2、…で?

 俺が、壁を見て落ち込んでいると、背中を叩かれた。


 「いてっ」…振り返ると、イタズラっぽい目の少女がいた。


 少女が「どうした?」と聴いてくる。


 俺が、鷹音ようおんさんの年表を見て、なんとか彼女との接点を探し出そうとしたが見付けられなかった事を告げると、


 「『接点』を見付ける事に、重要な意味があるのか?」…と聴かれたので


 …例えば、近くに住んでいれば、『どこどこのお店に行った事ある?』とか『誰々さんって知ってる?』とか聴ける。


 また、同じ学校の出身だったら、『あの先生、覚えてる?』とか、『まだ、校歌覚えてる?』とか聴ける。


 …そんな感じで、何か共通の話題で、彼女と会話する『きっかけ』が出来る…と思った。


 …と、少女に伝えた。




 少女は「なんだ。そんな事なら、いとも容易たやすい。」と言った。


 『いとも容易たやすい』? いとも容易たやすくはぇだ…ろ?


 …ホント? …いとも容易たやすい…の?



 まさか、俺か、彼女の記憶を操作する…とか言い出すんじゃぇだろうな!?

 



 少女は、作戦参謀を呼び出し、「此奴こやつ鷹音ようおんの『接点』をつくる戦略を示せ」…と命じた。


 「御意」


 …作戦参謀は、消えたと思ったら、文字通り、またたに姿を現した。


 …え? もう出来たの?


 「お待たせした。」


 いやいや、待って無いから!


 作戦参謀が、スクリーンの前に立つと同時に、古い日本地図が表示された。


 なんだ? 歴史の講義でも始めるのか??


 地図の一部がクローズアップされ、色分けされた『領地』らしいものが表示された。


 青と赤の領地の間に、二つの色を分断するような形で、細長い、黄色い太線ふとせんが入っている。


 「たいら殿どのの次元の単位で言う、四百五十年前の『永禄十一年』に、『甲嶽かだけ』の国の武将『岩熊いわぐま 剛勝たけかつ』の軍、二千が、『小八瀬こやせ』の国に攻め入る、『甲小こうしょうえき』が起きた。」


 おいおい、本当に歴史の講義を始めたぞ。


 「『小八瀬こやせ』の領主『細河ほそがわ 兵六ひょうろく』の軍、三百は、たちまち壊滅し、『小八瀬こやせ』は滅亡し…」


 スクリーン上の黄色い線が消え、青に変わった。


 …それにしても、『コヤセ小 痩せ』の国の『ホソガワ細 皮』氏、しかも、あのほっそ長い領地とは…冗談みたいだ。おまけに、『兵六ひょうろく』って、『表六玉ひょうろくだま』じゃあるまいし…。


 …まあ、名前に関しては、俺も、人の事を、とやかく言えないけどね。。


 おっと、講義、講義!

 

 …「その勢いのまま、『岩熊いわぐま』軍は、隣の『鮫賀さめよし』の国に戦いを挑むが、その最中に『甲斐』の国の『武田 信玄』の軍一万いちまんに攻められ、慌てて引き返すも、『岩熊いわぐま 剛勝たけかつ』は討ち取られ、『甲嶽かだけ』の国は滅んだ。」


 へえ~…。


 …で?

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