第8話 幸せいっぱい


「はぁ〜あっという間に8歳になっちゃった。」

そう気がつけば転生してから8年も過ぎていた。もう何回目の8歳だろうか。

「今回は何年生きれるんだろ。最後だと思うと憂鬱になってきた。」

今は夏休みで、前世の記憶がある私は宿題をあっという間に終わらせて暇を持て余していた。「時間があるとマイナスなことを考えちゃうな」とブツブツ言っているとママが声をかけてきた。

「何独り言言ってるの?今から買い物行くけど一緒に着いてきてくれる?」

「うん!お菓子買ってくれるんだったら」

「しょうがないなぁ〜一個だけよ」

この何気ない会話が幸せだった。

自分の今まで転生してきた中で一番心が穏やかかもしれないなと思っていたが、いや、違う。今までも素敵な家族に恵まれていたけど気づけていなかったのだ。

何度か転生しているうちに小さなことにでも感謝する心が持てるようになって小さなことでも幸せに感じれるようになったのかもしれない。

そう気づけることすら昔の自分では出来なかっただろう。

まだ8歳なのに着々と魂の消滅への心構えしていた。

そんなことを考えてる間に「もう着いたわよー」とママの声。


車から降りショッピングモールに入った。

「まずは今日の晩御飯の食材買うから手伝ってね」

「分かった。この後おもちゃ屋さんに行っていい?」

「いいわよ。でもあまり長居は出来ないわよ。晩御飯作らないとパパがおなかペコペコで倒れちゃう」

「うん!ちょっとだけ見るだけだから」

手伝いをいっぱいして買い物を早く終わらした。

そして待望のおもちゃ屋さんだ!

「ママはここで座って待ってるから見てきていいよ」

「欲しいものあったら買ってくれる?」

「それは値段次第かな笑」

「ありがとう」と言っておもちゃ屋さんに入っていった。

「まだ買うって決まっていなのに」とママの声が聞こえたがそんなこと気にしないことにした。


そしてお店の中をウロウロしていると今までに見たことないようなオモチャが沢山あった。どれも目奪われるような素敵なものばかりだった。前の人生の時からあるようなおもちゃも沢山あるが、明らかにおもちゃの質も良くなっているように見える。

そんな中に見覚えのあるパッケージを見つけた。

「これ!私が前世で働いていた会社のゲーム!」

そう前世で私が作っていたゲームが並んでいた。

そこにはゲーム本体とソフトがあった。何でも五感で楽しめて、その上ゲームの内容は異世界に転生という設定でオンラインで世界中の人と遊べるらしい。価格はセットで5万円。売れ行きも良さそうで安心した。すごく欲しかったがあまりにも高いのでお母さんにはねだれなかった。

とぼとぼと帰っていると

「いいのあった?」

「あったけど5万円もしたから諦めたよ。ヒーん」

「5万円!?すごく高いわね!どんなものなの」

一応ゲームの前に連れていって

「これが欲しいの」

「すごく面白そうね。もしかしたら今年のクリスマスにサンタさんがプレゼントで持ってきてくれるかもね?」

「でもすごく高いから。サンタさんも困ってしまうかも」

一応子供のような返事をした。中身は大人なのに。

何度も転生しているから子供の演技は上手になっている。

「それはクリスマスが来てみないと分からないわね。楽しみに待ってましょ!」

優しいお母さん大好き。

「うん!今年はとってもいい子でいれるよう頑張る」

そう言ってショッピングモールを出た。

家に着いてお母さんが晩御飯を作っているときにパパが帰ってきた。

「お帰りなさい。お仕事お疲れ様。いつもありがとう」

とママ。

「こちらこそ家事をいつも頑張ってくれてありがとうね」

とパパ。

そして軽くチューをした。

そう、これはママパパがいつも決まり事のようにしていること。

こっちまで恥ずかしくなるわ。と思いながらもラブラブな両親を見て嬉しくなる。

そして家族でご飯タイム。

今日の出来事を細かくパパに話した。

「そっかぁ〜クリスマスが楽しみだな。いい子にしてたら必ずパパじゃなくってサンタさんがプレゼントを持ってきてくれるよ」

パパって言ってるじゃんと心の中でツッコミを入れながら、クリスマスが待ち遠しくってワクワクしていた。


それからは毎日ママやパパのお手伝いを沢山して、学校でも友達に優しくしてとっても良い子でいられるように頑張った。


そして念願の12月24日。

「パパ、ママ!とってもいい子にしてたからサンタさんプレゼント持ってきてくれるかな」

「もちろんだ」「もちろんよ」

パパとママは合わせたかのように返事してくれた。

もうゲームは手に入れたものと思いながらも、前世の記憶が蘇った。


2度目の転生のとき

「犬さんが欲しいなぁ〜」

「じゃあ、サンタさんに可愛い犬さんをお願いしようか」

「うん!手紙も書いて枕元に置いとく」

「いい子にしてたらきっとサンタさんは願いを叶えてくれるよ」

「うん!いい子にする!楽しみだなぁ!トイプードルか柴犬がいいなぁ」

何て両親と会話していたのに次の日枕元に置いてあったのは犬のぬいぐるみ。それもブルドック。

「何でサンタさんは犬さんを持ってきてくれなかったんだろ?それも変な顔の犬さんだし」

「うーん?サンタさんは本物の犬さんだとは思わなかったのかもしれないね」

「でもぬいぐるみの犬さんもとっても可愛いね!」と焦るパパママの顔が忘れられない。

ぬいぐるみも嬉しかったが、正直ガッカリ感が半端なかった。

まぁ、その次に転生したのが犬だったのはサンタさんからのプレゼントだったのかもしれないとふざけたことを考えていた。


前世のことと今は関係ない!と言い聞かせて、楽しみ過ぎて眠気はなかったが、無理矢理目を瞑っていたら自然と寝ていた。


次の日、朝起きると大きなプレゼントが枕元にあった。

嬉しくって眠気が吹き飛んだのだった。





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