第34話 わし 天地をひっくり返す

パドロ伯爵邸


わし「はぁぁ…ここの食いモンは美味いな」


パドロ伯爵「気に入って頂いて嬉しく思います、ここは港湾都市に近いので、珍しい交易品や暖かい気候で作物も良く育ちます」


わし「なるほどね、これから鉄道も開通するから、自由都市や王都の食卓も変わりそうだな」


パドロ伯爵「そうですね、日持ちしない食品もこれからは高速で運べますからね、ところで今日は、また変わった乗り物で来られましたな」


わし「自転車と言う、チャリンコと言う可愛い名称で売ろうかと思ってる」


パドロ伯爵「マルス様は博識だと聞いております、この自転車もマルス様発案ですか?」


わし「まぁ…そうじゃな」


実際は違うけど


パドロ伯爵「畏れながら突拍子も無い質問してもよろしいですか?」


わし「答えれる範囲であれば」


パドロ「実は天が回ってるんじゃ無くて、この星テラが回ってると思ってます、マルス様のご見識をお聞かせください」


わし「その通りだが、恒星を中心に回ってる公転速度は秒速30km自転速度は時速1500kmくらいのスピードで回ってるな」


てかこの星はテラって言うのね


ガタッ!!


カシム「そんなバカな!!」


カシムもアリアもカレンも、じぃっと床を見る


カシム「地は動いてませんよ…それに時速1500kmなら飛んでる鳥は回ってる方向に進んだ場合に永遠に着かないではありませんか」


わし「慣性の法則じゃ、それは分かるだろ、この地面も建物も我々も時速1500kmで動いてるからじゃ、飛んでる鳥は飛ぶスピード+1500kmじゃな、もし今、地が止まったら、物凄い勢いで吹き飛んで行く」(笑)


パドロ伯爵「やはりそうですか、最近、極東から来る船でその様な話しを聞いたので、しかしマルス様は何で知ってるんですか?」


カシム「そうですよ、失礼ですが証拠や証明は?」


わし「しょうがないな…」


ゴソゴソ……ゴト!





      テッテレー♫


     じゃいろすこーぷー




わし「これじゃ、これはジャイロスコープ、これに、まだ開発中のジャイロモーメントと組み合わせてジャイロコンパスが完成する、これを建造中の国の船に搭載する、ジャイロコンパスが地が回ってると証明出来るが、説明はめんどくさいから割愛したいが、まぁクソ長い振り子が有れば地が回ってる証明は出来るがな」


カシム「はぁ…」


わし「ジャイロコンパスの説明しとく」


カシム「お願いします」


わし「高速回転するコマ(ジャイロスコープ)が回転軸の方向を保とうとする性質と、自転する、この星テラの表面において回転軸を水平に保った場合にジャイロ効果のジャイロモーメントによりジャイロスコープの回転軸が、この星テラの地軸と平行に向く作用プリセッションを利用する」


カシム「サッパリ理解出来ません…」


わし「まぁ、そう言うもんだと覚えておけ、所でその極東の船とやらはどんなのだった、見た事のある妹のキュリアは10歳で記憶も曖昧だったのでな」


パドロ伯爵「私も1回しか見てないので…はっきりと記憶はしてませんが、左右に大きな車輪があり、帆はありましたな、蒸気の力で風が無くとも進むと」


ふむ…外輪船か…そして地動説が主流とは科学や物理学も進んでるな…我が国も開発を急がねば


パドロ伯爵「あとレールの敷設工事で直線上に野盗の根城があり、湿地帯で黒い池も点在してる場所がありましてな、迂回させようか迷ってるんですが、どうしましょうか?」


わし「何!!それは真か!!何処だそこは!!」


パドロ伯爵「どうしました急に?街道をもう5キロ南に下って西に行った所に森と湿地帯があります」


わし「今すぐ行くぞ!!」


パドロ伯爵「もう少しで暗くなりますし、野盗共も居ますので、明日にでも」


わし「明日はその噂の蒸気船がリバティ港湾都市に寄港するのじゃ、5日前に王都に連絡があり、日程を合わせて来てるのじゃ」


わし「時間が無い、あないせい!!」


黒い池か…きっとタール池タールピットだ


パドロ伯爵「野盗退治ですか?30人ほどで徒党を組んでますので兵を集めねば」


アリア「私1人で充分ですわ、一騎当千まで後970人」


わし「え?カウント式なの」


アリア「え?…違うんですか?」


わし「あ…もう…それで良いです」


アリア「ささ行きましょう♪」


ノリノリでカウント式で殺されるとか嫌だわ〜




急いで街道をチャリンコで南に進む、湘南爆走族もビックリのスピードだ


目的地近くの森


カレン「流石に暗くなって来ましたね」


カシム「本当に大丈夫ですか?怖いです…マルス様はそんなに野盗が憎いんですか?親でも殺されたんですか?」


わし「アホ抜かせ、金より素晴らしい物があるのじゃ、足元に気を付けろよ、沼にハマったら助けるのに苦労する」


アリア「ころそ♡ころそ♡ころそ♡」


こえーよ…


ここか…独特な匂いだ、アスファルトの懐かしい匂いが立ち込める、間違い無い…タール池だ


わし「よし分かった帰ろう」


カシム「良かったぁ…マルス様も流石に怖いんでしょう」


わし「見なくても分かる、匂いでな、その確認が出来れば良いだけだ、それが確認出来たから帰る」


カレン「確かに独特な匂いがしますわね」


わし「んじゃ帰るか」



      ガサガサ…


        ガサガサ…



野盗A「待ちな…」


野盗B「ひひひひ…金目の者を置いてきな、金次第で命だけは助けてやるぞ」


野盗C「もちろん女もな、暗くてあんま見えないが美味そうな女だな…可愛がってやるぜ、ひっひひひ」


わし「卑下た笑い方だな、お里が知れるぞ」


野盗A「何だと小僧!!」


バン!!バン!!バン!!


