何度生まれ変わっても異世界に転生できない件

かきかきさん

第1話 恐怖のオナラ

 恥ずかしい話をこれから話そう。興味がある人だけ聞いてほしい。これは200年ぐらい前の話だ。私が高校生2年生の時に精神的なストレスで腸にガスが溜まり、学校で我慢できなくって毎日オナラをこぼしていた。男子からも女子からも「臭い消えろ」「便所女」「臭いからマジ学校来ないでほしい」と悪口を言われた。

 はっきり言って私も人前でオナラなんかしたくない。でも勝手に出てしまうのだ。クラスメイトに悪口を言われて更に症状は悪化するし悪循環だ。この時にオナラの呪いだと毎日泣いた。

 先生にもお母さんにも相談したが「オナラで悩んでるの?笑」と笑われ、深刻な相談なのに真面目に話を聞いてもらえなかった。毎日学校に行きたくなくって不登校気味になってきた頃にやっと母が心配して毎日相談に乗ってくれるようになった。

 ある日、「病院に行って診てもらおう」と母に言われ、家の近くの内科に行くと「どこも異常ないですね。便秘だと腸にガスが溜まりやすくなるから便秘薬出しとくね」と言われ薬をもらい家に帰った。

 症状は良くならず1年が経ち3年生になったが未だにオナラの呪いは消えない。

何とか卒業したが別に夢とかなかったのもあって家に籠るようになった。

精神病になりかかった私は精神科専門の病院に行き診察してもらい

「過敏性腸症候群ですね」

私は聞き慣れない言葉に?顔をしていると

「精神的なものから便秘や下痢、あと腸にガスが溜まりやすくなったりする病気ですよ。薬を出しておくので飲んでおいて下さいね」

 私はオナラの呪いではなくってちゃんとした病名を言われ少し安心した。しかし、精神的なものからくる症状だから中々治らなく毎日悩んだ。

 母は心配して

「あんたが元気ならそれでいいよ。少し家でゆっくりしたらどう?」

母には感謝しかない。父や母も心配してくれていて、毎日私がニートしてることに触れず接してくれた。素敵な家族だ。母にあぁ言ってもらったし、頑張って高校も行って卒業できたことだし思う存分好きなことをしてゆっくりしようと決めた。テレビにアニメに漫画にゲーム。最高すぎる毎日だ。あっという間に日が過ぎる。最近は転生ものがすごく流行っていてどれを見ても異世界に転生したり、小説の中に転生したり。どれもありえないがそのありえない内容が面白い。

 自分も転生しないかなぁ何て馬鹿みたいなことを考えたりしながらアニメを見て毎日を過ごしている。「いきなり魔法陣が出てこないかなぁ」とか「死んだら異世界に転生するのかなぁ」とか。はっきり言ってありえない。夢のまた夢。でも死んだら異世界に転生は可能性0ではないのでは?死んだ後のことなんて誰も分からないと馬鹿なことを考えた私は、自ら車道に出て走る車の前に立っていた。

 轢かれる瞬間は怖いし痛いのだが、あっという間に目の前は真っ暗になった。目を覚ますと異世界に転生してないかなと期待していたが、現実は自殺未遂で命拾いをしていたようだ。うっすらと意識が戻り、目を開けると家族が泣いているのが見えた。この瞬間自分がどれだけ無知でアホなことをしたかを思い知った。

 今から思えば本当に身勝手で恥ずかしい話だと思う。

 それからは心を入れ替え仕事もし、職場で旦那もゲットして子供もできた。波瀾万丈な人生だったが素敵な家族の元に生まれてきたおかげでオナラという呪いから抜け出した。最後は病気になってしまったが、孫にも会えたし何も思い残すことはなかった。

 ここで私の88年の人生は幕を閉じた。









…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る