第86話 わし 民主主義を語る

   〜〜〜マルス自由都市〜〜〜



タクト「お前ら、エッジ重工やエッジ電子機械の優秀な技術者を金で引き抜いて来い、あと潜入して色々と技術や知識や設計図も盗んで来い」


従業員「はい!!分かりました」


ミストリカ「せこいわね、盗むとか犯罪じゃない」


タクト「パクった方が早いだろ、1から技術開発とか時間も金も掛かりすぎる」



ガチャ



ショウ「兄貴!!ツキノさんに会いたいって使者が何回も訪ねて来て、視察に出かけてるから居ないって追い返してましたが、今日も来ましたぜ」


タクト「ツキノの正体を知ってる使者って言えば、ウゴン王国関連か、ツキノはどうする?」


ツキノ「会いましょう…」


タクト「暗殺の可能性もあるから、警備はちゃんとしろよ」


ミストリカ「ツキノ様は命に替えても守ります」


ショウ「では武器とか毒とか隠して無いか調べて、呼んで来ますね」



     〜〜〜5分後〜〜〜



ガチャ



ヂータ「お久しぶりですツキノ様…覚えておりますか?」


ツキノ「あなたは確か…ヂータ男爵ですか?極維党のハンザン侯爵の側近ですね」


ヂータ「はい…我々は現在、窮地に立っており、聡明なツキノ様が亡命政府を建国するとの噂を聞き、協力が得られるかどうかお聞きしたくて」


ミストリカ「虫の良い話ね!!あんた達がクーデターなんか起こさなかったら、ウゴン王国はレガシィ大帝国に乗っ取られなかったかもしれないのよ!!」


ヂータ「…いや…あれは国の行く末を憂いて」


ミストリカ「行く末を憂いた挙げ句に亡国にしてたら世話ないわね!!」


ツキノ「ミストリカ良いのです、それに私は聡明ではありませんし、国の上に立つ気もありません」


ヂータ「な…何故ですか?」


ツキノ「間違いなく、戦争の道具にされますもの」


タクト「戦争の道具になって良いじゃねーか?主権を侵害されて黙ってるとかバカだろ」


ツキノ「サンアンドムーン国は民主主義になると噂されてます、選挙で代表を選ぶ国になりますから、国民達で政治や戦争を決めれば良いと思います」


タクト「最近、民主主義の本を見たが、たぶんまとまらないな、民主主義は弱点が多い」


ヂータ「マルクス王国も支援すると聞きましたが」


ツキノ「レガシィ大帝国と新しく出来たラコール民主主義社会主義国とサンアンドムーン国は国境を接していてマルクス王国と戦争となれば、真っ先に紛争が起きる場所はサンアンドムーン国です、支援する理由は緩衝地帯として有用だからですよ」


タクト「こちらも都合よく利用すれば良いじゃ無いか?国力を上げて対等な立場になれば良いと思うけどな」


ツキノ「マルス王子に会って見ましたが、国民以外には冷酷で計算高い人って印象でしたね」


ヂータ「しかし我々はどうすれば…」


ツキノ「贖罪の心があるのならば、サンアンドムーン国に仲間を引き連れ亡命して、極維党を政治組織にして選挙で勝ち、国民の為に働きなさい」


ヂータ「そうですね…我々はマルクス王国を逆に利用してやりますよ!!ツキノ様、考えが変われば、直ぐに連絡下さい」


ツキノ「…………。」


タクト「ま…コイツは優し過ぎるから政治家とか戦争とか無理だわ、覚悟が足りない」


ミストリカ「偉そうに!!優しいって良い事じゃない」


タクト「そうか?個人レベルでも損する事の方が多いし、国ってなったら、冷酷な部分も必要だぞ、戦争になったら国民に死んで来いって言わないとダメだしな、自分で責任を取りたく無いだけだろ」


ミストリカ「そ…そうだけど…」


ヂータ「すいません…では…失礼します…」


ツキノ「お気を付けて」



     〜〜〜わし私室〜〜〜



ジアンビ「サンアンドムーン国がなかなか安定しませんね」


わし「カインやホウトクといった部隊を駐屯させて治安維持と突貫工事でインフラ整備してるけど、まだ出来たばかりだし仕方ないな」


ジアンビ「早く選挙とやらを行って、異国では当たり前の民主主義って奴がどうなのか見てみたいです」


わし「民主主義は超絶微妙だ」


ジアンビ「え?そうなんですか?」


わし「弱点をあげればキリがない」


ジアンビ「後学の為に聞きたいです」


わし「まず意思決定が遅い、衆愚政治、多数派の専制だな」


ジアンビ「意思決定が遅いのは、色々と議論されて、良い面もあるのでは?」


わし「平時なら良いが戦争や災害などの緊急事態には対応が後手後手になるな」


ジアンビ「確かに…でも衆愚政治はバカ国民が選んだ政治家はバカですが、国民が賢ければ良いんじゃ無いでしょうか?」


わし「政治家の質が国民の質だが、人間は不合理に出来てるからな、1例で言えば人間の特性で『損失回避性』ってのがある、例えば、大増税します、現在の国民は我慢して未来の国民に金を使います、とか言うと賢い国民でもキレる」


