第127話 わし からの御醜儀

    

   

  〜〜〜サンアンドムーン国〜〜〜


ツキノ「困りました…マルクス王国のマルクス建ての国債が1000億マルクスもあります、固定為替相場制なので、タチ悪いですね」


ミストリカ「えええええええ!!いきなり借金まみれじゃ無いですか!?今のレートだと10マルクスがだいたい30ムーンだから3000億ムーンですか…」


タクト「外貨建て国債は返さないとな、自国通貨建てと違ってマルクスで返せって言って来る」


ツキノ「軍事政権の時に大量に借入れしてるとは…」


ミストリカ「でも自国通貨建ての国債は破綻しないんでしょ?ムーンを発行して返して行けば良いじゃんか」


タクト「お前は新興国で超弱小国のムーン国債を金出してでも欲しいか?」


ミストリカ「え…まだ弱小国で怖いから欲しく無いけど、でも中央銀行に国債を引き受けさせれば良いんじゃないの?」


タクト「固定為替相場だとそうはいかない、ムーンを発行してマルクスを買うとムーン安になる、だが固定為替相場だと、貸す方のマルクス側は問題無いぞ、固定だからな」


ミストリカ「確かに…弱小国でも安心して買うわね」


タクト「そう言う事だ」


ミストリカ「どう言う事?」


タクト「例えば、ムーンの価値が今より暴落しても、固定相場だろwww早く返せよwwwwとか言われて、さらにムーンを発行してマルクスに両替えして返済して行くとムーンの価値がさらに低くなり通貨危機になる」


ミストリカ「通貨危機??」


タクト「固定為替相場制を維持するには貿易収支(厳密には経常収支)黒字分の外貨を買って外貨準備を積み上げする、赤字分は外貨準備金を取り崩して、自国通貨を買い戻すんだ、すると為替相場が固定されるだろ」


ミストリカ「固定為替相場制は政府が為替に介入するのね、それで貿易赤字が続いて外貨準備が無かった場合はどうするのよ」


タクト「外貨準備が無くなったらマルクス王国からマルクスを借りてムーンを買い戻す」


ミストリカ「え…外貨建ての借金がまた増えちゃうじゃない」


タクト「それか固定為替レートの引き下げだな、10マルクスで60ムーンとか」


ミストリカ「やっば…いっぱいムーンを発行しないと…」


タクト「赤字が続けば間違い無く緊縮財政して輸入を減らして貿易赤字を減らせと言って来るだろうな」


ミストリカ「詰んでるじゃん!!」


タクト「自国通貨は発行出来てもマルクス通貨は発行出来ないからな、マルクスでムーンを買い戻せないから固定相場を維持出来なくなる」


ミストリカ「ん?じゃあ固定相場制やめちゃえば?」


タクト「問題なのはサンアンドムーン国は多くをマルクス王国の輸入に頼ってるからな、ムーン通貨が暴落すると輸入品が買えないから供給量不足で物価が大高騰する」


ミストリカ「うーーん…難しい…」


タクト「お前がマルクス王国で1台100万マルクスの車を作って輸出して売れたとする、受け取るのはムーン紙幣だお前はどうする?」


ミストリカ「受け取ったムーン紙幣をマルクス紙幣に替えるわね」


タクト「それが多ければ多いほどどうなる?」


ミストリカ「ムーンを売ってマルクスに替えるから…ムーン安マルクス高になるわね」


タクト「だから貿易赤字で固定為替相場だとムーンの下落圧力が常に掛かる」


ミストリカ「じゃあ軍事政権の時の国債とか払うかボケと言えば良いじゃない」


タクト「デフォルトか、ここぞとばかりに内政干渉して来るぞ、ツキノ大統領には国家運営は出来ないとな…クビだクビ」


ミストリカ「どどどどどうすんのよ!!」


タクト「自国通貨建て国債を発行してても、固定為替相場制は破綻する事もあるからな、ま…何とかなる」


ミストリカ「ほ…本当に?」


タクト「特別会計にして分割で積み上げが良いが、簡単に言えば3000億ムーン分国債を発行して中央銀行に引き受けてさせて、3000億ムーンで1000億マルクス返済すれば良い、3000億ムーンの国債を永久国債にするか100年債にするとかな、これで未来永劫借金のままで良いしマルクス王国に金利も取られない」


ミストリカ「良いじゃない!!それ」


ツキノ「…それは今は無理ですね」


タクト「そうだ、それには条件がある、自国の供給力を十分に高めてから3000億ムーン発行してマルクス王国に返すだな」


ミストリカ「あ…そうかムーン通貨安になっても、輸入に頼らず供給量が足りてれば国民にはムーン安とか関係無いもんね」


タクト「そうだ、さっき説明した通り供給力が低ければ3000億ムーンも発行してマルクスに替えて返すと超ムーン安になって輸入品が買えないから物価がハイパーインフレとまでは言わないがスーパーインフレする」


