第102話 わし とカインの追憶

  

  〜〜〜マルクス王国 小都市〜〜〜



カイン「マルカス王子!!どこですか!?」


マルカス王子「ここだカイン…騒ぐな見つかる」


カイン「懇意にしてる都市長官がまさか裏切るとは…ヨミの奸計と気付かず、すいません」


マルカス「よい!!とにかく逃げる事だけ考えよう」


カイン「森を抜けて王都に戻りますか?」


マルカス「ヨミの事だ、森にも兵を配置してると思う」


カイン「小都市視察の兵も全員ヨミの手の者とは」


マルカス「こんな所で僕は死ねない…小都市の貧しさは異常だ…」


カイン「命に替えても守ります」


マルカス「あはははは、お前が死んだら、忠臣が居なくなる、その場合も国が終わったも同然だ」


カイン「何をおっしゃいますか!!英雄王のマルクスⅢ世の生まれ変わりと言われてるマルカス様が居れば、国の再興なぞ余裕でございます、あと私の腹心のアベルも育っていますし」


マルカス「だと良いけどね…決めた、やはり森を抜ける!!もう暗くなるし、森を抜けトレビア川に出て北に向かい王都を目指す」


カイン「分かりました、私もその案で良いと思います」


マルカス「愛馬ブケパロス 頼んだぞ」


カイン「必ず王都までマルカス様を運ぶのだぞ」


ヒヒィン…ブル…


マルカス「久しぶりに早駆け勝負だねカイン」


カイン「はははは、私は国王直属騎士団の団長ですぞ、負ける訳には行きませんな」



「いたぞ!!国王の謀叛人のマルカスだ!!」


「追え!!追え!!」



マルカス「行くぞカイン!ブケパロス!!はっ!!」


カイン「はは!!」


仄暗い中を駆けてく2騎…



    〜〜〜トレビア川〜〜〜



はぁはぁ…


カインとはぐれたか…ブケパロスご苦労様…ゆっくり進もう、随分暗くなったしね、逆にヨミを追い詰めるつもりで小都市の視察の話しに乗ったが、ここまで力を付けてるとは


        ガサ…



「居酒屋…とも」ボソ…



マルカス「王都本店」



        バサッ


カイン「追いつきましたか」


マルカス「ふふふ…なんだこの合言葉は?」


カイン「最近、よく通ってるんです、美味しいですよ、とも赤セットってのがあってですね、王都に戻ったら食べに行きましょう」


マルカス「ここまで来れば、大丈夫だろう、とも赤セットを楽しみにしている」


カイン「ははははは、もちろんでございます、しかし流石ですね乗馬もさることながら、ヨミの私兵も討ち倒しましたか?」


マルカス「3名ほどね…国民に手をかけるのは気が引けるけど」


カイン「情けは無用です、国民と言えど敵です…さぁ急ぎましょう、王都に戻り逆にヨミを糾弾してやりましょう」


マルカス「無論そのつもりだ」


やっぱり英雄王の生まれ変わりだ、必ず王都に戻す


カイン「北の街道は兵を配置してると思われます、このまま川沿いを北に向かいますか?」


マルカス「そうだね…」


カイン「分かりました」



マルカス「カイン…」


カイン「はい」


マルカス「この国を平定した所で、周りの大国との国力差は10倍…レガシィ大帝国に至っては20倍近い、僕は英雄王の生まれ変わりだと周りから言われているが、そんな自信は無いんだよ」


カイン「マルクスⅢ世の時も同じ状況でした、しかし英雄王は国土を20倍に広げ、アトラス大陸全土に覇を唱えましたぞ」


マルカス「あと一歩で潰えたけどね…人はいつまでこの殺し合いの螺旋にいるのだろう」


カイン「マルカス様がアトラス大陸全土を平定すれば、叶います」


マルカス「それが叶ったとしても、根本的な部分が変わらないと…盛者必衰で繰り返すと思うんだよ、本当にそれが正しいのか…最近分からなくなった」


カイン「何を弱気な…いつも言ってるじゃありませんか、アトラス大陸を平定して、国民全員が豊かで笑顔溢れる国にしたいって」


マルカス「そうだね…それを信じるしかないか」


カイン「マルカス様はマルス様をどう思いますか?」


マルカス「可愛い弟だ、優しくて良い子だよ」


カイン「凄い懐いてますもんね、私が鍛えても?」


マルカス「ははははは、マルスは虫も殺せない優しい子だぞ、学問の方が向いてるよ、願わくば平和な時代に生まれて欲しかったけど、僕がマルスに剣を持せない平和な世界を作るよ」


カイン「そうですね」




「居たぞ!!あそこだ!!」


「ヨミ様に知らせろ!!トレビア川に逆賊カインと謀反人のマルカスがいると!!」



カイン「ちぃ!!しつこい!!どれだけ兵を投入してるのだ!!私が抑えます、今の内にお逃げ下さい!」


マルカス「し…しかし!!」


バシッ!!


カインがブケパロスを叩く…


カイン「御武運を…」



ヒヒィィィン!!


ブケパロスが闇夜を走る…


マルカス「カインこれは命令だ!!必ず生きろ!!死んではならんぞ!!」



「追え!!マルカスを追え!!」


「北だ北に行ったぞ!!」


カイン「ははははは!!死ねない理由が出来てしまった、ここは通さん!!さぁかかってこい!!」



     〜〜〜川沿い〜〜〜



はぁはぁ…もう少しで王都だ…ブケパロス…もう走れないだろ…離してあげる、好きな所にお行き


ヒィン…


マルカス「僕はもう大丈夫だよ、じきに夜が明けるし、王都まで歩ける、よしよし…」




「残念でしたね王子様♡」



マルカス「誰だ!!」


ヨミ「ヨミでございます、わたしが直々に来ましたぞ…殺しにね」


マルカス「ヨミよ何が狙いだ!!兄上を手にかけたのもお前だろう!!」


ヨミ「この国は終わりです、大国の間で決まってるんですよ、聖カトレイアとウゴン王国の穀倉地帯にしてレガシィ大帝国とのバランスを保つ為にね、後は、わたくしが治めて差し上げます」


マルカス「くだらない野心か!!卑怯者め!!」


ヨミ「わーはははははは!!卑怯者?歴史書に謀反人と書かれるよりマシです…殺れ」


兵にぐるりと周りを囲まれる…兵数は100を数える


マルカス「こ…こんな所で!!終わらない!!」


ヨミ「英雄王様、せいぜい頑張って下さいね♡」


マルカス「カインめ許さん!!」


ヨミ「カイン?気でも触れましたか?わっははははははははははは」




    〜〜〜マルクス王都〜〜〜



「カイン様とマルカス王子様が南東の小都市で謀反を起こしたらしい」


「知ってるよ!!それに謀反人に様とか付けるな!!衛兵に連れて行かれるぞ」


「そうか…カインは捕まり、マルカスは殺されたみたいだ…」


「あんなに聡明なマルカス様に勇猛なカイン様が謀反とは…」


「お前だって様付けてるじゃないか!!」



「おい!!あ…あれ!!謀反人のカインが兵に連れられて来たぞ…」


「ボロボロじゃ無いか…目が死んでる…」


「その後ろは磔にされてるマルカスだ…ひでぇ…まだ15歳だろ…」


「どうなるんだこの国は…病に伏せってる王と、冴えないマルス王子様か…それにマルス様は、まだ10歳になったばっかしだし」


「カインに石でも投げとく?」


「なんかそんな気分にはならない…」


「同感だよ…」





 次回に続く…



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