第3話
外には一羽の烏が電線の上に止まっていて、空に浮かぶ白色の雲を背景とし、それとは対照的でものすごく浮いている孤独を醸し出していた。
そいつを見つめていると、あちらもこっちに気づいたようでこっちを見つめ返してきた。
そいつは、自分の黒々とした体を、天性の色を、どこか悔いているようだった。
そしてそいつは、居場所がなさそうでまるで俺に助けを求めているようだった。
……あるいはお前も同じだぞと、お前もこうなるぞと忠告していたのかもしれない。
もちろん、クラスの数名は、哀れにも友達作りの輪に参加できなかった(というよりしなかったのだが)こちらに気が付いて遠慮がちに話しかけてきた。
しかし、もう他人には辟易としていた俺は、曖昧に答えたのみだった。
そりゃあ、そんな返答をされたら誰も近寄らなくなるだろう。
ということで、自由時間、つまり学校側がわざわざ友好関係を広げるためにとった時間を俺は持て余していた。
しかし、こうやって寂しげな一羽の烏をずっと見つめているのも苦しい。
そう思って俺はその烏から目を外すと、クラスの中をのぞいた。
外に気を取られていたせいか全然気が付かなかったが、クラスの中の喧騒は引き続き、というよりかは前にも増して強まっているように感じた。
クラスの人々が打ち解けてきた証拠だろう。
時々笑い声も聞こえる。
ああ、楽しいことはいいこった。
ちなみに俺の高校は偏差値が高い。
俺は全然学業には興味はないのだが、偏差値が高い学校に入った。
何故かと言うと実は俺は少し期待していたのだ。
これくらいのレベルになればもしかしたら俺と同じような悩みを持った人がいるかもしれない。
そして友達になれるかもしれないと。
だが、それは残念、期待外れだったようだ。
俺はいつまで登校し続けられるかなぁと考えながら、また窓に視線を戻そうとした。
すると、俺はある少女に目が留まった。
その少女とは、俺の席の列の一番前、つまり窓側の席の列の一番前にいた。
そいつは先ほどの俺と同じく外を眺めていた。
彼女の横顔を凝視する。
少し釣り目できりりとしている目、長く伸びたまつげ、大きさはちょうどよく高さのある鼻、潤っていて柔らかそうな唇、どれもが整っていて、全体の意味でも整っていた彼女は、退屈げながらも美しかった。
俺は少し期待していた。
もしかしたら俺と同じ悩みを持つ人かもしれないと。
なぜなら彼女も俺と同じくクラスの喧騒には興味がなさそうだったからである。
先に言ってしまうとそんなことはなかったのだが、それでもこの出会いは俺の人生にとって重要なものとなった。
そんな俺の視線に気づいたのか、彼女は俺の方を振り向いた。
そして微笑んでくれた。
その時の俺は、凝視していることがばれてしまった気恥ずかしさよりも、彼女のほほえみの美しさに見とれてしまっていた。
それぐらい彼女は美しかった。
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