2、『コイビト』

 「ぎゃあああああ!」


 思わず叫んだ俺に向かって、『軍医』と呼ばれた龍は、容赦無く火炎を浴びせた。


 『焼き殺される!!』


 …と思ったが、全く熱さを感じない。


 火炎のようなビームが消えると、軍医は少女に向って


 「脳に一時的な混乱があったようですが、現在は心身共に異常を認めません」と言い、少女に一礼して、姿を消した。


 『火炎』に見えたものは一種の『スキャン』だったようだ。



 俺があたりを見回すと、ここは、さっき俺のアパートに出現した空間とは別の、議事堂?のような場所だった。


 そこには、十数匹の、姿すがたかたちや、大きさが、てんでんばらばらな怪物達が、各々おのおののサイズに合わせた椅子に腰掛け、俺を眺めている。


 壁にはパネルやモニターが埋め込まれ、なんとも賑やかだ。


 更に、少女の後ろにある巨大なスクリーンには、なんと俺の顔と、俺が憧れる『鷹音ようおん 野華ひろか』さんの顔が、横に並んで、ど・ど・どアップで映し出されているじゃないか!!



 少女が、一番近くの席にいた、これまた、沢山たくさんの勲章を付けた、怪物達の中では、比較的人間に近いフォルム(とは言え、身長は10〜20メートルはある)の、ちょっと偉そげな奴に、「参謀長」と声をかけた。


 「はっ」


 参謀長は、少女に一礼したのち、こちらを向き…


 「貴殿きでんことは、おおむね、総司令より下知げちたまわった。 まずは、総司令の危機を救ってくれたむねに対し、礼を言う」と言い、俺に頭を下げた。


 …『下げた』とは言え、巨体なので、頭が俺より上なのは、言うまでも無い。


 他の奴らもそれに続く。少女も、一緒に頭を下げたのが、ちょっと可愛かった。


 「い、いえいえ、どういたしまして」頭を掻きながら、俺も会釈した。 



 「…さて、本題だが」と言いながら、参謀長は巨大スクリーンの前に移動し「貴殿きでんと『コノヒト』とを『コイビト』にする作戦を練るにあたり…」


 …『キデン』とは俺の事で『コノヒト』が鷹音ようおんさんである事は判った。


 「貴殿きでんの次元で言う『書物』やら『映像』、更に『音声』や『インターネッツ』など、あらゆる媒体の情報を精査したのだが…」


 …『ネッツ』って…と吹き出しそうになるのをこらえていると、


 参謀長がこちらを向き、近づいて来た。


 …こ、こえぇ~~!


 そして、俺の顔を覗き込み、こう言った。「この作戦は 遂 行 不 可 能 である!」


 ……


 ……え、ええぇ~!?

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