ジアンビ「確かに賢くても、人間って間違えますし不合理な部分ありますね」


わし「軍事を行使しろとか戦争はダメとか、金持ち優遇だとか労働者を保護しろとか、まぁ矛盾やワガママや不平不満を言いまくる」


ジアンビ「確かに…」


転生前の日本とか、戦闘機買ったら戦争する気かとか言ってるバカが多いが、国土防衛に必要だろうと、強襲揚陸艦や戦略爆撃機や大陸間弾道ミサイルとか他国の侵略に使う兵器を買ったら文句言えと…高い戦闘機を買う金あったら、金配れとか言ってるバカもいたが国土が焦土化したら、意味ねーだろと…国民にそう言う教育をしないから国民はアホにされてる、もちろん意図的にだがな


戦争や侵略はダメだが防衛や抑止力は良い事なのだ、ここを分かってない


わし「それに政治家は選挙に当選すれば、有権者の意見はどうでも良く、党の政策や方針に従うからな」


ジアンビ「た…確かに…当選すれば無視して良いですね」


わし「あと国民もバカだから、政府がコントロール出来ない、凶作やハリケーンや疫病とかの自然災害にもキレるしな」


ジアンビ「た…確かに…コントロール出来ないし、後手後手になりやすい部分ですしね」


わし「多数派の専制は、大多数の国民の意見が間違っていようと間違って無かろうと正しいとなる、国民もバカなら政治家もバカなので、間違えまくるな」(笑)


ジアンビ「た…確かに…」


わし「お前…さっきから確かにしか言って無いぞ」


ジアンビ「では良い所は無いのですか?」


わし「年代別の投票率によって恩恵が受けやすいのと、国民がキレたら、一応は対応する事かな」


ジアンビ「確かに…若者の投票率が高ければ、その世代を優遇しようってなりますし、対応してくれるだけマシですもんね」


わし「後は権力が小さい事だな、独裁者なら国民が血を流してクーデターを起こさないとダメだが、無血で政権交代出来る」


ジアンビ「支配者が暗君なら最悪ですね」


わし「いや最悪を間違ってる」


ジアンビ「どう言う事ですか?」


わし「無政府状態が1番最悪だ、社会を回したり社会を維持する支配者が居ない状態や状況が最悪だな、これは毎日戦争レベルで人が死ぬ、暗君独裁者でも支配者が居た方がまだマシだったりする」


ジアンビ「そう言われれば、支配者が暗君でも逆らわなかったら良いですが、無政府状態だと、犯罪者も取り締まらないし経済も政治も機能しなければ、社会が大混乱で常に死と隣り合わせですね…」


わし「わしなら三権分立させて超直接民主主義にする、議会も議員もいらん、4年に一回、国民全員参加の大統領選挙して大統領の任期は最大で8年だな、得票率が80%超えれば、任期を延長出来る仕組みとか組み込むかも」


ジアンビ「超?直接民主主義ですか?」


わし「その方が民意が伝わりやすいからな、国民全員が選挙に参加して国の最高権力者を1人決めて組閣させて、国の重要な政策や法案や憲法改正は国民投票で決める、最高裁判所に国民の40%の総意で不信任案を発動でき30%で直接国に立法の発議出来るとかにするかな」


国民が主権者で国会(立法)内閣(行政)最高裁判所(司法)の三権では無く、国民が主権者のまま(立法)内閣(立法&行政)、最高裁判所(司法)となる


ジアンビ「良いかもしれないですね」


わし「普通の直接民主主義も制度の構造が単純で、国民の数が非常に少なくても運用できるしな、直接民主主義では住民が当事者意識や主権者意識を持続させやすいし、意識高い系の国民で衆愚化しにくい」


ジアンビ「た…確かに…衆愚化しにくく、意思決定もそこそこ早いですね」


ジャン=ジャック・ルソーは直接参加型民主主義のみを「真の民主主義」と定義してた、わしもそう思うが、支配者側からすれば間接民主主義にしてエリート層を形成し国民全員バカの方が支配しやすい


わし「まぁ超絶微妙だけど、あんまり人が死なないから民主主義って良いんじゃ無い?ってのがわしの見解だ、わしが死んだら超直接民主主義にする」(笑)


ジアンビ「まだ死なないで下さいね!!」


わし「まぁ、わしは国民や国益を守る為なら、最終手段として戦争をするがな」


ジアンビ「…やっぱり仕方ない事ですよね…」


わし「そうならない方法はいくらでもあるが、愚かだからな人間は…降りかかってくる火の粉もある、なるべく事を小さく納めるしか無いのよ、国の主権を守るとはそう言う事じゃ」


ジアンビ「なかなか難しい問題ですね」



次回に続く…

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