3、Real mission impossible !

 参謀長は、次のように続けた。


 「貴殿もお聞き及びと思うが、我が軍は無敗。如何いかなる不利な条件のたたかいでも勝ち抜いて来た。 だが、此度こたびの作戦は…

(ひょろ長い体型をした参謀を呼び…)

『情報参謀』に報告してもらう」


 指名された情報参謀は、進み出て一礼し、俺の前に立ち、マンガみたいなコミカルな声で、


「え~、ここにおられる『たいら 盆人はちひと』氏と、『鷹音ようおん 野華ひろか』氏に関する、あらゆる情報を元に、『コイビト』…すなわち『つがい』にする為の『模擬戦闘シミュレーション』を行いましたところぉ〜」


 情報参謀が合図すると同時に、壁一面に、無数のモニターが表示された。


 良~く見ると、その一つ一つに『×ペケ』が表示されている。


「これは、ほんの一部ですが、ご覧のごとく、全て敗北。正直、これほどまでに困難な戦闘は、歴史上、るいを見ません…」



 …前にも書いたが、鷹音ようおんさんは、俺とは別世界の人間なのはわかっている。 わかっちゃいるが…


 や っ ぱ 落 ち 込 む よ ~。



 俺は、半べそをきながら、参謀の皆さんに「この度は、申し訳ありませんでした。」と謝り、少女に向って「俺の部屋に戻してくれ」と頼んだ。


 すると、それまで黙って成り行きを見ていた少女が口を開いた。


 「まあ、待て。 確かに数字のうえでは、我々の敗北は確定的だ。 だが、貴様と同じ『人類の身体からだ』をした、あたしには何故なぜわかる! このいくさも、我々『衛鬼兵団えいきへいだん』が、必ず勝利する… と!」


 …少女は、昔たアニメの独裁者 よろしく、握りこぶしを高くかかげ、


「立てよ、みなもの! 作戦を遂行せよ!」と、声高らかにのたまった


 …この言葉には、その場にいた全員が驚愕した!


 あわてた参謀長が少女の前に進み出て、一礼も忘れ、叫んだ。


 「そ、総司令閣下! 具申ぐしん致します!! このいくさ実行不可能mission impossibleです! 何卒なにとぞ何卒なにとぞ作戦中止の御下知おんげちを!」


 俺も、少女に進み出て『何卒なにとぞ、作戦中止を!』…と、具申ぐしん? とやらをしたかったが、


 その後の少女の一言で気持ちが変わった。


 「『友結ゆい』殿を前にしても、同じ言葉が言えるか?」


 巨大スクリーンに、ゆいが映し出される!


 …少女は厳しい表情…だが、その瞳は慈悲をたたえ、それがかえって高揚感と勇気を与えてくれた。



 俺は、少女の視線に答えるように微笑みを返したのち、巨大な参謀たち全員に伝わるよう、檄を飛ばした!


 「 軍 議 を 再 開 せ よ !!」

 

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