第7話 ゆずれないこと

犬人生を終えた私はまた閻魔大王の前にいた。

「お前か!また記憶を消さずに転生したから犬にしてやったのに人間の時よりも楽しみやがって」

「もしかすると犬の方が性に合うのかも笑」

「ふざけたことを抜かすな」

「もしかして次も犬ですか??」

「お前はつくづく運のいいやつだ。最後死ぬ時に人を救っただろう。あの善行のおかげで次は人間に転生できるぞ。それもすぐにだ」

「すぐに!!嬉しいような疲れるような」

「転生したくても出来ない奴もいるのだ。我がまま言うな」

そう、転生したくても出来ない魂は何百億といて、転生できるのはごく僅からしい。

「次は無理矢理にでも記憶を消してから転生させるからな。」

「ちょっと待ってください。記憶が消えると転生する意味がないのです。」

「ルールだからな。」

「今回だけお願いします。閻魔大王様の言うことをなんでも聞きますから!」

「なんでもか。次の人生が終わった時に魂も抹消するといってもか?」

「魂をですか?」

「そうだ!お前自身全てがなくなるのだぞ」

「…。」

「流石に無理だろ笑」

そういうと閻魔大王は大笑いをした。

「いえ。魂を抹消されても今回の転生は記憶を残したままにして欲しいのです。」

「うーん。そこまで意思が固いのか。そこまで記憶を残しておきたい理由は何だ?」

理由なんて簡単だ。昔からの夢であった異世界への転生だ。でもこのまま言ったら笑われるかもしれないと思いながら伝えた。

「異世界に転生したいから。今の記憶がなくなったら異世界に行った時の感動がなくなるから。」

「…。お前が思っているような異世界は実在しないぞ。あれは小説家のような人間が創った世界だからな。」

閻魔大王は真顔で答えた。

愕然としたが、

「そうかなとは思っていたけど、、、」

なんとなく分かっていたが泣いてしまった。

「そんなに異世界とやらはいいものか。人間がハマる意味がわからん。今までの人生も悪くなかっただろう」

「そう言うことではないんですよ。」

「どう言うことかサッパリだ」

「異世界がないんだったら、前世で作っていたゲームを完成をさせたいんだ。お願いします」

「うーん、そこまで言うなら今回は例外だぞ。」

「ありがとうございます!」

「まぁ良い。最後の転生を楽しむが良い。」

今度は嬉しくって泣いてしまった。

「全く、こんなに我がままな転生魂は始めてだ。だが、面白いやつだったな…」


いよいよ転生の時がやってきた。最後だと思うと悲しい気持ちとやり残しがないようにしようというやる気で胸がいっぱいになった。

今回も家族リストはなく、最後の転生ということで閻魔大王直々に転生する家族を選んでくれたらしい。閻魔大王直々とは一体どんな家族のもとに生まれるのだろうか。


転生して早一年が経った。家族は優しくて私が泣いても怒らずに優しく抱っこをしてくれた。

お母さんに抱っこされると凄く懐かしい気持ちになっていた。

優しい喋り方はどこかで聞いた覚えがあるような優しい声。

お母さんの名前は愛で、なぜだか前世のラブお母さんのことを思い出す。

気のせいかもしれないが最後の転生だから閻魔大王が気を利かせてくれたのかもしれない。


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