第2話 地獄
「…。死んだんだよね」
気づけば私の身体の上をふわふわ浮いていた。死んだと思っていたのに意識があったから驚いた。
どうやら人間は命が尽きると肉体が動かなくなり魂だけが残るみたいだ。
「死=怖いというイメージはあったが意外にそうでもないのかもしれないな。」
魂は人間みたいな形だが性別がない。ふわふわとしていて不思議な感覚だ。どこに行けばのいいか分からずにいたが自分とは関係なく魂は霊界へと誘われる。
気づけば知らない家の鏡の前いた。どうやら肉界と霊界への入り口は鏡らしい。鏡の中に入っていくとそこは言葉では伝えきれないような場所で強いていうなら夜空の中みたいに暗いけどキラキラしている。
そのキラキラした物体を近くで見ると蛍のような虫だった。鏡の中をどんどん進んでいると、とてつもなくデカイ扉があった。その中に入ると閻魔大王らしきドデカイ怪物がいた。
「本当にいるんだ」と呟いているうちに、閻魔大王の目の前まで来ていた。
「お前の人生を振り返る」というと88年間の記憶が全てムービーの様に流れた。楽しかったことも悲しかったことも恥ずかしかったことも人に嫌な思いをさせてしまったことも全てが目の前に流れた。
「お前は一回自殺未遂をして周りを悲しませたな。お前は地獄の第2階層行きに決定だ」
と言い放つと質問もするまもなく地獄第2階層という場所に連れて行かれた。
閻魔大王曰く、地獄にはいくつかの階層があり、人殺しなどの重罪は第1階層、自殺や自殺未遂は第2階層というように、現世で犯した罪で行く先が決まるようだ。
その場所は生暖かく凄く臭くて生ゴミの中にいるような感じだ。近くに鬼のような姿の怪物に「早くこっちに来い」と言われついて行くと、牛やら豚やら魚も虫も、様々な動物がひしめき合っていた。
鬼に群れの中に入れと言われ、嫌がると無理矢理引っ張られた。
「どうしてこんなことするんだ」
「お前が今まで積んできた不徳の報いだ」
「そんなこと言ったって」
無理矢理その群れの中に放り込まれた。
牛や豚、虫などの生物は何かを言っている。
「今までにお前に殺された。復讐してやる。」
というと体が引きちられるような感覚がした。身体が食われている。しかしまた身体が再生する。それが永遠に繰り返される。
どうやら地獄第2の場所の罰はこれなのかもしれない。
いつになったら終わるのか分からないまま、100年以上過ぎた時に鬼が来た。
「抽選に選ばれた、こっちに来い」
そういうとやっとその群れから逃れられた。
「抽選って?」と聞くと
「行けばわかる」そういうと閻魔大王の前に行っていた。
「お前は選ばれた。肉界にまた行けるぞ。普通ならお前の罰は後900年は続いていた。運のいいやつだな」
「900年‼︎!?」
考えると気分が悪くなり吐きそうになった。
「次は何があっても自殺なんてしようとするなよ。罪が重くなるだけた。死んだら楽になるなんて大間違いだからな。」
確かに1000年近くずっと体を引きちぎられるのはもうごめんだ。
「でも生まれ変わったら記憶がなくなる。この地獄での記憶も無くなったら…」
「生まれ変わったら今までの記憶は消す。それは決まりだからな」
「そんなぁ」
泣きそうになるが、有無を言わさず違う場所へと移された。
その移動中に凄く暑くて喉がカラカラになる場所があった。そこを抜けて暑いエリアを抜けると飲み物を配っている神がいた。
「お疲れ様。喉乾いただろ。これでも飲んでゆっくりするといい」
そういうと冷たい美味しそうな水をくれた。
やっと水が飲める。一気に飲もうとしたその瞬間、後ろから来た人とぶつかりコップごと水を落としてしまった。その人も酷く喉を渇かしていて、「ごめん」と一言いうと配られた飲み物をごくごくと飲み干していた。
「謝るだけで一口もくれないのか…」
そうしているうちに、ぶつかってきた人はさっさといなくなった。
凄く喉が渇いていたが1人一杯らしい。
諦めて先に進むと気づけば魂は赤ちゃんの形になっていた。そして面長の神がそこに立っていた。
「この書類の中から好きな家族のもとに行くが良い」というといなくなった。
好きな家族って言ってもなぁと考えていると「タイムリミットです」と聞こえ気付けば選んでもいない母の子宮の中にいたのだった。
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