4カ所目 深海




 前回の続きだ。

 俺は落ちた。高度五千メートルの上空から肉を焼きながら高速で空中を落下し海面に落ちて、プールの飛び込み競技のように全く水飛沫を上げないまま吸い込まれるように海面を突き抜けると海中へと沈没してしまった。現在はマンガ肉を回して焼きながら海底へと沈み込んでいる。既に日光が届かない深度を降下中である。回りは真っ暗闇で何も見えない。怖すぎ。


 服は濡れていない。乾いたまま海底へと沈んでいる。超展開。息も出来る。というか苦しくない。しかもスーハスーハできる。現在深度約二千メートル。深度の数字は挫刹が適当に書いているので信じてはいけない。信じる者は裏切られる。なぜなら信じているからだ。でも暗いし怖い。水圧はかかってない。ここは地球ではなく挫刹の創った魔法と無職の氷河期世代55歳オッサンの架空ファンタジー異世界だ。

つまりこの作品を書いている挫刹こそがこの世界の法であり、挫刹の都合でこの世界の法則はいくらでも捏造することが可能となる。もちろんその場しのぎで修正を重ねれば物語としての整合性も取れずに読みにくくなるが、それは必要な犠牲なので仕方がない。まさに無慈悲ファンタジー


 あと、地球の人間は海面や水面には絶対に立てないので、俺みたいに空から落ちようとか海に飛び込んで海面に着地しようとか思いつきで俺の真似をするのは絶対にやめてれ。真似マネはするな。地球でマネすると本気で死ぬぞ。行方不明になる。これはこの異世界ファンタジーに住む俺だけが可能な魔法の奇跡による危険な行為だ。魔法も使えない下らない地球世界のお前ら地球人は死ぬし命を落とすのでやめろ。やめておけ。これは煽りであり異世界自慢だ。いいだろう? うおっほ。


 さて、ではゆっくりと海底へ沈み込んでる間に、前回のエピソードで中断してしまった魔法についての話を再開するとしよう。


 魔力を持っていない普通の人間の魔法と、魔族や神族などの魔力を持つ人間の魔法では基本的に質が違う。

 人間の魔法は意識して考えないと発動しないが、魔族や神族の魔法は体を動かしただけで発動してしまう。例えるなら腕を振り回すだけで乱発してしまうし手に力を込めるだけで魔法がぶっ飛ぶ。魔族や神族のみなぎる魔法は、人間の一生懸命考えてやっと発動させる微々たる魔法と比べると、天と地ほどの開きがある。

 しかも魔族や神族、モンスターなどが持つ魔力の規模は天災級であり、マグニチュード換算で最大だとM12を叩き出す。つまりマグニチュード12である。地球が割れる。



 この圧倒的な位置からの差により、人間はいつも魔族と神族から虐げられている。

 しかし地球の自然災害とは違い、この世界の神族や魔族は幸いにも自我や意識を持っておりマグニチュード12級の災害救助も一部で施すことがある。この為、現在ではもっぱらマグニチュード12級の神のような魔族や神族の莫大な魔力の魔法によって、この異世界ファンタジーの人類は養われている。


 ……。


 繰り返す。

 養われている。

 養われているッ。

 養・わ・れ・て・い・るッ!


 この異世界ファンタジーの人間たちは。強大な魔力をもつ魔族や神族の一部によって完璧に保護されて管理されて甘やかされて生きていた。

 なので冒険と称して、人間が世界を旅しても一部の災害級の魔族や神族によって危険が無いように保護されながら安全な場所で秘境や魔境や未開の地を楽しむことになる。すばらしいアミューズメントだ。

 言ってる意味がよく分からないと思うが、人類にとっては未開というだけで魔族や神族にとってはただの箱庭だ。人間はもう少し分際をわきまえたほうがいい。

 この点では地球のほうがいいかもしれない。だが、面倒を見てくれる魔族や神族がいないと、やはり暮らしにくい世界になると思うのだが、よく地球では生きていけるな? 人間が世界の頂点だと生きにくいのではないだろうかと思うのだが違うのだろうか? この異世界ファンタジーでは見かけ上、人間ではなく魔族や神族が頂点だ。魔王や聖女はその筆頭だ。本当の頂点は、この世界を創った挫刹なのだが大体、挫刹は俺以外に見えない。うーん、チート。


 最近の魔族や神族は人間に危害を加える事よりも、人間に施すことを目的にして行動することが多い。どうやら見ていられなくなったのだろう。僅かな資源を奪い合い、僅かな力で戦争を繰り返す愚かな人間たちを見て同情を禁じえなくなったらしい。さらに苦しむ人間を救うとひどく感謝されることも最近になって魔族や神族の中で悦びに変わり新鮮に受け止められているらしく、人間を殺すなら蘇生させよう。が、最近流行りのスローガンとなっているという。


 これで世界は安心して平穏になるかと思われるかもしれないが、ここが挫刹の悪いところで、現在のこの世界の人間の人口は減少している。その理由が魔族と神族に甘やかされて暮らしている人間が怠惰になり自立できなくなっている為だ。現在の魔族や神族はここに頭を悩ませている。

 魔力を持つ魔族や神族は、あまり数が増えないし減らない。ほとんど一個人で完結しているのでその辺りも問題は無い。彼らの楽しみといえば人間が日常的に見せる喜怒哀楽ぐらいである。それを見るのが魔力を持つ者たちの最大の娯楽だ。その人間が最近になって増えようとしない。なぜなら出産が大激痛だからだ。出産を無痛にすることは魔法でも出来ない。出産を無痛で簡単にすると人間の男女は際限なく子作りをすることになる。ここで問題となってくるのがカクヨムの利用規約違反だ。この世界を創った挫刹はすでに地球のカクヨムで四作品も利用規約違反の警告を食らっている。四作品も警告を食らってよく今も無事なものだ。その為、俺の隣にいる挫刹は意地でもこの世界の出産を無痛にはしない。地獄を見せるほどの大激痛を発生させると息を巻いている。これはもはや取り返しがつかない。少子化まっしぐらである。もうボク我慢できないッ! ……なんの話か分からなくなってくるな。


 おっと海底に着いたようだ。深度はわからない。




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