4、『強大な要因』

 『ゴオオォ~ン』


 例の、耳をつんざく音が鳴り響き、


 参謀長の「これより、軍議を凝らす」 の声で、参謀たちが着席した。



 …あれ? 俺の席は??



 「お~い、ここ、ここ」


 …少女の声に振り向くと、少女は、玉座の横にある椅子を指差した。


 うわ! たけえぇ~。


 …その席を目指してあゆみを進めた瞬間、身体からだが宙に浮き、気付くと席についていた。参謀長の顔が、真横にある。


 見渡すと、参謀たちを一望いちぼう出来た。


 その中の一人が挙手…と言うより、挙触手した。


 「作戦参謀」 


 …参謀長がダンディな声で指名した。真横で、しかも超絶低音なので、ビリビリと鼓膜と腹に響く。


 作戦参謀が、こう切り出した。


 「…さきの軍議で、自分が立案した『ターゲット2名のみを残して、他の人類を全て抹殺する計画』…が却下された理由をお聴かせ願いたい」


 情報参謀がそれに答える。


 「実は、わたくしも、それが疑問なのです…ご提示された条件にて『模擬戦闘シミュレーション』を行ったところ、『戦闘継続不能エラー』になってしまうのです。恐らく、我々が知り得ない『強大マイティ要因ファクター』が作用しているものと思われます」


 と言った。




 …はあっ? バカじゃねえの?


 …もし、二人きりになれたとしても、自分のせいで人類が滅亡した世界で愛をはぐくむ…なんて、あり得る訳が無い。そんな野郎は最早もはやただけだものだ!


 そんな事すらわかんねえのかな? こいつら…。



 …!


 俺は唐突に理解した。


 クサいセリフで申し訳無いが、言わせてもらう!


 こいつらの世界には『愛』が無いんだ!


 『愛』がなければ、『なさけ』が産まれる訳が無い。『いつくしみ』や『あわれみ』なんて、はなから持ち合わせていないんだ。


 …だから少女も、初めて会った時、『即時抹殺』なんて言葉を軽々しく使えたのか!



 そう思ったら、図体ばかりデカい、こいつらが、軽い存在に思えてきた。




 …よし、一つ試してみるか…。

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