4、七夕

 『七夕』…確かに、うちらみたいな事務用品を取り扱う会社にとっては、紙やらサインペンやらが売れるので大事だいじな行事ではあるが、自分でやろうとは思わない。ってか、お前は小学生か!


 「冗談ですよ。…今年も毎年恒例の『アティロム』の七夕まつりがあるんで、この前、大量に納品したのを思い出しただけですよ。」


 ア! ア! アティロム!! あの! 鷹音ようおんさんの勤務している会社だ!! …酔っていて良かった。 そうじゃ無かったら、耳まで真っ赤になった所を守屋に見られる所だった。



 守屋を見送り、梅雨の湿った生温かい風を感じながら、俺は心の中でガッツポーズをしていた。


 うまくいけば、短冊に書かれた鷹音ようおんさんの『願い』が見られるかも知れないからだ! 


 守屋! お前は俺の恋の女神だ! …もとい、恋の男神だ!



 しかし、その翌々日には、俺の淡い希望が絶望に変わってしまう事を、この時の俺は知るよしもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る