第五章『作戦行動開始』

1、イロハの『イ』のイロハのイ

 色々あって頭の中がこんがらがって来たので、少し整理しようと考えを巡らせていて、ふと思った。


 …こいつらって、普段、何してんだろう? 家族とかいるのかな? 


 …そもそも、こいつらに子供の頃ってあったのか? …あったとしたら、それなりに可愛かったのかなあ? …参謀連中の、奇々怪々な面構えでは、想像が付かない。


 …その点、俺が憧れてまない鷹音ようおんさんは、子供の頃から、絶対可愛かったに決まってる! それは、疑いようが無い!


 ……! …その時、俺は重大な事に気付いてしまった。


 俺は、彼女の事をほとんど知らない! 彼女の会社に営業で行った時、受付してくれた彼女に一目惚れしただけだ。


 …あとは、彼女の会社のホームページで見かけただけ。俺の『至福の時間』の動画だって、ホームページに載っていた、部署紹介の動画だ。


 …こんな情報不足では、アプローチのしようがないじゃん…。


 …やっぱり、この恋が実るはずが無い。少女に言って、アパートに返して貰おう。


 「申し訳無いが…」


 …と、少女に声をかけようとした瞬間、俺は、ひょろ長い情報参謀が言った言葉を思い出した。


 『…『鷹音ようおん 野華ひろか』氏に関する、あらゆる情報を元に…』


 …そうだ! 彼女の情報を知る絶好の機会チャンスだ。何か接点を見出みいだせるかも知れない。


 少女に向けていた視線を情報参謀に向け、「彼女の情報を見せてもらえますか?」と尋ねた。


 「はっ、閣下」

 

 情報参謀が合図すると同時に、議事堂の壁面全体に、ビ~ッシリと文字が表示された。


 うわっ! 多すぎ。


 「彼女の、大まかな年表だけを見せて下さい。」


 「はっ」


 A3サイズくらいに集約された。


 …良かった〜。見やすくなった。



 …なになに………一縷いちるの望みをかけたが、全く接点が無い。出身地は違うし、当然の事ながら幼稚園も違う。


 小学生の時に、親の仕事の都合で、俺の実家の地方に越して来たようだが、県が違う。


 その後、中学、高校は一流私立高に通い、エスカレータ式で、そのまま大学に進学。卒業後に就職して、現在に至る…そうだ。共通点は『人類』くらいのものだ。 …いっそ清々すがすがしい。


 「…はぁ~~…」溜息ためいきが出た。


 また幸せが逃げたが、もう、どうにでもなれ…だ。

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