第2話
俺は思えばそういう男だった。
当たり前のことがなぜ当たり前のことなのかがよく分らず、周囲に疑問を投げかけては煙たがられていた。
常識では目上の人を敬えと言う。
だったら介護士はどうなんだ。
あいつらの中の数名は全然お年寄りを敬っていはしないじゃないか。
逆にお年寄りの方が一方的に与えられている側としてすっかり恐縮してしまい、“かわいい老人”を演じるありさまではないか。
そんな風に返すと相手はいっつも困ったような顔をして黙り込んでしまう。
確かここ、日本には“異口同音(いくどうおん)”という四字熟語があるらしい。
ここで言うなら“異顔(いがん)同表情(どうひょうじょう)”とでもなるのだろうか。
とまあ、俺はつまりそういう相手の反応にも飽き飽きしているのだろう。
だから俺は高校に入っても、そんな味気のない他人などとは関わろうとはしなかった。
少なくとも、この時の俺には積極的にかかわる意味を見出せなかった。
しかし、そんな固定観念(思えば、俺も仕方は違うものの、一種の常識みたいなものにとらわれていたのかもしれない。)は入学の初日に崩れ去った。
思うに彼女も変人だったのではなかろうか。
俺の予想は寸分の狂いもなく当たっている気がする。
しかし、彼女が変わっていたからこそ、この時の俺の固定観念に風穴をあけられたし、今の俺もこうなれたのだろう。
彼女との出会いは入学式、これから一年間お世話になる(俺は全くお世話になるとは思っていなかったし、実際お世話になっていないのだが、だからと言って一緒になるだけでは味気ない気がするのでこの文言を使わせてもらう)クラスで、一人窓の外を見ている時であった。
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