第5話 再び霊界へ
気づけば死んでいた私は霊界へと誘われ再び閻魔大王の前に立っていた。
「今回はちゃんと自殺もしないで生涯を生きたみたいだな」
「何のことですか?」
私は前世の記憶がないフリをした。
「そんな猿芝居で騙せると思ったのか?仮にもわしは閻魔大王だぞ」
「バレてたか。」
「あぁ、お前が転生した時から気づいていたぞ。前世の記憶を持って転生するってことはルール違反だ。転生する前に配っていた水を飲まなかったな!?」
「あれは後ろの人がぶつかってきて」
「まぁ今回のことは許してやるが次は必ず飲むんだぞ」
「…。」
「返事がないぞ!」
「こっちは時間がないんだ!お前の人生を振り返るぞ」
また目の前に自分の今までのしてきたこと全てがムービーのように流れてきた。今回の人生は無駄な殺生もしていないし自殺未遂もしていない。死んでしまった理由事故死だし、流石に今回は悪いこともしてないので天国行きだろうと思っていた。
「お前は地獄石積み階層行きに決定だ」
「何で!!?おかしいでしょ。何で地獄なの?それも石積みってどう言うこと?」
「何でって親より先に死んだら地獄行きって決まってるからな」
気づいたら地獄第6階層にいた。地獄第6階層は前よりかは綺麗な場所で川が流れていた。そこには鬼と小さい子供がたくさんいて、川の横で子供たちが必死で石をひたすらに積み上げている。
「おい、お前新入りだな。ここでは石を11個積むまで永遠に出れないからな」
「11個なんて簡単すぎる。11個積んだらまた転生できるの?」
「うるさい!お前の質問に答えてやるほど優しくないんでね」
そう言うと近くの大きめの石にドスっと腰を下ろした。
やることは簡単そうだが、周りの子供を観察していると10個目を積んだ瞬間に鬼に積んだ石を崩されていた。
「そう言うことか。閻魔大王もしょうもない罰を考えたものだ」
永遠にすることになるのかと心配になりながらも石を積み上げていった。
必ず10個目になると監視している鬼がやってきて崩してくる。
凄く腹が立って鬼に石をぶつけると、鉄の棒で叩きのめされた。
あれから何年、いや何十年立っただろうか誰1人として石を11個積み上げたものはいない。
その日は鬼の集会があったみたいでいつもより鬼が少なかった。周りの子供達とこっそり会話して助け合うことになった。
周りの子供達はかれこれ100年以上その罰を受けている。ここの世界ではこの石を積み上げる以外することがなく、皆心が挫けそうになっていたところに、新しい希望が生まれたのだ。
まずは10個目になると必ず鬼が来るから周りの子たち何人かでその鬼を止めようと言う作戦になり、まず女の子たち優先して石を積ませて残りの男の子たちで石を崩しにくる鬼たちを食い止めることになった。
「おい、準備はいい?みんな気づかれないようになるべく近くに寄ってきて。」
私が合図を送った。私は年長者ということもあり男の子たちに紛れて鬼を食い止める方に回った。
小さい女の子が息を合わせて10個目を積み上げた。それを確認した鬼たちが近づいてきた。
「みんな、足元に掴みかかれ」
その合図とともに子供たち大勢が巨大な鬼に飛びかかる。
「早く11個目を」
女の子たちは焦りながらも11個を積み上げた。
「やったー!みんなありがとう」
11個目を積み上げた瞬間に眩しい光が天から注ぎ始めその女の子たちは輝く天へと導かれた。鬼たちはまさか協力しあってくるなんて予想外だったのか凄く驚いたあと、私の方に寄ってきた。
「お前だろ!周りに変なことを言いって惑わせたのわ!」
「何のことかわかりません」
「うるさい!今までこんなたくさんの子供が一斉に11個積み上げたことなんてなかったんだぞ」
そう言いながら私が動けなくなるまで鉄の棒で叩いてきた。私の体はボロボロにちぎれ、この世界では体がすぐに再生されるが痛みだけは残る。
私は1ヶ月ぐらい動けなくって川の横でお腹をすかせながら寝転がっていた。体が痛すぎて動けなかったのだ。動けない私には監視の鬼も寄ってこなかった。それを利用してこっそり手だけ動かせるので少しずつ石を積み上げた。10個目に差し掛かったときに鬼が何かに気づいたのか近寄ってきていた。でもまだ距離はあったので痛い体を動かして11個目の石を乗せようとした。
それに気づいた鬼はこちらに猛ダッシュで走ってくる。
もう無理かと思ったが運よく11個目の石が上手に乗った。
「くそ!何で誰も監視してないんだ。あいつはまだ20年ぐらいしか罰を受けてないんだぞ」
私は悔しそうな鬼を見ながら大笑いをした。
「ちゃんと仕事しないとダメだよー」
鬼が腹を立ててまた鉄の棒で殴りかかってきそうになったが、天から輝かしい光が降り注ぎ暖かい光が体を包んで天へと導かれていく。
「また、転生できるのか。異世界は無理でもまたゲームを作りたいなぁ。後少しで完成だったしもしかしたら完成して発売してるかもなぁ」
光の向こうには閻魔大王がいた。
「運がいいやつだな。こんな簡単に罰が終わるやつはいないぞ」
「鬼がちゃんと私のことを監視してなかったんで」
「そうか。鬼にも罰を与えないといけないな」
私はニヤリとした。
「また転生になるが次はちゃんと記憶を消していくんだぞ」
「…。」
「返事をしろ。もしまた記憶があるまま転生したら罰を与えるからな」
「わかりました。」
そう言ってまた転生者が通るロードへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます