3カ所目 氷河期世代
もう一度言うと、この世界の氷河期世代はすでに55歳に突入している。取り返しがつかないな。ははは。もちろん家庭を築くことができないほど魔法の力が低い非正規労働者が多く、職に就いていない人間も大半を占める。ひきこもりだ。もはや地獄絵図だな。さらにこの異世界でも少子化の波が猛威を振るっている。もはや数十年前から氷河期世代の55歳より下の年代は世代別の人口が右肩下がりで下がり続けている低下の一途を辿っている一方だ。まったくもっと収入の良い人間は、後先のことを完璧に考えてかつ他人様に迷惑もかけずに、それでいて大量に子作りに励んでもらいたい。上手くやれ。もっと増やせ。もちろん一世帯だけの力だけでだ。他人の手は借りるな。それが完全無欠の自己完結の世の中というモノだ。水でさえ第二種永久機関物質だ。あ、それは地球では虚構だったな。すまない。隣にいる挫刹にもどやされてしまった。まあ、話を戻すが、どうやってそんな世界を手に入るのかは知らないが。
もっとも本当に何も考えずに無計画に子作りだけ励んで子供が生まれたら、父親である男は失踪して残された女だけが子供を生み落してそのまま放置する。なんていう悲惨な光景は、この世界では全く無いとまでは言わないが、あまりありふれた光景でもない。そこら辺の事情もおいおいこれから語っていこうと思うが、今は語ることはない。
ただ一つだけ言えることは、こちらの世界では地球と違い、便利で快適な地球でいう熱力学第二法則の不可逆性を打ち破れる魔法が使えるということだ。
便利な魔法が使えるということは、それだけ悲惨な光景も目にする機会も少なくなるという事でもある。
ここで注意してもらいたいことは、魔法は便利だが万能ではないという事実である。
じつはこれが俺たち、この世界で生きる氷河期世代と最も深く関係している部分で、氷河期世代の俺たちは他の世代よりも自由に使える魔法の総量が極端に少ない。
この世界で生きる者ならば誰でも簡単に魔法を使うことはできる。ただしそれにも限度があり、一般の人間が一生の内で使える魔法の量は生涯賃金の平均である約2億5千万円までだと言われている。円とはこの世界では魔法の単位を意味し、生涯賃金の賃金も同じ意味を指す。賃金の言葉の由来は魔法で金が生み出せるからだとも一説ではいわれている。
この世界では、概ね百円分の魔法で日本の百円ライター一本分の火力を発生させることが可能。勿論、魔法の得意分野には個人差があり、例えば、魔法で炎を生み出すのが得意な人間もいれば、水を発生することのほうが簡単な人間もいて、向き不向きが大きく分かれることも常識だった。
この為、一生の内に使える魔法の総量が人生の質を大きく左右してしまうのは必定なのだが、残念なことに氷河期世代では最大でも魔法を使える生涯賃金が約一億円止まりであり、体質によっては多くても五千万円ほどがあれば良いほうだと言われている。
この主な原因は、俺たち氷河期世代より上に、団塊の世代(現在80代後半)とバブル世代(現在70代前後)と呼ばれる悪名高き二大世代が存在しているためだ。
詳細はここでは省くが、簡単に言うと、世代別の人口割合で最大の規模を誇る団塊の世代(現在八十代後半)と、団塊の世代の無軌道な物量が原因となって魔法の質が最大限まで高まったバブル世代(現在七十代前後)が大量に生まれたことに起因した影響で、魔法の根幹部である空間作用がバブル崩壊を起こし、反動で魔法的な氷河期が世界規模で始まり俺たち
従って、氷河期世代が使える魔法の量は、一般人が使える魔法の量の半分にも満たないごく限られた規模となってしまっている。これが、この世界の氷河期世代が、団塊の世代とバブル世代を強く恨んでいる理由であり、団塊の世代とバブル世代も氷河期世代を非常に小バカにしている理由でもある。
ちなみに俺は氷河期世代の一人だが、全ての世代の中で唯一、挫刹の存在に気付いている為、無尽蔵の魔法が使える。俺が
なお、ここでこの世界の魔法の特徴について述べるが、この世界の人間の魔法は一カ月の間に使用可能な量が概ね定まっており、個人差はあるが一か月間に使える魔法の平均は二十五万円分ほどである。この一か月分の魔法量を総称して月収及び給与や給料と呼ぶ。実際の金銭である給料とは分けて魔法給料と呼ぶこともあり、俺もこの名称を使う事にする。魔法の月収は月に一度、特定の日時に回復し、この魔法給料が回復する特異日を給料日と呼ぶ。給料日は個人によって差があるが概ね25日が大半となっている。
毎月回復する魔法の給与所得は貯蔵が可能である。例えば
またこの世界の人間は基本的に魔力を持たない。ここまで説明して不思議に思うかもしれないがこの世界の人間は基本的に魔法が使えるが、それは魔力とはまた別の原理で発動する現象である。
魔力を持つ人間は、魔族や神族と呼ばれており魔力の無い普通の人間と明確に差別されている。区別ではない。差別だ。分を弁えろ。俺たち人間どもよ。俺は例外だが。くわっは。魔力を持つ動物は
おっと、ここで二千文字に到達したようだ。隣の挫刹が騒いでいる。
挫刹が
前のエピソードでは高度五千メートルの上空で肉を焼いていたが、今は絶賛落下中である。当然肉を焼きながらだ。火の上で肉を回して焼きながら落ち着いた姿勢で落ちている。気を抜いてしまったのだ。ストンと一気に落下してしまった。今も落下速度がものすごく速い。恐怖だ。腹の上部がなんかせり上がってくる感じがする。あ、いま雲を抜けた。股から下を覗くと海面が近づいている。怖すぎ。
では次のエピソードでまた会うとしよう。
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