第5話
その後も放課後は何度も彼女と会った。
そしてよく色々な話をした。
それは勉強などの学校における些事から現在の世の中の経済状況に対する考察にまで及んだ。
彼女の考え方は、自分にさえ火の粉が降りかかりさえしなければよいという考え方で、この言葉でまとめていいのかは分からないがいわゆる自己中心的であった。
しかし、彼女のそれには、一般に言われるそれと違い、あくまでもいつも一定の諦念が付きまとい、高校生とは思えない厭世的なものの見方であったため、俺も疑問に思わざるを得なかった。
と言いつつ、俺はこういうのが新鮮だったから、いつしか彼女と会うことを楽しみにしていた。
こんな関係がいつまでも続けばいいとすら思っていた。
何せ俺にはこういう交友関係が初めてのことであった。
だから、俺はいい意味でこの関係性に安心し、悪い意味で言えば依存していたのかもしれない。
この時の俺は「男女の友情など成立しえない」という常識など知らなかったから、この状況に何の疑問も抱いていなかった。
彼女は一般の常識について悩んでいる様子はなかった。
かと言って期待外れではなかった。
彼女はもうそんな悩みを克服している感じだったからである。
俺も早く彼女のようになりたかった。
俺の最大の悩みがそれだったからである。
だから俺は何度もその方法を聞いた。
しかし、返ってくるのはいっつも同じ言葉だった。
「焦らなくていいさ。何せ君にはまだいっぱい時間があるんだから。私の考えは則天去私みたいなものさ。まあ、最後ぐらいはやりたいことをやってやろうと思っているけどね」
彼女はそういうと決まって悲しい顔をするのだった。
俺はそんな彼女をもう見たくなくって、質問する回数はどんどんと減っていった。
それくらい俺は彼女との関係性を壊したくなかったのだろう。
常識のない俺にはこの関係性に依存するよりほかなかった。
だから俺はあの時慄(おのの)いた。
これは高校二年生の秋のことである。
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