第139話 わし 親父になる

     〜〜〜わし私室〜〜〜


カシム「マルス様!!レガシイ大帝国がダム建設を容認しました」


わし「え?マジか?意外じゃな」


カシム「えぇ…意外でしたね、今度レガシイ大帝国の使者が来るみたいですよ」


わし「逆に困ったのぉ…軍事侵攻しようと思ったけど、軍隊を連れて行きにくくなったな」


カシム「どうします?」


わし「じゃあ民間企業から公募を募ってレガシイ大帝国に派遣するか、普通に公共事業しようじゃ無いか」


カシム「信用出来ますかね?」


わし「まずは信用する事から始めないと何も進まん、裏切れば国際的な信用を失うし、それこそ大義名分を持って軍事侵攻する、我が国はそれだけの求心力と発言力と軍事力もある」


カシム「ま…確かに」


バン!!


アリア「マルス様!!」


わし「なんじゃ?」


アリア「カレン様が破水しました、お子様が産まれますよ」


わし「おお…そうか」


アリア「そうかって…嬉しく無いんですか?」


わし「嬉しいが、男はこういう時はどうすれば良いか分からんもんじゃ」


わしが産むわけじゃねーし、前世で何度も経験してるしな


アリア「さぁさぁ行きますよ!!」


グイグイ…


わし「分かった分かった」


   〜〜〜宮廷内 医務室〜〜〜


医師「マルス様、立ち会いますか?」


わし「いや…何も出来んからな」


知識としてはあるが、経験は0だしな


医師「では、我々にお任せ下さい」


わし「うむ…任せた」


アリア「なんか、緊張してきました、少し怖いです」


わし「そうじゃな…何も出来ない、もどかしさがあるな」


アリア「マルス様が指摘して産婦の死亡率が大幅に改善された…なんでしたっけ?」


わし「産褥熱か?」


アリア「それですそれ!!人の手に菌がいっぱい付いてるって良く知ってましたね」


わし「ま…ググレカス神だな、むかしセンメルヴェイスと言う医者がいたのじゃ、当時の医者は手洗いもせずお産をしていたから、ばい菌が膣内や子宮内に侵入して、結構死ぬ事があった」


アリア「今じゃ菌がいるのは常識になってきてますもんね」


わし「センメルヴェイスは、手洗いをしてお産をする助産師と手洗いしない医師との間で3倍もの産褥熱の差がある事に注目し統計を取って論文を発表し、その後にセンメルヴェイスの手洗い法で死亡率を1パーセント未満にまで下げられる科学的な証拠を数多く示したな」


アリア「めでたし、めでたしですね」


わし「めでたしにはならんかった」


アリア「え?」


わし「菌の存在が分かってない当時の医学界に受け入れられず、むしろ彼に怒りを示したり嘲笑したりする医師さえいた、そしてセンメルヴェイスは神経衰弱に陥り、精神科病棟に入れられ、ここで衛兵から暴行を受けた際の傷がもとで、47歳にして膿血症で死去した、ま…何らかの指示で殺されたが正解に近いかもな」


アリア「えーーーーー!!ひどすぎません?」


わし「逆にお前が医者だったとしてみろ、センメルヴェイスを認めてしまえば、医者のせいで何人も産婦を殺した事になるじゃろ」


アリア「そうですけども…」


わし「権威のある人間は間違えを中々訂正出来ない、権威を根幹から揺るがす事になるからな、間違えた期間が長ければ長いほど訂正出来ん」


アリア「なんとなく気持ち分かりますね」


わし「その精神状態をセンメルヴェイス反射とも言う、お偉いさんのジジイ共に多いな」(笑)


アリア「最高権力者のマルス様に正しいと言われたら医者も文句言えませんもんね」


わし「ま…この国ではセンメルヴェイスの様な悲劇は起こらないじゃろ、わしは間違ってれば、すぐ訂正するしな」


アリア「マルス様が間違ってる事何て無いですよ、その血を受け継いだカレン様の子供に無事に産まれて欲しいです」


知識によって間違う確率が低いだけだ…知識量(記憶)が思考に繋がるだけじゃしな


わし「そう言えば、アリアも妊娠したとか騒いでたな」


アリア「う…勘違いかも…どうしたら妊娠しますか?」


わし「さぁ?運じゃろ、あんなの」


アリア「ググレカス神は知ってるんじゃ無いですか?まさか!!わざと妊娠しない様にしてるとか!!」


うわぁ…うぜー


わし「まぁ落ち着け、非科学的じゃが麦芽が良いと聞いた事はあるな、ビールとか適量なら気分もリラックス出来て良いんじゃない?」


アリア「やっぱりあるんじゃ無いですか!!」


わし「非科学的と言ったじゃろ!!」


アリア「なんか、そんな気がしてきました、妊活が成就するビール神ニンカツを作り信仰します」


ビール神とか(笑)…あんのか?古代メソポタミアで聞いた事ある様な無いような…確か名前は…なんだっけ…忘れた…


わし「好きにしろ…」


静寂な廊下に響き渡る


     ニャァ…ギャア…ギャァ…



アリア「猫の喧嘩ですかね?」


わし「アホか産まれたみたいじゃな」


アリア「うわぁぁぁ…なんか感動します」


バン!!


医師「マルス様!!元気な男の子です!!おめでとうございます!!」


わし「おお…王子か」


アリア「良かったですねマルス様!!」


医師「カレン様に会いますか?」


わし「うむ」


アリア「私も行きます」



わし「大丈夫か?」


カレン「流石に…しんどかったですね…」


わし「男は出産の痛みには耐えれんらしいからな、とにかくご苦労様」


アリア「カレン様!!おめでとうございます!!」


カレン「なんでアリアちゃん泣いてるの?」


アリア「なんか感動しちゃいまして、赤ちゃん可愛い…」


わし「可愛いと思う様になってるからな」


カレン「名前はどうしますか?」


わし「マルクス王国の慣例で子供にはマとルを付けないと行けないみたいじゃ」


名前で人生なんか変わらんがな


カレン「マーシャルとかどうですか?」


わし「ほう…良いな、ではマーシャルにしようか」


アリア「マーシャル王子!!良いですね!!小さな弟が出来た気分です」


カレン「ふふふふ…ふぅ…」


わし「とりあえずは、ゆっくり休むのじゃ」


カレン「そうですね、そうします」


子供か…子供はダイヤの原石だ、磨き方は知ってる


わしは転生前に4人も育てたからな…


こうしてマルクス王国に世継ぎが産まれるのであった



次回に続く…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る