が出てくる。
冷たいはずの風からは何故かと、心温まるような優しさを感じる。
まるでシルクのような手触りで吹いてくる風は、自分を励ますように触れてから通り過ぎていく。
そんなことを思っていれば、自然と温かいものが頬を流れていった。
ぼろぼろと溢れ出て止まる気配のないそれは、自分の中にたまっていた熱を出そうとしているようだった。
今までずっと1人で抱え続け、誰かに打ち明けることさえなかった。
臆病なまま耐えてきた全てが、吐き出されるように溢れていきそうな感覚が胸の奥で熱く燃えている。
耐えきれずに夜空を見上げた。
全く見えない星や月。
それでも見たかったのだ。
今こそ、心の底から元気に笑えそうな気がしたから。
自分は未熟でも、前を向くことはできる。
どんなに絶望しても、苦しんだとしても、自分さえその気になれば。
だから、今日も外のいい香りを全身にまとい、風に吹かれながら夜空を見上げる。
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