第3話 2度目の人生

 気づいたら子宮の中にいたのだが、今までの記憶が残っている。

 きっとここから外に出たら記憶は無くなってしまうのだろうと不安な気持ちもあったが、子宮の中は暖かくって安心感が半端なく落ち着いていた。

時々お母さんの声が聞こえる。

「赤ちゃん元気?あなたに会える日が楽しみだよ」

横でお父さんの声も聞こえた。

「待ち遠しいなぁ〜きっと俺らに似て可愛いんだろうな。」

凄く嬉しかった。自分で家族を選ぶことは出来なかったが優しそうな両親の元にこれて。

 数ヶ月が経ちいよいよ子宮から出る。しかし子宮の中の居心地は最高だったからここから出るのは凄く名残惜しい。

しかし、ここから出たら見たことない世界!いわゆる魔物を倒したり魔法を使えたりする異世界に転生してるかもしれないと胸がドキドキした。

その瞬間周りを包んでいた水が一気に無くなった。


「あなた、破水したわ!救急車呼んで」

母の焦った声が聞こえた。

「今救急車呼んだからもう少し待ってて!大丈夫だから」

父も初めてのことなのかパニックになっていた。


 救急車が来てからも母の苦しむ声がずっと聞こえてきてて心の中で「お母さん大丈夫だよ!もうすぐ会えるから待ってて!」ずっとお母さんを応援していた。

自分も前世で出産したことがあったがそれは言葉では表せないぐらい痛くて意識が飛んだこともあったなぁと懐かしかんでいたら、気付けば頭の半分ぐらいが外に出ていた。

 異世界でありますようにと祈り続けた。


 無事産まれてこれたが目の前にいた人はアジア人でしかも病院の施設みたいなとこもさほど200年前と変わりがない。夢は叶わなかったのだ。悲しくなって大きな声で泣いてしまった。

「元気な女の子です。おめでとうございます」

 母も父も泣きながら喜んでくれていたが、私は別の意味で泣いていた。

 お家に帰ると可愛いお洋服がたくさんあった。あと日本語で書かれた用紙も机の横に並んでいた。普通の女の子は喜ぶところだが、ここは願っていた異世界でもないし、思ったより発展してなさそうな日本。

また日本かとため息をついた。日本が嫌いなわけではないが何も変わり映えしない風景に少し落胆しただけだ。


 それから両親、祖父母に相当可愛がられながら恵まれた日常を送り、早8年が経ち私も色々と行動に自由が効くようになってきた。

 両親は意外に厳しいとこがあり、パソコンやケータイは小さい頃には禁止っと言って今まで使わせてくれなかった。8歳にもなってパソコンもケータイも使ってないと周りの友達にバカにされると言って両親を説得してやっとの思いで使えるようになった。


 まず私が知りたかったことは何故こんなにも世の中の技術が発達しなかったのかを調べたかった。

 調べてみると私が死んだ後ぐらいに感染病が流行り世の中が大変になっている時に世界中に隕石が落ちてきたり地震や竜巻、大雨と考えられないような災害が起きて地球崩壊寸前だったそうだ。

 中小企業もそうだが大企業も災害で会社が壊れ大事なデータも全て消えて一からのスタートになってしまったのだ。建物という建物は全て破壊され普通の日常を送るまでに相当時間がかかったみたいだ。

 私はある意味運がいいのかもしれない。衣食住に困ることのない日常を送れるこの時代に産まれてこれて。

 しかし今の時代は娯楽というものが少なくなっていた。

 小説を読んでも話は暗いし、アニメ、漫画、ゲームも何かパッとしない。


 自分と同じ思いをしている人がいないのかと、私は両親に了解をもらいブログを設立した。

「ブログ書いてもいいけど個人情報が漏れたら困るし、しっかりパパがチェックするから勝手に投稿したらダメだよー」

「分かってる。ブログさせてくれてありがとう。パパ大好きだよ」

チュッとパパの頬にチューをした。

「こら。パパ以外にそんな可愛いことしたらダメだぞ」

パパは相当喜んでいた。チョロすぎる。笑


 ブログでは日常で思った疑問やこうなったらいいのにという夢を書き始めた。

 自分の趣味や趣向が同じような人がコメントをくれて楽しかった。自分で何かを発信する楽しみを知った。

 それからというもの何か新しいことを始めたくなり、前世でしてみたかったことの一つにあったプログラミングを覚え自作のゲームを作ったりしていた。

 日々、自作のゲームをした人からの感想を見るのが楽しみになっていた。

 その時ぐらいから自分に自信がついてきて、自分が望む世界に産まれて来れなかったのなら自分で作ればいいと。

 前世で見た映画のアバターみたいな異世界空間に行けるようなゲームを開発できたら自分の夢を少しでも叶えられるのではないかと。


 それからというもの必死で勉強して小・中・高はガリ勉のように勉強した。

名門大学にも無事入学して色々な研究をしていた。そこでは同じような夢を持った仲間にも会えて、一緒にゲームを作った。しかし、まだ思うようなものは作れていない。痛覚や味覚などもっとリアルを求めて作りたかったが、未完成のまま卒業を迎えた。


 仲間の1人は金持ちで企業を開業するから一緒にしないかと誘われたのでOKした。その時はまだ知らなかったがこの返事が後々大変な事件に巻き込まれることも予知しなかった。





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