野盗A「熱っ!!…何だ?何が??いてぇ…」


わし「ふーむ…知ってたが 9mm弾ではストッピングパワーもこんなモンか、拳銃弾じゃ、なかなか死なないな」


バンバンバン!!


野盗B「ちょとっ、いてぇ!血が…何だよコレ!!」


わし「リロードする、カシム撃て」


カシム「あわわわわ」


バンバンバンバン!!!


わし「慌てるでない、胴を良く狙え」


最新の内燃機関で開発した回転式9mm拳銃だ


雷管式で回転式拳銃は発射機構も単純なので、設計開発して、とりあえず少数生産して護身用に用意した


アリア「でりゃぁぁあぁ!!一騎当千!!当千!!とうせんんん!!!」


カレン「ふふふ…楽しませてくれるかしら」


あ〜〜あ近接戦闘始まったよ


包囲されない様に、援護射撃しようか


あ…終わった…


カレン「仲間が来ると面倒です、引きましょうか?」


わし「いや待て、おい野盗くん、頭領を呼べ」


 ペチペチ…


野盗A「よ…呼ばなくても、も…もう来るぜ、俺たちは斥候だからな…こ…後悔するがいいさ…」


わし「んじゃ待つわ」


カシム「ママママ…マルス様、逃げましょうよ」


アリア「みなごろし♡みなごろし♡」


だから、こえーって


わし「と言うか、見てただろう、出てこい」



     ガサガサ…


       ガサガサ…



ゲルグオ「わははははは、若いのに只者では無いな、お前ら出てくるな…」


わし「まぁ話しは出来そうだな、若衆を、様子見でけしかけるとは感心出来んな、銃で撃たれた奴は治療してやれ、死にはせんと思うが、当たりどころが悪ければ死ぬぞ」


ゲオルグ「わはははは、おい、診てやれ」


わし「なぜ野盗などしておる?」


ゲオルグ「コイツらは全員奴隷か元奴隷だ、働きたくも無いクズの集まりで仕事から逃げて来た奴もいる、今じゃ街での悪さは厳しいが田舎では好き勝手やれる」


わし「いつまでも野党は続けられんぞ」


ゲオルグ「そう言う生き方しか出来んからな」


わし「そうか、では海賊にならぬか?、平時は漁師や貿易で儲けろ、暴れたくなったら海賊しろ、ただ…暴力行為に関しては、わしの管理下だがな」


ゲオルグ「只者じゃ無いとは思ってたが、坊主は何者だ」


わし「この国の王子だ」


ゲオルグ「やはりそうか、じゃあ話しだけでも聞くか」


わし「意外に信用があるんだな」


ゲオルグ「悪い噂は聞かんからな、奴隷に寛大だと聞く、海賊の話を聞かせてくれ」


わし「これから最新の海軍を作るが、極東の国や他国との交易で、向こう側が難癖つけたり揉めたりした場合に、報復として海軍が出ると戦争になるが、海賊だと知らぬ存ぜぬが出来る」


ゲオルグ「そん時は俺たちは切り捨てられるのか?」


わし「絶対に守る、平時は美味しい魚を獲ったり貿易しろ国同士でキナ臭い感じになったら暴れろ、全責任は、わしが請け負う」


実際にイギリスはスペイン戦争の時に海賊を雇ってたしな


ゲオルグ「わっはははははは、悪党だな王子さん」


アリア「無礼者!!マルス様に不敬である!!」


わし「アリア控えろ…」


野盗共「アリア…?あのアリア様か!?暗くて見えねぇ」


      ざわざわ…


ゲオルグ「え?あのアリアさんですか??元奴隷で最強女剣士の…ファ…ファンす」


わし「どうじゃ、この話しに乗らぬか?」


ゲオルグ「乗ります!!」


はやw


わし「じゃあ、今までの狼藉は不問にする、しかし民衆から奪った財産は返せ」


ゲオルグ「分かった、悪い話しじゃ無いし信用するぜ、どうせ、この先も未来は無いしな、暴れたい時に暴れたいが」


わし「暴れんなと言いたい所だが、他国との情勢次第だ、そうなれば舞台は作ってやる、強盗、殺人、強姦と好きにしろ、とりあえず義務教育を受けろ、海軍学校も創設してる、船が出来て操船出来るまで国費で給料を払ってやる、仔細は追って沙汰する」


ゲオルグ「国が海賊を作るとか、あんた、やっぱり悪党だわ」


アリア「マルス様に悪党とは不敬ですよ!!」


ゲオルグ「アリアさん…マルス様万歳!!」


アリアは奴隷に人気あるな…



   〜〜〜チャリンコでの帰り道〜〜〜


キコキコキコ…


わし「アリアよ、お前に、また新しいメリット見つけた」


アリア「本当ですか?マルス様の役に立って嬉しいです」


わし「人に打算もなく優しくするのは良い事かも知れんな、繋がりを生む」


カシム「私は今日確実に死ぬと思ったので、繋がりはリスクです」


わし「それもあるから人間は優しくて冷たくなる、繋がりは運の要素も往々にしてあるな」


ま…わしは見抜けるけど


カレン「どちらにしても退屈な人間関係じゃ無ければ良いですわ」


わし「確かにな…」



キコキコキコ…



次回に続く…

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