ミストリカ「具体的にはどうすんのよ」


タクト「貿易黒字にするか供給力を高めて輸入に頼らなくても良い経済にして変動為替相場制にするだな」


ツキノ「どちらにせよ自国の供給力をまず高めます」


タクト「ま…1000億マルクスのお小遣いと思って食料増産に自国製品の開発だな、電子部品と大型航空機の生産開発に積極投資だ、後は外交政策だな」


ツキノ「外交ですか…他の大国と繋がるとかですか」


タクト「そうだな、レガシィ大帝国や極東とか、さらに東に超大国がある、地理的には極西になるのか」


ツキノ「最近噂のアガラス連邦ですか」


タクト「マルクス王国が協力を求めた時がベストだが、大型航空機に目を付けた大国が擦り寄って来た時もチャンスだな」


ツキノ「そこで安全保障と引き換えに変動相場制の交渉ですね」


タクト「ま…そうだな、貿易黒字になれば、固定為替相場でも良いけどな、それに通貨安は輸入には不利だが輸出には有利だったりする、自国の生産品が売れやすくなるし、人件費も安いから企業を誘致しやすいし、観光客も来やすくなる」


ミストリカ「電子部品と大型航空機…あんたがめちゃくちゃ儲かるじゃん!!」


タクト「わはははははははバレたか」(笑)


ミストリカ「ツキノ様!!殺しましょう」


タクト「殺されるのか、じゃあマルクス王国に引き上げちゃおうかな?大量の失業者問題にいきなり直面するな」


ミストリカ「ほんと悪魔ね…」


ツキノ「他に主力産業はありますか?」


タクト「他には車かな」


ツキノ「車ですか…先行してるマルクス王国に勝てますかね?」


タクト「ま…やり方だな、勝算はある」


ツキノ「これから伸びる市場とかは?」


タクト「これからならテレビだな」


ミストリカ「てれび?」


タクト「今はラジオから音が出てるだけだろ、あれが人も見える様になる」


ミストリカ「マジ!!!???」


タクト「ああ… 電子銃から発射された電子をコイルの磁力により、自由に曲げて、けい光面に当たって光る技術を使えば可能だな、確かブラウン管とか言ってたか」


ミストリカ「凄いじゃない!!ちょっと見直した」


タクト「エッジ電子機械からパクッた」


ミストリカ「前言撤回」


タクト「ここは他国だからな、特許も無い、基本中の基本だ」


ツキノ「良い所を盗んで何が悪いのかしら」


ミストリカ「あががががががが…」


タクト「パクッても独自路線で進化させれば良いだけだ、電子部品に大型航空機に車にテレビで、目指せ貿易黒字だな大統領様」


ツキノ「頑張ります!!」


    

    〜〜〜わし 私室〜〜〜


カイン「サンアンドムーン国に駐屯してる兵を順次引き上げさせますね」


わし「うむ…そうしてくれ」


カイン「旧式の銃や砲は供与で良いんですか?」


わし「わしからの御祝儀じゃな」


カイン「分かりました」


カシム「御祝儀と言えば外貨建て国債の償還が9年後ですけど返せますかね?」


わし「そりゃ、ツキノの政治手腕にかかってるじゃろ」


カシム「もっと外貨建てを増やして雁字搦めにしても良かったのでは?」


わし「サンアンドムーン国の存在意義は緩衝地帯じゃからな、そこそこ強く無いと困る」


カシム「確かにそうですね、固定為替相場制ですか、考えましたね」


実際に1998年にロシアが財政破綻(デフォルト)したからな、ロシアは自国通貨建ての国債だが、対ドルの固定為替相場だったからな、その場合は貿易赤字が続けば外貨準備金が必要になるから実質ドル建てとなる


わし「いずれ変動為替相場制にしてくれと言って来るじゃろ、タイミング次第で」


カシム「どう対応するんですか?」


わし「タイミング次第じゃな、例えばラコール国と揉めた時とか、わしが協力を求めた時とか、ま…色々とあるじゃろ」


多くの国民は気付いて無いだろうが、変動為替相場でも政府は為替に介入出来る


例えばアフリカに10兆円の支援とかな、日本円を発行してドルに替える(アフリカに円で渡しても使えないから基軸通貨のドルに替える)つまり円を売ってドルになるから円安に誘導してるのじゃ


こう言うのが理解出来ればFXでも…ゲフンゲフン…


さて国際競争力をもっと高めて経済覇権国家を目指すか…


次回に続く…


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